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カナフレックスが日本選手権に2年連続出場!元阪神の福間監督、藤井助監督「全国での初勝利を」

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
9月16日、近畿地区最終予選で2年連続の日本選手権出場を決めたカナフレックス。

 ことし従来の秋開催に戻った『第47回社会人野球日本選手権大会』は、10月30日から11月9日に京セラドーム大阪で行われます。

 3月の『JABAスポニチ大会』をはじめとする11の“日本選手権対象大会”で優勝したチームと、前回優勝の大阪ガス、ことしの都市対抗を制したENEOS、8月末に行われた『全日本クラブ野球選手権大会』優勝の大和高田クラブが、それぞれ出場決定。

 9月に入ってから各地区で最終予選が行われ、既に8地区の代表・計20チームが決まりました。現在開催中の北海道地区最終予選で残りの1チームが選出され、全代表が出揃います。

 その中で、元阪神・藤田太陽監督が率いるロキテクノ富山(北信越)は準決勝で涙を飲み、都市対抗とのダブルドーム出場はかなわず。同じく石井将希投手がいるエイジェック(関東地区)も、決勝で日立製作所に敗れています。京セラで会えるのを楽しみにしていたので、本当に残念でした。

 なお関東地区の5代表に入った三菱重工Eastには、元オリックスと中日の武田健吾選手がいます。ENEOSの補強選手として初めて出た都市対抗で優勝を経験する運も持って、今度は自チームのユニホームで京セラドームに“凱旋”とは!最高の社会人1年目でしょうね。

 同じく社会人1年目、三菱重工West の金田和之投手(元阪神、オリックス)は、JABA京都大会で優勝したので出場決定。よって最終予選には出ていません。

 さて、昨年に続いて4回目の本大会出場を決めたカナフレックス。その予選4試合の戦いぶりを、元阪神の福間納監督藤井宏政助監督、選手らのコメントで振り返ります。 

【1回戦】新打順で2ケタ安打!

 9月6日にわかさスタジアム京都で始まった『第47回社会人野球日本選手権大会・近畿地区最終予選』、その初日にカナフレックスは神戸ビルダーズと対戦しました。オリックス、阪神などでプレーした斎藤秀光監督が率いる神戸ビルダーズとは、昨年の日本選手権最終予選で最後となる4つ目の代表枠を争い、カナフレックスが勝った、それ以来の顔合わせです。

 この日は台風11号の影響か、試合前半は強風、後半は激しい雨というコンディションでした。そんな中、1回に連打と犠打で1死二、三塁として二ゴロで1点を先取された大西健太投手。しかし、その裏に相手エラーで追いついたカナフレックスは2回2死から5連打を放って3点追加!4回にも2死から連続二塁打で1点を加えています。

◇1回戦 (9/6)

神戸ビルダーズ-カナフレックス

   神戸 100 000 100 = 2

   カナ 130 100 00X = 5

 ▼バッテリー

  【神戸】鶴井-室崎-内海 / 茨木

  【カナ】大西-瀬古-迫 / 田中怜

 ▼二塁打 カナ:森田、田中慧 神戸:吉田

「ボール球を振らなくなった」

 試合後、福間監督は「都市対抗予選が終わってから、きょうが一番いい試合でした!」という言葉。「これまで点が取れなくて。練習試合をしても大学生相手に2点、1点、0点という試合ばっかり…また社会人には連続完封負け。最後は1対1の引き分けだし。3得点が最高だった」

 そして「打順を大幅に入れ替えたんです。森田はいつも5番か6番、田中慧樹も9番だけど、そこを1番と2番に回して。山崎が上がってきたから3番にして、とか。初戦に強いバッターの新宅が9番で、そこから1、2番で得点能力が上がったのは大きいですよ」

 「それとボール球、特に低めを振らなくなったでしょ?ワンバウンドとか、前は振りまくっていたけど。ピッチャーの投球がこの軌道でいったら低めはボールだぞっていうことをずっと言い聞かせてきた。そうしたら最近、本当に振らなくなったんです。それも収穫です」

 「一番よかったのは、取られたあとすぐ取り返したこと。あとは、内容のあるヒットばっかりだったこと!2アウトから5連打(2回)とか、すごく内容があった。今ピッチャーが、うまくいっている。いい相乗効果でほとんど抑えているので、あとは作戦を立てて点を取れれば十分にやれると思います!」

