井上尚弥が比嘉大吾を圧倒「お互い成長しているが距離は縮まっていない」
チャリティーボクシングイベント「LEGEND」で、3階級王者の井上尚弥と元WBCフライ級王者で連続KO記録を持つ比嘉大吾が対決した。
このイベントは新型コロナウイルスと戦う医療従事者や患者の支援を目的に実施され、選手や選手関係者、観客全てにPCR検査を実施するなど厳戒態勢で開催された。
今回のエキシビジョンマッチでは、元世界スーパーフェザー級王者の連続11度の防衛記録を持つ内山高志氏や元3階級王者の八重樫東氏など新旧プロアマの注目選手12名が登場。6試合が行われた。
解説には元世界王者の渡嘉敷勝男氏、畑山隆則、竹原慎二氏、ゲストには3階級王者の田中恒成など豪華な顔ぶれが並んだ。
井上と比嘉のスパーリング
今回のエキシビジョンで最も注目されたのは、メインに行われた井上尚弥と比嘉大吾のスパーリングだ。
当初、井上尚弥の出場が決まり対戦相手探しに難航したが、井上が比嘉を指名しそれに答える形でこのスパーリングが実現した。
井上がスーパーフライ級で活躍していた頃、比嘉とスパーリングで戦ったことがある。
当時のことを振り返り比嘉は「スピードも速いし距離の移動が速かった」と答えた。
今や井上は3階級を制覇し、世界トップクラスのボクサーになった。
一方比嘉は、計量失敗から2年近くのブランクを経てバンタム級に舞い戻ってきた。
階級を上げてからは、スタイルチェンジに苦労し、昨年の2月の復帰戦ではKO勝利をしたが、続く試合では、堤聖也と戦い引き分け。その後、年末の試合をKOで勝利している。
フライ級から階級を2つ上げたため、バンタム級での戦いを模索しているところだ。
現在は、WBO世界ランキングで8位、WBA世界同級8位、WBC世界同級14位におり、主要3団体で世界ランクに入っている。
対照的な道のりを歩んできた両者がどのようなスパーリングを見せるのか注目が集まった。
井上が比嘉を圧倒
ヘッドギアを装着し、試合より重い12オンスのグローブで3分3ラウンドのスパーリングが始まった。
ファイター型の比嘉に対して、井上は中間距離で戦うボクサーファイターだ。しかし、この日は比嘉の距離に合わせて戦うように近い距離で打ち合った。
井上はスピード、パンチ力、当て感と全てを兼ね備えているボクサーだ。ディフェンス能力にも優れ、比嘉のパンチもなかなか当たらない。近い距離でもヒット&アウェイで的確にパンチを集めていく。
最終ラウンドには、両者ヘッドギアを外し、試合に近い状態で戦った。井上は時折ノーガードでも戦い、魅せる戦いを披露して3分3ラウンドのスパーリングが終わった。
正直、比嘉のパンチももっと当たるかと思われたが、蓋を開けてみると井上が比嘉を圧倒した。バンタム級で2つのベルトを持ち、全階級最強ランキングのパウンドフォーパウンドランキングでトップ3位に入る井上の強さが際立った。
ガチではないが真剣のスパーリング
試合後にインタビュールームでお互いの印象について語った。
井上は「楽しんでもらえたと思う。久々の日本でのイベントでやりがいがあった。色々組み合わせてスパーした。ガチではないが真剣だった」とコメント。
また比嘉に対して「レベルの差を見せなきゃいけない。互角だと評価が保てない。お互い成長しているが、距離は縮まっていない。盛り上げるために打ち合った」と話していた。
一方比嘉は「今は厳しい。1ラウンドで疲れた。3分長く感じた」と井上の強さを感じたようだった。「世界ランクに入っているし(いつか)やらないといけない。自分が行けないところではない。今後は自分次第」と語っている。
現時点では、まだ対戦は現実的ではないだろう。
今後の井上尚弥
井上は、バンタム級でのベルトの統一を目標として掲げている。この階級には以下の王者が君臨している。
井上の次戦はIBF王座の防衛戦が予定されている。
今回の試合では62キロほどでリングに上がっているが、バンタム級でも8キロ近くの減量が必要になるため、上の階級も視野に入れているだろう。
比嘉も階級アップの可能性があるようで、トレーナーの野木氏は「骨格がでかいのでフェザー級でも戦える」と話していた。
もし2人の対戦が実現するとしたら、スーパーバンタム級あたりではないだろうか。近い将来に2人の対決が見られるかもしれない。
一時期は引退危機に陥ってい比嘉だが、新たな環境でやる気も戻ってきたようだ。
能力は高いため、井上のライバルとなれるよう、頑張ってもらいたい。
今後の二人のライバルストーリーが楽しみだ。