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新型コロナウィルスと共存する時代の飲食店の利用法とは?【#コロナとどう暮らす

山路力也フードジャーナリスト
コロナと共存する新時代に私たちはどんな飲食店に行けばいいのか?(写真:アフロ)

飲食業界は大打撃を受けている

 東京都では6月19日から接待を伴う飲食店やライブハウスの営業が再開できるようになり、一部の大規模なイベントを除き休業要請は全面的に解除された。小池都知事は事業者への感染防止ガイドラインの徹底を呼びかけるとともに、都民には自発的な感染防止の取り組みを呼びかけた。

 飲食業界では2月のインバウンド激減から売り上げの低下が始まり、4月の「緊急事態宣言」で国内需要も一気に落ち込み、今までにない落ち込みとなった。従来の売り上げの3割減は良い方で、良くて5割、ほとんどの飲食店は7割から9割減という異常事態が数ヶ月続いた。そもそも飲食業界は「薄利多売」のビジネスモデルになりがちで、数ヶ月分のキャッシュストックは一瞬にして消え去り、やむなく廃業に追い込まれた店も少なくない。

飲食店は本当に危険なのか?

 外出自粛が解除された今、私たちは社会活動や経済活動を再開させていかなければならない。これまでテイクアウトやデリバリーを利用していた人も積極的に飲食店の店内での喫食を楽しんで頂きたいと思っているが、その一方でいまだ外食に対する不安を感じている人がいるのも理解できる。しかしながら、一般的な飲食店での客における大規模なクラスター(Disease cluster、集団感染)が出た事例はそれほど多くはなく、感染報告の多くは従業員による感染である。

 一般的に気をつけるべきウィルスの感染経路は主に4つ。「接触感染(粘膜感染)」「飛沫感染」「空気感染(飛沫核感染)」「媒介物感染」である。もちろん店舗や業態によって差はあるが、一般的に飲食店は吸排気や換気に関してかなり神経を払った設計になっていることが多く、密閉空間にはなっていない店も少なくない。ラーメン店や蕎麦屋など、短時間で喫食が済む店の場合は飛沫感染や空気感染のリスクは低いと考えて良いだろう。また現実問題として媒介物感染のリスクも新型コロナウイルスに関しては決して高くはない。一番注意すべきは接触感染リスクだ。

 「自粛から自衛の局面」へと移行した新型コロナウイルス対策。飲食店側も感染拡大防止に配慮した対応をしているが、利用者である私たちも自分の身は自分で守るというスタンスで飲食店を利用しなければならない。そのためには今一度感染症対策の基本をしっかりと理解して、それに即した行動を取る必要がある。

「接触感染」「飛沫感染」に留意した行動を

 まず、大原則としては飲食店利用にかかわらず「他人との距離を確保する」「他人が触れたものへの接触を避ける」という2点が感染予防対策として重要となる。その上で「手指の消毒」「こまめな手洗い」「手を目や口にやらない」ということを習慣化する。これらの行動指針でほとんどの感染リスクは抑えられることは知っておきたい。その上で、飲食店を利用する時の注意点を挙げておきたい。

 まず「飛沫感染」の防止策としては、理想はしっかりと席間が確保されている店を利用することだが、現実問題としてそういう店ばかりがあるわけではない。安全なソーシャルディスタンス(2m以上)が確保出来ない場合は、やはりマスクを着用する必要があるだろう。マスクの着用は自分が感染しないためよりも、周りに感染させないための対策。スタッフにマスク着用を義務付けていたり、客に対してのマスク着用を促している飲食店はリスクが低いと考えて良いだろう。店内であっても喫食時以外は原則としてマスクを着用していればより万全だ。

 ラーメン店などカウンターに横並びで喫食する場合はそこまでリスクは高くないが、注意すべきは向かい合わせで座るテーブル席などの場合だ。真正面に他人が座るような状態は間仕切りがない限りは極力避けた方が無難だろう。席を減らしたり飛ばしたりとソーシャルディスタンスを確保している飲食店はリスクが低いと考えて良いが、席間の確保がされていても行列時や会計時に密集することがあるので注意が必要だ。

 もちろんしっかりと対策がなされていたとしても、私たちの利用方法も注意が必要となるだろう。家族や友人で出かけた場合にはおしゃべりを一切せず黙々とただ食事をするだけという必要はないが、不必要に大きな声で喋ったり騒いだりするのは当面避けておきたい。また利用する人数も大所帯は避けたいところだ。

安心して飲食店を利用するために

 次に「接触感染」の防止策としては接触を避けることが大前提で、接触したらすぐに手洗いや除菌をすることが基本だ。今回の新型コロナウィルスの感染ルートは眼や鼻、口などの粘膜からであり、健常な皮膚からの感染はないと考えられている。つまり手にウィルスがついたとしても、その手を眼鼻口に触れさせなければ良いということだ。

 手指や物に付着したウィルスは4時間から72時間程度のあいだ感染力があると考えられている。不用意に手を首から上に触れさせないのは基本中の基本だ。その上で、入店時に消毒用のアルコールを設置したり消毒を義務付けていたり、こまめに卓上や券売機などのアルコール除菌を行っている飲食店はリスクが低いと考えて良いだろう。さらにスタッフや客の入店時における検温も実施している店であればより安心だ。

 今、飲食業界は必死になって安心安全に営業出来る形を模索しており、行政のみならず民間でも自主的に飲食店の営業ガイドラインを作成して、感染拡大防止に取り組んでいるところだ(参考資料:「外食業の事業継続のためのガイドライン」)。客側も正しくウィルスや感染リスクを理解して、不必要におそれることなく飲食店を利用して欲しいと切に願う。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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