いい状態の投手陣

 兼任コーチの大西投手は「初戦の緊張感というのは少なからずあったかと。そんなに緊張しているつもりはなかったんですけど、実際マウンドに立ってみると“もう一度、気を引き締めないといけないな”という状態でした。ポンポンと連打されたので、何とか最少失点で帰ろうという気持ちしかなかったです」

 そのあと「(3番の)送りバントでちょっと落ち着いたかな。ピンチにはなったんですけど、サードランナーを還してもいい気持ちで投げた結果、警戒していた4番と5番をしっかり抑えられたのはよかった」と振り返りました。

 次の日本製鉄広畑戦は「今、オープン戦も含めピッチャーが3点以内に抑えている。誰がどこで投げても、準備をしっかりしていいパフォーマンスを出して。あとは都市対抗予選の負けスコア(0対1)を逆にして、俺らが1対0で勝とう!とピッチャー陣で言っています」とのこと。

先頭打者としての働き

 続いて、主将・森田皓介選手。都市対抗予選は中軸でしたよね?「はい、ずっと5番です。都市対抗が終わってから初めて1番や、オープン戦でもいろんな打順をやりました。どこと言われても自分のスタイルは変えずにいこうと決めていたところで1番を任せられて、自信を持っていけたと思います」

 いい仕事ぶりで。「そうですね。与えられた役割を果たそうかなと、どんどん振っていこうと思ったんですけど、初回にああやってフォアボールで出塁できてよかったです」

 山崎壱成選手の右前打とエラーで三塁を回った時は迷いなく?「コーチに従って一度ストップしたんですけど、止まり切る前にライトを見たら後逸していたので行けるという自分の判断で。あそこはもう常にホームを狙っていた結果だと思います」

 2回に勝ち越しのタイムリー、4回にも二塁打。先頭打者として十分な働きかと。「起用されたところで仕事ができてよかったですし、後ろのバッターが田中(慧樹)さんも山崎さんも打ってくれていたので、僕は何とか出塁しようという気持ちでいました」

 ここまでのオープン戦で点を取れていなかった?「そうなんですよ。いつもピッチャーに抑えてもらっていたんで、ちゃんと援護ができてよかったと思います」

緊張の2番打者

 田中慧樹選手は初の2番に「緊張しました…やばかったです。全然、ご飯を食べられなかった」と言っていました。でも1打席目に落ち着いて犠打を決めたのでは?「バントのために2番にいると思って、初回にあったのでちょっと楽になりました」

 2回には森田選手と連続タイムリー、4回にも左中間フェンス直撃のタイムリー二塁打、7回は先頭で中前打の3打数3安打2打点!

 「(森田)皓介と一緒にずっと『今のはよかった』とか『あれはこうしよう』とか意見を共有していました。それに毎回、皓介が先にいたので、2人で(点を)取ろう!と思って」

田中慧樹選手は、夫人が観戦した2試合ともホームランを放ちました。この日はフェンス直撃の惜しい二塁打!「これも奥さんパワーです。パワー頂戴と言ってきたので」とニコニコ。
田中慧樹選手は、夫人が観戦した2試合ともホームランを放ちました。この日はフェンス直撃の惜しい二塁打!「これも奥さんパワーです。パワー頂戴と言ってきたので」とニコニコ。

「9月6日に合わせてくれ」

 この日の締めは藤井助監督。2ケタ安打ですね!「この予選前のオープン戦で、調子悪いわけじゃなかったけど点が入らなかった。でも、もともと振れていたし、選手には『9月6日に合わせてくれ』と言っていたんです。ちょうど合いましたね」と笑顔。

 そして「きょうは福間さん考案のオーダーですよ」とニヤリ。そうなんですね!なかなか思い切ったチェンジで。緊張の2番・田中慧選手に対しては「最初にバントを決めて楽になったかも」と話しています。

 ちなみに森田選手が「きょうは外野3人とも2安打ずつです!」と自己申告してくれたのですが、その通り!レフト・山崎壱成選手(3-2-1)、ライト・新宅優悟選手(3-2-0)、そしてセンター・森田選手(3-2-1)と外野手3人で計6安打2打点でした。

