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有終の美を飾るのは福岡かバレットか。ラグビー日本代表候補23人も出場するTL決勝戦

斉藤健仁スポーツライター
この試合で引退するWTB福岡。初のTLタイトル奪取なるか(撮影:斉藤健仁)

いよいよ最後のトップリーグのファイナルが行われる。

5月23日(日)、東京・秩父宮ラグビー場でトップリーグのプレーオフファイナル兼日本選手権の決勝で、パナソニックワイルドナイツ(ホワイトカンファレンス1位)対サントリーサンゴリアス(レッドカンファレンス1位)が激突する。

◇両チーム合わせて日本代表候補23人が出場!

互いに各カンファレンスを無敗で通過し、2回戦から出場したプレーオフトーナメントも危なげなく勝ち上がって決勝まで駒を進めた。パナソニックが優勝すればトップリーグ最多タイに並ぶ5回目、サントリーが優勝すれば最多となる6度目の優勝となる。

2日前の21日(金)、両チームのメンバーが発表された。

パナソニックは今年の日本代表候補に選ばれている選手が11人&2019年ワールドカップ出場選手が8人、サントリーは今年の日本代表候補12人&2019年ワールドカップ出場選手4人という豪華な顔ぶれとなった。

パナソニックはキャプテンのHO坂手淳史とFLベン・ガンターという実力ある2人が復帰し、右WTBにヤマハ発動機戦で力強いランを見せていた、コカ・コーラのウィリアム・トゥポウの実弟であるセミシが再び先発に昇格。この試合でラグビーキャリアを終える元日本代表の左WTB福岡堅樹はいつも通り11番で先発する。

サントリーは準決勝と先発、控えともにまったく同じメンバーとなった。この試合でニュージーランドに戻ることが決まっている、2016年&2017年に世界最優秀選手賞に輝いたニュージーランド代表SOボーデン・バレットが司令塔として試合をコントロールする。

◆パナソニックワイルドナイツ

★2019年W杯出場 ☆日本代表候補2021

1稲垣啓太★☆  2坂手淳史(C)★☆ 3平野翔平

4ヒーナン ダニエル 5ジョージ・クルーズ★

6ベン・ガンター☆ 8ジャック・コーネルセン☆ 7布巻峻介

9内田啓介 10松田力也★☆

12ハドレー・パークス★ 13ディラン・ライリー☆

11福岡堅樹★ 15野口竜司☆ 14セミシ・トゥポウ

控え

16堀江翔太★  17クレイグ・ミラー☆  18ヴァルアサエリ愛★☆ 

19長谷川崚太☆ 20大西樹

21小山大輝☆  22山沢拓也  23福井翔大

◆サントリーサンゴリアス

1森川由起乙☆  2中村駿太☆  3垣永真之介☆

4トム・サベッジ  5ハリー・ホッキングス

6ツイ ヘンドリック★ 8ショーン・マクマーン 7小澤直輝☆

9流大★  10ボーデン・バレット ★

12中村亮土(C) ★☆ 13中野将伍☆

11江見翔太☆  15尾崎晟也☆ 14中鶴隆彰

控え

16堀越康介☆  17石原慎太郎 18セミセ・タラカイ 

19ジョー・ラタ  20テビタ・タタフ☆

21齋藤直人☆ 22田村煕 23梶村祐介☆

4月に順天堂大学医学部に入学し、現役最後の試合となるパナソニックの元日本代表WTB福岡は「特に変わることなく、今まで通り、とにかく目の前の一試合にすべてを捧げる、100%で臨むだけです。

ここまで(ラグビーを)続けるにあたって、何がやり残したことがないかと聞かれたら、所属したワイルドナイツでの優勝がやり残したこと。最後の最後でしっかり成し遂げてラグビーを終えられたらいい」と、初のトップリーグタイトル奪取へ静かに闘志を燃やしている。

リーグ戦で128得点を挙げて得点王に輝き、現役オールブラックスとしての実力を遺憾なく発揮しているサントリーSOバレットは「自分がマークされることで、他にスペースができる、そこでまた他の選手がプレーできるチャンスが広がる。

パナソニックのロビー・ディーンズはとても良いコーチだし、彼が率いるチームは、とてもよく鍛えられています。決勝戦はとても難しい試合になると思うので、この機会、チャンスをしっかりこなすだけ」と意気込んでいる。

