世代最強打者、浅野は全打席敬遠が正解だった?
OPS2.600の怪物は素直に歩かせる方がマシ?
夏の甲子園で高松商の浅野翔吾が大活躍。驚愕の2発で聖地を沸かせ、大会注目打者から世代最強打者へと一気に評価を上げた。
まずは初戦の佐久長聖戦の5回、フルカウントから右中間へ高校通算65号を放つ。追い込まれた右打者が甲子園の広い右中間に放り込むのは容易ではない。準々決勝では選抜準優勝に輝いた近江の注目投手、山田陽翔からライナー性の打球をバックスクリーンに突き刺した。
この2本塁打を含め甲子園成績は10打数7安打で打率.700、3本塁打、6打点。15打席で三振は1つもなかった。2塁打2本に本塁打3本と長打も多く、長打率1.800。四死球5個で出塁率は.800だった。出塁率+長打率で計算されるOPSは2.600ととんでもない数字を残している。
全打席安打だった場合は長打率も出塁率も1.000だからOPSは2.000。浅野はこれより高いのだから安打を打つと成績が下がる。こんな打者に対しては勝負を避けるのが賢明だ。
佐久長聖は5点ビハインドの8回1死1、2塁で浅野を打席に迎えると、伝令を送るつもりが勘違いで一度は申告故意四球がアナウンスされた。近江は2点リードの7回1死1、2塁の場面で浅野を歩かせた。同点の走者が得点圏に進み、逆転の走者を出すことになるリスクを承知の上での判断だった。どちらも1塁は埋まっていたがOPS2.600の打者に対してはこの選択が間違いだとは言い切れない。
しかも浅野は打つだけの選手ではない。塁に出せば走者としても非常に高い能力を持つ。3回戦の九州国際大付属戦では50m走5秒台の俊足ぶりを遺憾なく発揮した。
切り返しからあっという間にトップスピードへ
第1打席は当たり損ないを内野安打に変え、盗塁を決めて2塁に進む。この後、4番・山田一成の適時打で先制のホームを踏むがこの時の走塁が凄かった。
2塁走者がワンヒットで生還出来るかどうかはインパクトから7.0秒を切るかどうかが目安。浅野はわずかにこのタイムを切れていないがそれには理由がある。打球がショート付近に飛んだため、ライナーバックで戻りかけていた。その後、抜けると判断しての切り返しからトップスピードに入るまでがとてつもなく速かった。スラムダンクファンなら主人公・桜木花道の身体能力に驚いた山王工業・河田雅史の「ズイブン長えこと宙にいるんだな。そして着地するや速攻の先頭を駆けるあの脚力・・・!!ブロックにフルパワーでジャンプしたあと、あれだけのダッシュは並じゃできねぇ」というセリフを思い出したはず。そうなのだ、浅野はずいぶん速くトップスピードに入る。ライナーバックで切り返した後、あれだけのダッシュは並じゃできないのだ。
追い込まれてから右打者が甲子園の広い右中間に叩き込む、山田からのバックスクリーン弾と並んでこの走塁も超高校級のプレーだ。
世代最強打者兼走者は9月に開催される第30回U18W杯での高校日本代表入りが確実視されている。外国の好投手の皆さん、浅野は敬遠した方がいいですよ。でも出塁後は足に気をつけてくださいね。