外野トリオが2安打ずつ!レフト・山崎壱成選手(中)、ライト・新宅優悟選手(右)、センター・森田皓介選手(左)です。
外野トリオが2安打ずつ!レフト・山崎壱成選手(中)、ライト・新宅優悟選手(右)、センター・森田皓介選手(左)です。

【2回戦】タイブレークを制す

 中1日で迎えた2回戦は、日本製鉄広畑が相手。カナフレックスは4回、この日は4番の森田選手が先頭でサード内野安打と二盗、1死後に6番・古和田仁選手がレフトへ2ランを放って先制しました。

 先発の迫勇飛投手は4回に2死から四球と二塁打で1点、6回も2死からソロホームランを浴び同点とされます。2対2のまま試合は延長戦へ。タイブレーク方式の10回表、カナフレックスは連続死球で1点勝ち越し、森田選手のタイムリーでもう1点!4対2とします。

 その裏、7回から登板の瀬古創真投手が四球で無死満塁として交代、続く高瀬翔悟投手が押し出しの四球で1点返されますが、以降はフライ2つに切って取り試合終了。1点差で逃げ切り、代表決定戦へ駒を進めました。

◇2回戦 (9/8)

カナフレックス-日本製鉄広畑

   カナ 000 200 000 2 = 4

   広畑 000 101 000 1 = 3

    ※延長10回(タイブレーク)

 ▼バッテリー

  【カナ】迫-瀬古-高瀬 / 喜来-田中怜

  【広畑】藤野-神頭-前川-島袋-森本 / 小出

 ▼本塁打 カナ:古和田(藤野) 広畑:岡(迫)

 ▼二塁打 広畑:上田、椎名

9月8日の2回戦、4回に先制の2ランを放った古和田仁選手。
9月8日の2回戦、4回に先制の2ランを放った古和田仁選手。

最高の試合!と福間監督

 最後はヒヤヒヤされたのでは?と問われた福間監督は「最後だけじゃない、ずっとヒヤヒヤよ。向こうはいいピッチャーがどんどん出てきたので、そう点は取れんと思ったけど」と苦笑い。

 そして「俺はきょう感動した!初めてやわ、感動というのは。今までピッチングコーチして、ことしから監督になって、こんなに粘った試合は今までないし。タイブレークになったら、だいたい4点取られて負けていたし」と続けました。

 「瀬古がああなっても、高瀬が抑えた。高瀬があの場面で出るのはことし初めてだったけど、それでも打たれない、あの意気込みね。きょうは出した選手をみんな信じた。何とかやってくれるだろうと。最高の試合をしてくれたね」

 さらに、同点とされたあと7回1死一、三塁の場面であった6-4-3の併殺についても絶賛です。「野手も、田中慧樹のあのダブルプレー!ここという時にすごくいいプレーが出ている。これは成長の証だと思うんですよ」

 「あのプレーが左右したでしょうね。田中慧樹がよく捕って、そのあと米倉もよく投げて、ワンバウンドを澤田も捕って、全部がうまくいった。こういう試合をしていたら、そんなに無様な負け方はないでしょう」

この日の先発は2年目の迫勇飛投手。そしてキャッチャーは喜来友貴選手でした。
この日の先発は2年目の迫勇飛投手。そしてキャッチャーは喜来友貴選手でした。

選手さまさま!と藤井助監督

 藤井助監督も「よかったですね。よく守りましたね」と守備を評価。5月のベーブルース杯も3試合ノーエラーでしたが、それ以上に守って勝った試合で「ここ一番でしっかり守れているのが今、接戦をものにしますね。選手さまさまです」と笑顔も見えました。

 ことしは4番を打っていた古和田選手が6番に下がって久々のホームラン。藤井助監督は「古和田も1本出て、気持ちがちょっと楽になったんじゃないですかね。結果が出ていなかったんで、これで次からまた雰囲気が変わるんじゃないですか」と期待しています。

 また「きょうはみんな“つなぎ”の野球でしたね。クリーンアップとか関係ないんじゃないですか(笑)。誰がどうなるか、わかんないですよ」とも。そして「ここからです。ここからが一番しんどいので」と慎重な発言。そうです。過去も2勝したあと勝てなかった経験がありますからね。