サントリーの司令塔はNZ代表SOバレット。彼のゲームコントロールが勝敗の鍵を握る(撮影:斉藤健仁)
サントリーの司令塔はNZ代表SOバレット。彼のゲームコントロールが勝敗の鍵を握る(撮影:斉藤健仁)

◇攻撃が信条のサントリー、堅守速攻のパナソニック

それではまず両チームのスタッツを参考にしつつ、戦い方を予想してみたい。

サントリーはプレーオフの準々決勝が不戦勝だったため、9試合(9勝)を戦って522得点(平均58点)&失点169点(平均18.8点)となった。パナソニックは10試合(9勝1分)を戦い、452点(平均45.2点)&失点122(平均12.2点)となった。

「アタッキングラグビー」を信条とするサントリーはやはりリーグ1位の得点力を誇り、プレーオフトーナメントが進むにつれてFWの力強さが増し、ディフェンスも安定。また準決勝ではSH流、SOバレット、CTB中村キャプテンの3人がキックを蹴り、敵陣でのプレータイムを増やしてクボタスピアーズに勝利した。

準決勝後、SOバレットは「いつもと違ったスタイルで勝利できたことはとても良かった。試合の中で、時々は手堅く汚く勝つ試合もある。(試合の中で)勝つ方法を見つけないといけない」と話したように、やはりオールブラックスでも10番を背負うサントリーの司令塔の判断が試合の鍵を握ることは明白だ。

サントリーはボールをある程度継続しながらトライを狙いつつ、WTB福岡を筆頭に相手のバックスリーに走られないように、キックを蹴ったとしてもタッチにしっかり出す、または味方がキャッチしたりしっかりとチェイスしたりできる場所に蹴ることが欠かせない。

一方、「堅守速攻」、つまりアンストラクチャーからのアタックを得意とするパナソニックは、やはり、伝統とするディエンスで相手の得点を抑えて、後半まではクロスゲームに持ち込みたい。

そして「プレーオフトーナメントはやるか、やられるかの戦いになる。15人という考えではなく、23人でどう戦うかということでメンバーを選出している」とディーンズ監督が言うとおり、控えのHO堀江、SO山沢ら実力者を投入して勝負を決めたい。

特にプレーオフの2回戦の近鉄ライナーズ戦、そして準決勝のトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦では後半20分以降に4トライを挙げる爆発力を見せた。パナソニックとしてはこの2試合と同じような展開に持っていきたいところだ。

◇ファイナルの対戦成績は6勝4敗でサントリーがリード

2003年のトップリーグ開幕以降の決勝での対戦の成績を振り返ってみると、両チームはトップリーグのプレーオフおよび日本選手権の決勝で10回対戦しており、サントリーが6勝4敗と一歩リードしている。

僅差の試合も多く、2008年、2017年、2018年はサントリーが守り勝っており、逆にパナソニックは攻め勝っている試合が多いのが印象的だ。

トップリーグの優勝チームは過去、神戸製鋼コベルコスティーラーズ(2回)、東芝ブレイブルーパス(5回)、そしてパナソニック(4回)、サントリー(5回)と4チームのみで、今年の決勝もパナソニックとサントリーが決勝で相まみえる。

パナソニックが東芝、サントリーと並ぶ5回目の優勝を飾るのか。サントリーが最多となる6回目の優勝を成し遂げるのか。

いずれにせよ、パナソニック対サントリーの決勝戦はトップリーグだけでなく、日本ラグビーの歴史に残る一戦になることは間違いない。

◆2003年のTL開幕以降、両者の決勝での対戦成績

2008年 PO決勝 サントリー 14-10 三洋電機(現パナソニック)

2008年 日本選手権決勝 三洋電機 40-18 サントリー

2009年 日本選手権決勝 三洋電機 24-16 サントリー

2011年 PO決勝 三洋電機 28-23 サントリー

2011年 日本選手権決勝 サントリー 37-20 三洋電機

2012年 PO決勝 サントリー 47-28 パナソニック

2012年 日本選手権決勝 サントリー 21-9 パナソニック

2014年 PO決勝 パナソニック 45-22 サントリー

2017年 PO(兼日本選手権)決勝 サントリー 15-10 パナソニック

2018年 PO(兼日本選手権)決勝 サントリー 12-8 パナソニック

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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