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強制わいせつの容疑者が里親募集で譲り受けた猫を虐待? 悲劇はどうすれば防げたか

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
けがをした野良猫(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

東京都足立区の路上で、面識のない女性への強制わいせつ致傷の疑いで逮捕された浅野彰仁容疑者が、猫の虐待もしていた疑いがあるというニュースが流れてきました。

しかも、浅野容疑者は、里親募集サイトからもらった猫を虐待していたようです。

毎日、猫の病気の治療をしている筆者には、なぜ、猫に虐待をする人がいるのかが理解できません。しかし、現実にはこういう事件がおきているわけですから、今日は、動物を虐待する人から「いかに猫を守るか」を考えていきましょう。

浅野容疑者は、猫を虐待し動画撮影か

写真:アフロ

筆者は、耳にできた扁平上皮がんの猫を治療しています。その猫は、がんのため耳が崩れていき、それを懸命に阻止しようと筆者は闘っています。そんな筆者にとっては、動物虐待をする人がいるということを冷静には受け止められません。まだ容疑の段階ではありますが、浅野容疑者の様子を詳しく読み解いてみましょう。

浅野容疑者は2019年4月12日午後9時ごろ、自宅アパートの風呂場で猫の首を絞めたり耳や脚を引っ張ったりした疑いがある。その様子を撮影し、タブレット型端末に動画データを保存していたという。この端末には18年9月以降、別の複数の猫が虐待されたり死んだりしている様子を記録した動画データも保存されており、署は継続的に虐待をしていた疑いがあるとみている。

「ネコ虐待し動画撮影か 元少年サッカーコーチ逮捕、黙秘」より

要約すると、面識のない女性への強制わいせつ致傷の疑いで逮捕された浅野容疑者の自宅にあった端末を警察が解析したところ、複数の猫を虐待、殺害していたとみられるということです。その様子を自分で撮影していた可能性があるということですね。

もしかしたら、浅野容疑者は、猫をかわいがるというのではなく、耳や四肢を引っ張る、首を絞めるために猫の里親になったのでしょうか。

たとえば、飼い猫が、下部尿路疾患であちこちにオシッコを漏らしてしまい、掃除がたいへんなので、しつけのために、カッとなって猫を一度だけ叩いてしまうというのなら、百歩譲って少しはわかります(本当はよくないですね)。

でも、なんの罪もない猫に繰り返し、猟奇的なことをできる人がいるとは、恐ろしいことです。撮った動画を楽しみながら見ていたのでしょうか。

現実問題として、猫に対してこのように虐待という残酷な行為をする人がいるということです。もちろん、多くはありませんが、悲しいことに、ある一定の人数は、存在しているのです。同じような動物虐待の他の事件も見ていきましょう。

過去の凶悪犯も猫の虐待を

米国の犯罪心理学者、アラン・R・フェルトゥース氏が、343人の凶悪犯に聞き取り調査した結果、78%が少年期に猫や犬を殺した経験があったといます。そして、日本を震撼させた事件の犯人たちも動物虐待をしていました。

神戸児童連続殺傷事件で、逮捕された少年A(当時14歳)は、事件直前に猫や鳩などの小動物を殺害する姿が目撃されています。少年Aだけではなく、東京、埼玉で起きた連続幼女誘拐殺人事件の宮崎元死刑囚(逮捕時26歳)も猫を解剖したり、車でひき殺したりしていたそうです。

このように、動物を愛するものからすれば、理解ができない行動をとる人がいるのです。そのような人たちから、動物を守るのにはどうしたらいいかを考えてみました。

動物虐待をする人から猫を守るためにできることは?

写真:PantherMedia/イメージマート

筆者の動物病院には、動物の保護活動をしている人が、多く来られます。それで、里親を選ぶときに気をつけているポイントを尋ねてみました。猫をたくさんの人に里親に出している人は、虐待をしたいから猫をほしい人がいることは、大前提にしているということでした。

ここで、注意をしてほしいのは、引っ越しや病気などの理由で、飼い猫をできるだけ早く手放したい人は、引き取り手のことを何も疑わないので、その結果、虐待するような人に譲渡してしまう可能性が高くなるということでした。

愛猫を止むを得ない理由で手放すときでも、以下のチェック項目には、気をつけてください。

□トライアル期間を設けて、すぐに譲渡しない

□無料で譲渡しない

□登録料やお届け代などをもらう

□家族構成を尋ねる

□譲渡するときに、自宅まで行く

□始めは1月に1回以上は、近況を知らせてもらう

□契約書にサインしてもらう

□過去に猫を飼ったことがあれば、その様子を尋ねる

□先住猫が1匹いて、猫の扱いに慣れている人に譲渡

□動物愛護団体には、里親にはなれないブラックリストが回ってくるので、注視する

これらだけで、動物虐待をする人から猫を完全に守れるわけではありませんが、少しは防ぐことができます。何匹も里親に出している動物の保護活動をしている人は「なにかすっきりしない人にも譲渡しない」そうです。これは、勘としかいいようがないと、おっしゃっています。

まとめ

動物虐待は動物愛護法により犯罪です。

警察が、ある事件の容疑者の余罪や証拠を調べるためにパソコンやスマホのデータを調べたとき、動物虐待の疑いが浮上したら徹底的に捜査してほしいですね。

猫や犬の殺処分をゼロにすることは、大切です。そのため安易に里親に譲渡するとこのようなむごい目に遭って命を落とす動物がいると思うといたたまれないです。

たとえ個人で猫を譲渡する人でも、人には、このような残酷な行為で猫をいたぶる人が存在することを頭において、適切な里親に探すようにしてほしいです。もし、動物虐待の現場を見たら、証拠として動画を撮り警察に連絡しましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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