 話が終わって「鳥さん、いましたね!カメラマン席にいたんですよ」と何だか嬉しそうな藤井助監督。カナフレックスの前に、元阪神・鳥谷敬さんがコーチを務めるパナソニックの試合があったのです。鳥谷さんがいて緊張した?と聞いたら笑いながら頷いていました。

3回、先頭に死球を与えた迫投手(右)。次打者の初球でバントされますが、これを迷わず二塁へ送球してアウト!田中慧樹選手(左)が転送した一塁はセーフで併殺はならなかったものの、ナイスプレーでした。
3回、先頭に死球を与えた迫投手(右)。次打者の初球でバントされますが、これを迷わず二塁へ送球してアウト!田中慧樹選手(左)が転送した一塁はセーフで併殺はならなかったものの、ナイスプレーでした。

今度は4番でグッジョブ

 10回に貴重な2点目をたたき出した森田選手は、そのシーンを振り返って、こう話しています。

 「都市対抗予選最後の日本新薬戦で同じような場面があって、山崎さんと僕でチャンスに打てなかった悔しさが打席の前によみがえってきて…。ここはもう絶対に打たなアカンと思ったとこで、前の山崎さんがデッドボールで僕につないでくれたので、とにかく集中して還すという気持ちだけでした」

 そして、4番で決められて嬉しい?と尋ねたら「いや~もう、よかったです!」と安堵の笑顔です。

4番・森田選手は4回二内野安打と二盗、このあと古和田選手のホームランで生還します。
4番・森田選手は4回二内野安打と二盗、このあと古和田選手のホームランで生還します。

 ついで瀬古創真投手。10回はタイブレークで残したランナーを高瀬投手の押し出しで還してしまいましたが、その前に2対2の7回から3イニングを無失点!「絶対に点を取られたらアカン!それだけは嫌でした。気持ちですね」。まさに気持ちが表れる投球でした。

 7回1死一、三塁のピンチで遊ゴロ併殺打は助かったでしょう?「正直、1アウト一、三塁でヤバい…と思ったんですけど打たれて。ゲッツー!と思ったところです。(田中)慧樹さんがすごかったですね。助かりました。きょうは助けられました!」

 野手に感謝、感謝のルーキー左腕です。

7回から登板した瀬古創真投手。頼れる左腕です。
7回から登板した瀬古創真投手。頼れる左腕です。

全力で腕を振るだけ

 高瀬投手は、その瀬古投手に代わって、タイブレークの10回無死満塁で登板。大ピンチで行けと言われた時の心境を聞かれ「10回が始まる前から、1人終わって右バッターだったら行くぞと言ってもらっていたので早めに準備ができて、緊張はしていたけど気負うことなくマウンドに上がれてよかったです」と答えています。

 まず1死を取った見逃し三振、球種は?「真っすぐだったと思います」。初球に空振りを取れたのは大きかった?「そうですね。1ストライク目をどう取ろうかなと思っていたので、それを空振りで取れたのは大きかったです。(それも)ストレートです」

 自信があるというストレートについて「この冬でもう一回磨き直そうと思ってトレーニングを積んできた。球速もそうですけど、同じストレートでもアウトコース低め、インコース低めときっちりコースを狙って、高めには浮かないように練習していた」とのこと。

 2死を取ったところで監督がマウンドへ行って何と?「全部お前に任せたぞ、と言ってもらえたので、その気持ちに応えるよう腕を振ろうと思いました」。それにしても嫌ですよね、タイブレーク。「はい、緊張しました(笑)」

 本戦まであと1つ、抱負を。「僕の前に投げている大西さんとか迫とか、いいピッチャーが多いので自分は任されたイニングで全力で腕を振るだけです。きょうもチーム全員が来られず、何人か会社に残って仕事をしていたので、その人たちの分まで勝てるように頑張ります」

 10回に押し出し四球を与える前の球がワンバウンドになるボールで、それを田中怜央那選手がガッチリ止めました!田中怜選手は「練習通りです」と涼しい顔。

 でも高瀬投手に聞くと「いつも、見るたびに練習しています。それを知っているから信頼して投げられる」とのこと。いいバッテリーですね。

大ピンチで登板した高瀬翔悟投手。1球ごとにマウンドから気合いの雄叫びが聞こえました。受けるのは田中怜捕手です。
大ピンチで登板した高瀬翔悟投手。1球ごとにマウンドから気合いの雄叫びが聞こえました。受けるのは田中怜捕手です。

