2019年10月、スティングが来日公演。オールタイム・ベストで魅せるライヴ
●40年以上に及ぶキャリアの総括
スティングの“MY SONGS”ジャパン・ツアーが2019年10月7日(月)、福岡国際センター公演からスタートした。
アルバム『マイ・ソングス』を引っ提げて行われる日本公演。ザ・ポリスからソロ・キャリアまで、オールタイム・ベストを選りすぐって再演したアルバムに伴うツアーゆえ、披露されるのはグレイテスト・ヒッツの数々だ。
「孤独のメッセージ」「見つめていたい」から「セット・ゼム・フリー」「フラジャイル」「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」「フィールズ・オブ・ゴールド」まで、スティング・クラシックスの数々が惜しげもなく繰り広げられるライヴは、スティングというアーティストの40年以上に及ぶキャリアの総括である。
それと同時に、彼の音楽を長く愛してきたオールド・ファンにとっては自らの音楽生活のひとつの総決算であり、若い音楽リスナーにとってはロック/ポピュラー音楽史上に冠たる名曲・名演に触れる絶好の機会だ。
『マイ・ソングス』にはスティングの輝かしい軌跡のハイライトといえるナンバーが詰め込まれているが、熱心かつマニアックなファンであればあるほど、「この曲が入っていない!」「あの曲が入っていない!」と言いたくもなるだろう。
だが、今回のライヴでは『マイ・ソングス』に収録されていない曲もプレイされる。あえてネタバレは避けるが初日・福岡公演では、空前のヒットを記録した『シンクロニシティ』(1983)からも『マイ・ソングス』未収録の数曲が演奏された。幕張〜仙台〜大阪公演でもそれが再現されるのでは?...と、楽しみでならない。
●『シンクロニシティ』にまつわる陰謀論?
それにしてもザ・ポリスの『シンクロニシティ』は、まさにモンスター・アルバムだった。
1983年といえば、マイケル・ジャクソンの『スリラー』が世界のチャートを席巻した年だ。全世界のセールスが1億枚ともいわれる史上最高のベストセラー・アルバムである同作は1983年の米“ビルボード”誌チャートで22週にわたって1位を獲得している。
だが、『スリラー』の独走を2度にわたって食い止めたのが『シンクロニシティ』だった。このアルバムは17週間、チャート1位を奪取している。
シングル・カットされた「見つめていたい」「キング・オブ・ペイン」「アラウンド・ユア・フィンガー」「シンクロニシティII」もヒットを記録した。
『シンクロニシティ』があまりに大きな成功を収めたことで、奇妙な噂が流れたことがある。
当時はまだアフリカ系アメリカ人アーティストによる音楽が“ブラック・ミュージック”とされてきた時代。あまりにアフリカ系アーティストの作品が売れすぎてしまうと、白人の立場が弱くなってしまう。アフリカ系によるアメリカ社会の転覆を阻むためにCIAが暗躍、『スリラー』の独走にストップをかけるアルバムとして『シンクロニシティ』が使われた...というのだ。
もちろん根も葉もないデマと切ってしまうのは簡単である。しかし、ザ・ポリスのドラマーであるスチュワート・コープランドの父親マイルスは実際にCIA高官であり、1953年にはイランの政権を転覆させるアイアス作戦に関わるなどしていた。
この噂について筆者(山崎)はスチュワート本人に訊いてみたことがあるが、「ハハハ、それは事実さ!あと『見つめていたい』は冷戦構造を終結させるための秘密計画だったんだ(笑)」とジョークで返されてしまった。ちなみにスチュワートによると、スティングは海外のインタビューでCIA陰謀説についてしつこく訊かれ、本気で怒り出したこともあったのだとか。
そんな噂の真偽はともかく、スティングの音楽が我々の心を揺さぶり続けることは紛うことなき事実だ。オールタイム・ベストで臨む日本公演、必見である。
【公演情報】
STING “MY SONGS” ジャパン・ツアー
- 福岡
2019年10月7日(月)
福岡国際センター
18:00 open / 19:00 start
- 幕張
2019年10月9日(水)/10日(木)
幕張メッセ 7・8ホール
18:00 open / 19:30 start
- 仙台
2019年10月12日(土)
ゼビオアリーナ仙台
17:00 open / 18:00 start
- 大阪
2019年10月15日(火)
丸善インテックアリーナ大阪
(大阪市中央体育館)
18:00 open / 19:00 start
【公演公式ウェブサイト】