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WBAライトフライ級チャンピオン、京口紘人の新たなスタート

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
写真: 山口裕朗 

 大阪商業大学卒業時に京口紘人をワタナベジムにスカウトし、プロデビュー前から共に歩んできた井上孝志トレーナー。彼にとって11月3日のWBAライトフライ級タイトルマッチは、京口との最終作業になる筈であった。

 井上をインタビューした。

写真: 山口裕朗 
写真: 山口裕朗 

 「挑戦者の出方を見ながら、しっかりジャブを突いて、臨機応変に戦おうと話し合っていました。的確なジャブとストレートを主体にしようぜ、と。ある程度、作戦は京口に任せていました。最後だし、本人の気持ちを聞きながらやっていましたね。

 練習メニューも『今日はミット打ちを6回お願いします』みたいな感じです。京口の代名詞と言えばボディアッパーですが、階級を上げてからは、左フックや右アッパーでも倒せるようにもなりました。ずっと引き出しを増やすようにやって来ましたから、それを継続していましたね。試合に出るように、ということで」

写真: 山口裕朗 
写真: 山口裕朗 

 11月1日まで体調面に問題はなかったが、京口の計量前に井上が抗原検査を受け、陽性反応が出た。京口もPCR検査の結果は陽性であった。2人は10日間、大阪市が借り上げているホテルでの生活を余儀なくされる。

 無論、井上と京口は別々の部屋である。一歩も外に出られず、隔離された部屋で過ごさねばならなかった。

 「僕が飲み歩いていたからだなんて言う人間もいましたが、そんなことは一切ないです。京口との最後の試合に集中していましたから。きちんと仕事を終えたうえで、ジムを去るという契約になっていました……、本当に残念です」

写真: 山口裕朗 
写真: 山口裕朗 

 井上は京口に「今まで、長い間ありがとう。今後は一ファンとして応援するから、ずっと頑張って下さい」と伝えた。

 京口は新たなトレーナーと仕切り直し、防衛戦を見据える。井上も新天地でトレーナーを続ける。

 それぞれの2021年がやって来る。 

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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