チェルシーがフェリックス獲得を決断…ビッグクラブの大型補強とシメオネとの間に生まれた齟齬。
ビッグディールが、まとまった。
チェルシーが、ジョアン・フェリックス(アトレティコ・マドリー)の獲得を決めた。今季終了時までのレンタル契約で、ポルトガル代表のアタッカーがイングランドに向かった。
■カタールW杯での活躍
フェリックスは、先のカタール・ワールドカップにポルトガル代表の一員として参加。攻撃の一角を担い、母国のベスト8進出に貢献した。
だがアトレティコでは、アルバロ・モラタ(スペイン代表)、アントワーヌ・グリーズマン(フランス代表)らとの厳しいポジション争いに身を投じてきた。守備を重視するディエゴ・シメオネ監督の下、プレー強度の高い選手が求められるアトレティコで、好不調の波があるフェリックスを使うのは難しいところがあった。
そのフェリックスに、プレミアリーグの複数クラブが関心を寄せていた。マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、アーセナル…。しかしながら、最終的には、チェルシーがフェリックス獲得への本気度を示した。
チェルシーは昨年夏、オーナー交代があった。ロマン・アブラモビッチ氏がロシアとウクライナの政治情勢の影響で退任。新たにアメリカ人実業家のトッド・ベーリー氏を新たに迎え、再スタートを切った。
「ポスト・アブラモビッチ」時代と対峙する運びとなったチェルシーだが、資金面でいえば、周囲の不安は杞憂に終わった。ベーリー氏の就任以降、チェルシーは3億4500万ユーロ(約483億円)を補強に投じている。
この夏、チェルシーはヴェスレイ・フォファナ(移籍金8000万ユーロ/前所属レスター)、マルク・ククレジャ(6500万ユーロ/ブライトン)、ラヒーム、スターリング(5600万ユーロ/マンチェスター・シティ)、カリドゥ・クリバリ(3800万ユーロ/ナポリ)らを獲得した。
今冬の移籍市場では、ベノイト・バディアシレ(3800万ユーロ/モナコ)、アンドレイ・サントス(1200万ユーロ/バスコ・ダ・ガマ)らが到着した。
そして、次のターゲットになったのが、フェリックスだった。
■期待のヤングタレント
フェリックスはベンフィカのカンテラ出身選手だ。ブレイクしたのは、2018―19シーズン。公式戦43試合に出場して20得点11アシストを記録した。
その活躍で、多くのクラブの関心を集めた。そんなフェリックスを射止めたのがアトレティコだった。
アトレティコはグリーズマンがバルセロナに移籍する運びとなり、その後釜を探していた。2019年夏、移籍金1億2700万ユーロ(約177億円)で、フェリックスのアトレティコ移籍が決定した。
しかし、フェリックスは適応に苦しんだ。若さゆえか、パフォーマンスが不安定で、また度重なる負傷に悩まされた。そうこうしているうちにグリーズマンの復帰が決まり、立ち位置が危うくなった。
「私は常にアトレティコにとって何が最善かを考えている。我々がアトレティコに来て11年が経つ。これまで、チームの勝利、クラブの成長のために全力を尽くしてきたつもりだ。1試合1試合戦う。それだけに集中してきた。それ以外のことは、なるようにしかならない」とはシメオネ監督の弁である。
「アトレティコに、代替不能な選手は存在しない。出来事というのは、起こるべくして起こる。ジョアンは我々にとって非常に重要な選手だ。W杯で素晴らしい活躍を見せた。監督からの信頼を得て、ゴールに関与していた。我々も、彼に落ち着きと喜びを与え、W杯で見せたようなプレーをアトレティコでも見せられるようにしてもらいたい」
アトレティコはフェリックスの移籍で、前線の補強を考慮せざるを得なくなった。ボルハ・イグレシアス(ベティス)、マルクス・テュラム(ボルシアMG)、メンフィス・デパイ(バルセロナ)らが補強候補に挙げられている。
フェリックスはアトレティコで公式戦131試合34得点18アシストを記録した。アトレティコが2027年夏までの契約延長に動いたことからも、両者のストーリーはまだ完結していない。
アトレティコは現在、リーガエスパニョーラで5位に位置している。チャンピオンズリーグ出場権を獲得できなければ、シメオネ監督のクビさえ危うい状況だ。そして、それがフェリックスの復帰と密接にリンクしてくるだろう。