あなたの顔を触るな:コロナ感染拡大を防ぐための行動科学
■人は自分の顔を触る
手にウイルスがつき、その手で顔を触ると感染する。
新型コロナウイルス感染予防が叫ばれるなか、だから手を洗おうと、勧めらています。
手に全くウイルスがついていなければ良いのですが、ついてしまうことがあります。手についても顔を触らなければ良いのですが、触ってしまいます。
人は、1時間に23回も自分の顔に触っているという研究があります。
この研究では、26人の医学生を対象にして調べました。その結果、次のことがわかりました。
・平均して1時間に23回、顔を触っていた。
・顔に触った中で、44パーセントが粘膜部分だった。
・粘膜のうち、口が38パーセント、鼻が31パーセント、目が6パーセントだった。
はい。手にウイルスがついていたら、ウイルスは体内に侵入します。
だから、手を洗いましょう。そして、顔を触らないようにしましょう。
でも、人が顔御触るのは、習慣です。無意識のうちに触っています。このように、無意識に行われている習慣的な行動を変えることはとても難しいものです。
そこで、心理学、行動科学の専門家たちが、私たちにヒントをくれています。
■その手で顔を触ってはいけない:心理学からのヒント
アメリカの「心理科学協会(Psychonomic Society)」が提供している情報を、「日本認知心理学会」が翻訳してホームページ上で公開しています。
■「新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡散を防ぐための行動科学者からのヒント」
1敏感になる
自分で自分の顔を触ることを意識することです。気をつけようと思うだけでも第一歩ですが、周囲の人に協力を頼んで、顔を触ったら教えてもらう方法もあります。
手首にブレスレットなどをつけ、顔に手が近づいたら気が付きやすくするのも方法の一つです。1日に何回触ったかを記録すれば、なお良いと協会は言っています。
2他者を助ける
あなたの大切な人をまっもるために、その人が顔を触ったら、静かに教えてあげましょう。叱ったり、苦々しく指摘するのではありません。そっと教えて、意識させてあげればOKです。
3手を他のことに使う
たとえば、手をポケットに入れておく。手に何かを持っておく。あるいは、顔を触りそうになったら、1分間握りこぶしを作るなどです。
4姿勢を変える
肘をつかない。肘をつきやすい場所に座らない。手を自分のお尻に下に入れるなど。顔を触りやすい姿勢になることを避けます。
5リラックス
深呼吸して、心と体をリラックスする。過去を後悔し未来を心配するのではなく、今この瞬間に集中する。自然の中でゆったりするなど、リラクゼーションの方法をいろいろ試して見ましょう。
■心理学、認知心理学、行動科学の活用
心理学の中にも、いろいろあります。医学の中にもいろいろあるのと同じです。医学の中にも、内科があり外科があり、西洋医学があり東洋医学もあります。
心理学ではフロイトやユングなどが有名ですが、たとえば認知心理学は、それとはちょっと違います。
行動科学も、心理学という意味で使うこともありますが、「人間の行動を科学的に研究し、その法則性を解明しようとする学問」で、心理学だけでなく、社会学、人類学、精神医学などが含まれることもあります。
顔を触らないようにするためには、「触らないようにしよう」と心で思うだけでは不十分です。人間の行動変容は簡単ではありません。だからと言って、罰や命令でも上手くいきません。
そこで、上記のような方法が考えられるわけです。中には、とてもシンプルなことも含まれていますが、以外と効果的だったりします。
ここで紹介されているのは、手で顔を触ることだけではなく、無意識に習慣的にやってしまっていることで変えたいことがあるなら、応用可能な方法です。
世界に広がる新型コロナウイルス。その拡大防止には、医学だけではなく、様々な学問や技術や現場の人々の知恵と工夫が必要です。みんなでアイデアを出し合い、みんなの命を守っていきたいと思います。
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