打ててよかった…先制2ラン

 貴重な先制2ランを放った古和田選手。この予選では4番を外れています。「調子は、あんまりよくなかったですね。オープン戦の最初の方はよかったんですけど、終盤ぐらいからもうヒットも出ていなくて…。きょう何とか打ててよかったです」

 球種は?「真っすぐです。内よりの真っすぐ。手応えはありました。ただ、外野を超えるかな~と思って、それでベースを回る時ぐらいに入ったのがわかったので」

 これで次はもう代表決定戦。相手は、この日の第1試合でニチダイを7回コールド(9対0)で下したパナソニックに決まりました。

先制2ランを放った古和田選手。でもそのあとチャンスで打てなかったことが悔しいようで。本大会に期待しています!
先制2ランを放った古和田選手。でもそのあとチャンスで打てなかったことが悔しいようで。本大会に期待しています!

【決定戦①】同級生の投げ合い

 翌9日が雨で延びたこともあり、少し日程が空いた代表決定戦。都市対抗予選と違って、カナフレックスはこれが3試合目、パナソニックは2試合目です。

 先発はカナフレックスが大西投手、パナソニックが榎本亮投手。試合後に判明したのですが実はこの2人、同級生でした!小学校も中学校も同じだったそうですよ。ということは、元阪神のパナソニック・阪口哲也コーチも同級生ですね。

 その同級生同士は、仲良く1回に1点ずつ失いますが、そのあとは両チームとも追加点なく、1対1のまま7回まで進みました。

 8回表、パナソニックはルーキーの6番・久保田拓真捕手がセンターバックスクリーンへ勝ち越しのソロホームラン!さらに9回は瀬古が2点三塁打とタイムリーで3失点。6対1で試合終了です。

 パナソニックは予選2連勝で、27大会連続42回目の日本選手権出場決定。試合を見守った鳥谷コーチも外野での記念撮影に加わり、とても嬉しそうな笑顔でした。阪口コーチもおめでとうございます!

カナフレックスに勝って、ひと足先に本大会出場を決めたパナソニックの記念撮影。鳥谷コーチも笑顔で写っていますね。※パナソニック提供。
カナフレックスに勝って、ひと足先に本大会出場を決めたパナソニックの記念撮影。鳥谷コーチも笑顔で写っていますね。※パナソニック提供。

三塁ベースコーチを務める元阪神・阪口哲也コーチ。
三塁ベースコーチを務める元阪神・阪口哲也コーチ。

◇代表①決定戦 (9/14)

パナソニック-カナフレックス

   パナ 100 000 023 = 6

   カナ 100 000 000 = 1

 ▼バッテリー

  【パナ】榎本 / 久保田

  【カナ】大西-瀬古 / 田中怜

 ▼本塁打 パナ:久保田(大西)

 ▼三塁打 パナ:三宅

 ▼二塁打 パナ:小峰

1回に1点を先取されますが、直後に4番・田中怜央那選手のタイムリーで追いつきました!
1回に1点を先取されますが、直後に4番・田中怜央那選手のタイムリーで追いつきました!

また久保田選手にやられた!

 では試合後の福間監督の談話です。

 「5、6、7回とほとんどチャンスがなかったからね。やっぱりちょっとしんどかった。1対1やけど、しんどいね。大西がよく踏ん張ってくれて、8回に代える予定だったんだけど、二塁へ進めたら迫に代えようと思っていた、その前に打たれてしまった」

 その打たれた相手、久保田選手ですが「実は去年も、(彼が)関西大の時にオープン戦をやって、9回に3ランを打たれて6対6の同点にされたんですよ。あの久保田らしいね。また打たれた。しかも同じセンターバックスクリーンへ。何か嫌な雰囲気がしたけどね」と苦笑いです。

 また、ことし1月に亡くなった高橋二三男コーチのことに触れ「高橋コーチのユニホームと遺影をベンチに入れるのは、この日本選手権が最後だと思います。もう1試合、見届けてほしい」と静かに話す福間監督。

 次の試合で勝って出場となれば本大会も?「もちろん一緒にやります。でも来年からはもうないので。もう1試合、応援してほしいという気持ちで臨みます!」

先発の大西投手。1回に失点するも、すぐ追いついてもらって以降は7回まで1安打で追加点を与えず。
先発の大西投手。1回に失点するも、すぐ追いついてもらって以降は7回まで1安打で追加点を与えず。

