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今日、リングに上がる47歳の元パウンド・フォー・パウンド

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:REX/アフロ)

 8月19日(月曜日)の深夜、フロイド・メイウェザー・ジュニアがメキシコシティに到着した。力強いマリアッチ・ミュージックに迎えられ、その伝統的な音楽を気に入ったかのように、元パウンド・フォー・パウンドはリズムをとった。予想外の心の籠った、”おもてなし”に立ち止まったメイウェザーは、その音色に耳を傾けただけではなく、余興に参加し、音楽に合わせて踊った。そして、伴奏者の一人を抱き締め、喜びと感謝の気持ちを表した。

写真:ロイター/アフロ

 傍にいた何名かが漏らした。

 「これまでに見たことのない光景だ。フロイド・メイウェザーがメキシコの音楽を楽しんでいる瞬間を共有するなんて! 素敵過ぎる光景だ」

 笑みを浮かべたメイウェザーは、空港からホテルに移動する前に、メキシコのファンにメッセージを送った。

 「歴史を誇り、数々の名チャンピオンが誕生した場所――メキシコシティに来ることができてとても嬉しい。ボクシング界に多くを与えたこの国で戦えることは、私にとって非常に名誉だ。リングで会おう」

写真:ロイター/アフロ

 フロイド・“マネー”・メイウェザー・ジュニアとニューヨーク州ロングアイランド出身のジョン・ゴッティ3世との再戦が、メキシコシティの8月24日に予定されている。会場は、アレナ・シウダ・デ・メヒコ。

 メイウェザーの相手であるゴッティ3世は、悪名高いマフィアのボス、ジョン・ゴッティの孫で、この8ラウンドのエキシビションマッチは“リターンマッチ”だ。

写真:REX/アフロ

 スーパーフェザーから5階級を制したメイウェザーも、早47歳。2015年9月にアンドレ・ベルトを判定で下してから、9年が経つ。全盛期の動きとは比較にならないが、体付きを見れば、トレーニングを続けていることが伝わって来る。

写真:REX/アフロ

 1999年6月18日、筆者はノースキャロライナ州フィアットビルに6名の元世界チャンピオンが集い、シニアツアーのように戦う興行を取材した。それぞれ、ボクシング界に名を刻んだチャンプ達だったが、プヨプヨした腹は中年男のそれだった。彼らはかつての名前を買われ、いくばくかのカネを得るためにリングに上がった40代であった。

 その6名とメイウェザーの体は、やはり違う。彼は、自分をブランディングし、カネになる方法を探し当てた稀有な存在だ。文字通り”MONEY”メイウェザーなのだ。

写真:ロイター/アフロ

 間も無く、エキシビションのゴングが鳴る。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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