決算で明暗分かれたTwitterとFacebook、広告の違いが影響?
10月25日(米国時間)にFacebook、翌26日にはTwitterが2021年7-9月期決算を発表しました。iOSのプライバシー仕様の変更に業界が揺れる中、意外にも広告事業の明暗が分かれる結果になりました。
先週、広告に依存するテック業界に大きな衝撃を与えたのがSnap株の暴落です。同社はiOSの「アプリトラッキングの透明性」(ATT)の影響が予想以上に大きく、サプライチェーンの混乱も拍車をかけるとしていました。
そしてFacebookは売上高が市場予想を下回る決算ミス。自社株買いを追加発表したことで暴落を免れた感はありますが、広告売上の鈍化についてはSnapと同じ理由を挙げました。
ところがTwitterの売上高は予想とほぼ同じ、iOSの影響はわずかなものにとどまったと発表したのです。なぜ、iOSの仕様変更はどのアプリにも平等に適用されたにもかかわらず、ここまで明暗が分かれたのでしょうか。
Twitterは株主向けの資料の中で、「長期的な影響を評価するには時期尚早」としつつも、アップルの新しい測定ツールをいち早く採用し、技術スタックを適応させてきたことで影響を最小化できたと説明しています。
その背景として、広告の特性の違いも注目されています。Facebookはユーザーを追跡することで商品の購入につながる効果的な広告を打てることが強みでしたが、iOSの仕様変更で追跡を拒否するユーザーが増え、大きな打撃を受けています。
これに対してTwitterの広告はブランドやキャンペーンの認知度を高める、あるいはリツイートによるバズを狙うといった「ブランド広告」が中心で、iOSの仕様変更の影響を受けにくいとの指摘があります。
なお、両社の規模が大きく異なる点には注意が必要です。7-9月期の広告売上はFacebookの283億ドル(約3兆2200億円)に対し、Twitterは11.4億ドル(約1300億円)です。ではユーザー1人あたりの売上はどうかというと、これもFacebookのほうが高い状態が続いています。
そのため、Twitterには収益向上に向けて大きな期待がかかっている状況に変わりはないものの、iOSの影響については、いまのところTwitterのほうがうまく回避できている印象です。
「在庫不足」の影響も軽微か
広告事業が直面するもう1つの懸念事項として、サプライチェーンの混乱や人手不足に起因する問題についても、Twitterは意外な強みを見せています。
商品の在庫不足や物流の人手不足により、売る物がない状況が深刻化しています。こうした状況で真っ先に削られるのが広告支出です。
しかしTwitterによれば、これまでの広告売上の半分以上がサービスやデジタル商品に関連したものだったとのこと。これらの広告は経済の混乱による影響を受けにくいといえます。
SnapやFacebookも手をこまねいているわけではなく、iOSの仕様変更に全力で対応していくとは思われるものの、これまでSNSの中でも収益性に乏しいと評価されてきたTwitterに反撃のチャンスが訪れたというのは面白いところです。