パナソニックの壁を破りたかった…

 続いて、福間監督が「大西を責められない。よく踏ん張って、ここまで引っ張ってくれて」と感謝する大西投手のコメントです。

 「立ち上がりで球数を結構使っていたので、正直6回くらいできついなあというのはあったんですけど、6回と7回をうまいこと抑えられた。6回、ピンチで4番を抑えられたので、もう一回、自分の中でリズムを取ってきたような感じですかね」

 8回に打たれた2ランは「フォークです。ちょっと抜けたような。1球前にいい感じでファウルになったので、もう1球と。キャッチャーも、もう1球いこうと言って投げたんですが、ちょっと高めに浮いたのが打たれた」とのこと。

 そして、話を聞いていた球場ロビーに現れたパナソニックの榎本投手を見つけ「同級生ですよ、榎本。小、中とも一緒です」と教えてくれます。「初めて投げ合いました。お互い、チーム以上に負けられないという(笑)。意識しないようにしていたんですけど、スタメン見て“榎本か~”って思って」

 結果には「悔しいです。パナソニックには、いいとこで全部やられている感じなので。代表決定戦とか、もう一歩のところで止められているので。この壁をどうにか破りたいと思って投げたんですけど」と大西投手。もし本大会で当たったら、ぜひリベンジを。

7回、三者凡退で締め笑顔でも戻るバッテリー。左が大西投手、右が田中怜捕手です。
7回、三者凡退で締め笑顔でも戻るバッテリー。左が大西投手、右が田中怜捕手です。

榎本投手も「負けたくない気持ち」

 また榎本投手も「小学校、中学校の同級生で、仲のいいグループも同じでしたけど、野球は別々にやっていて、僕はピッチャーじゃなかったんですよ。対戦したこともなかったですねえ。こうやって一緒に先発をしたのは初めてです!」と言います。

 そうなんですね。「それもあって、勝ててよかったです。負けたくないって気持ちはありました。お互い、いいピッチングをしていたので、それで勝てたのが大きいです」

 ことしパナソニックは都市対抗出場を逃しましたが、榎本投手はNTT西日本の補強選手として出場。1回戦(JR東日本東北)で7回途中から登板したものの、本人いわく「僕、爆発してしまったので…」というように、ちょっと打たれたんですよね。「だから日本選手権でリベンジを」と意気込んでいます。

大西投手と小学校、中学校時代に同級生だったパナソニック・榎本亮投手。5安打1失点の完投勝利でした。
大西投手と小学校、中学校時代に同級生だったパナソニック・榎本亮投手。5安打1失点の完投勝利でした。

【決定戦③】本大会出場決定!

 パナソニックとの代表決定戦に敗れたカナフレックス。今度は敗者復活の、近畿地区3つ目の代表決定戦へ回りました。相手は1回戦で顔を合わせた神戸ビルダーズです。

 カナフレックスは2回、内野安打や相手エラーから8番・澤田裕基選手と9番・新宅選手が連続タイムリーで先制!その裏、迫投手も1点返されます。

 しかし3回、内野安打と相手エラー、連続四球で満塁となり、6番・江頭駿選手の二ゴロで1点追加。5回は相手エラーをきっかけに5番・古和田仁選手がタイムリー二塁打!7回は2死から四球と連打があり、そこでエラーにより5点目が入りました。

 迫投手は6回に1死から連続二塁打で1点を失ったものの、他は走者を出しながら要所を締め完投。カナフレックスが2大会連続4回目の日本選手権出場を決めています。

◇代表③決定戦 (9/16)

カナフレックス-神戸ビルダーズ

   カナ 021 010 100 = 5

   神戸 010 001 000 = 2

 ▼バッテリー

  【カナ】迫 / 田中怜

  【神戸】内海-千代-山田-鶴井 / 茨木

 ▼二塁打 カナ:古和田 神戸:山本、吉田

試合後の記念撮影。真面目な顔のあと、ガッツポーズでというカメラマンさんの要求に応えて。でもベンチみたいにはじけていませんねえ。
試合後の記念撮影。真面目な顔のあと、ガッツポーズでというカメラマンさんの要求に応えて。でもベンチみたいにはじけていませんねえ。

