川口祖父母殺害事件の少年に懲役15年:少年は「貧困」「居所不明児」そして「学習性無力感」だった
■祖父母を殺害た強盗殺人罪の18歳少年に懲役15年の判決
強盗殺人は、非常に重い罪です。しかし報道を見ると、単なる金目当ての強盗殺人ではなく、非常に劣悪な環境に育ち、今回も「殺してでも」金を取って来いと母親に強制された結果でした。母親は、強盗罪に問われています。
今回、少年への判決は、無期懲役の求刑に対して懲役15年の判決でした。
■少年は「居所不明児」だった
少年は、社会から見えなくなっていた存在でした。義務教育も受けていないのに、救いの手は差し伸べられませんでした。
この少年も「子どもの貧困」の一事例です。経済的な貧困に加えて、親たちの心の貧困と人間関係の貧困の犠牲者とも言えるでしょう(「学校現場で感じる子供の貧困と格差」Yahoo!ニュース個人:碓井真史)。
■学習性無力感
「学習性無力感」とは、どんなに努力しても何も良いことはないと繰り返し経験することで、自分は無力であると感じてしまっている状態です。
今回の裁判では、祖父母を殺害し、金を奪った事実は争っていないようです。問題は、情状面であり、心理面でしょう。
恵まれない環境、母親の強制ということだけでは、少年の心理状態を説明しきれないのかもしれません。鑑定医、弁護側としては、通常の判断、行動ができない心理状態だったのだと主張したいのでしょう。
精神鑑定の結果として出てきているように少年が学習性無力感だったのどうかは、意見が分かれるかもしれません。裁判所としては、マインドコントロールなどと同様に、簡単にはその概念を受け入れないでしょう。
少年が犯した重い罪は、環境がどうであれ、否定できません。殺人犯を安易に擁護できません。しかし、少年の犯行を形式的に強盗殺人と見るだけではなく、精神医学、心理学的に探っていくことも、重要なことではないでしょうか。
少年側の弁護士は、即日控訴しています。