攻守で“的中”した采配

 試合後、外野での記念撮影を終えた福間監督は、まず「きのう江頭と澤田には『(相手ピッチャーに)左が来ても、お前たちを使う。そのかわり2打席やぞ。それにすべて賭けなさい』とプレッシャーを与えた。それが見事に的中した」と笑顔を見せます。

 これは、亡くなった高橋コーチに関する話でした。都市対抗予選の際、ベンチに置いた高橋コーチのユニホームを片付ける江頭選手が、遺影に向かって「ありがとうございました!」と声に出して伝えていたこと。

 そして澤田選手は、福間監督いわく「高橋さんが亡くなった時、あいつの夢枕に立ったらしい」と。それで福間監督がスタメンで使い、それに2人がしっかり応えたわけです。高橋コーチも喜んでくださっているでしょう。

 福間監督の話に戻ります。迫投手について「完投します!信じてください。カナフレックスを自分の力で日本選手権に連れて行きます!と強い言葉をもらったんでね。途中ちょっと迷って『代えるぞ』と言ったら『いや、ダメです!』って。それが2点に抑えた要因じゃないかな」

 「この前、三菱重工Westとのオープン戦で6回無失点といいピッチングをしたんですよ。その時に比べるとちょっと物足りなかったけど、代表決定戦という大きな目標があって緊張する中、非常によく頑張った!僕が来てから今までで初めてよ、完投は」

ホレボレした三遊間の守り

 「それと守備!」と自ら続けた福間監督。「この予選は本当にいいところで、いいプレーが出てて、この守備にもかなり助けられた。相対的に見れば“守って勝った”という試合が多い。きょうもノーエラーで、相手(5失策)との差が5対2という結果になったと思っています」

 「やっぱり藤井助監督が守備練習をみっちりしたというのがね。古和田にしろ、田中慧樹にしろ、きょうはこの三遊間の守備にホレボレしたねえ!涙もんやね!抜けたらどうなるかわからない場面ばっかりだった。そういう粘りが出てきたのはありがたい」

 全国大会への思いを聞かれ「昨年はコールド負けしているんで。今度は『ああ、カナフレックスの野球部は成長したな』という姿を全国に見せたいですね」と福間監督。

 涙モノと評された三遊間の守備について、サード・古和田選手は「都市対抗予選でエラーを3つやって…」と振り返ります。確かに、サードの古和田選手が2つ、ショートの田中慧選手が1つ記録されていましたね。

 もともと守備力に定評のある古和田選手だけに、悔しかったでしょう。「そのあと守備を重点的にやりました。捕れてよかった…」と、今回はまたノーエラーで心底ホッとしたような表情です。

故・高橋コーチの遺影を持つ澤田選手(中)とユニホームを広げる江頭選手(右)。本大会も一緒に行けますね!また福間監督(左)は手にしたウイニングボールを高橋コーチの実家へ送ると話していました。
故・高橋コーチの遺影を持つ澤田選手(中)とユニホームを広げる江頭選手(右)。本大会も一緒に行けますね!また福間監督(左)は手にしたウイニングボールを高橋コーチの実家へ送ると話していました。

予選突破にホッとした主将

 ついで主将・森田選手です。2年連続出場が決まって、今の気持ちは?「とにかくもう都市対抗予選で負けた時から、次は日本選手権に絶対出よう!という思いでみんなやってきたので、予選突破できてホッとしています」

 監督が今回は守備で勝ってきたと。「去年までは、負けるパターンって守備から崩れて、どうしようもないことになっていたんですけど。きょうも勝負どころの絶対に守るべきところで守れていたし、サードの古和田もいいプレーが出ていましたし」

 「本当にみんなが、それぞれのポジションでいい動きをしてくれているので、それが攻撃にもいいリズムにつながって、ピッチャーも投げやすいかなと。この試合に限らず、守れてきたと思います」

 迫投手を後ろから見ていてどうですか?「いや~もう本当に気迫がセンターまで伝わってきました。彼自身も去年けっこう悔しい思いをしていた上で、ことし結果を出してくれた。強くなったな、というかチームメイトとして頼もしいです」

 では本大会に向けての抱負を。「もちろん優勝したいですけど。このチームが創部してから全国大会で勝ったことがないので、まずは1勝。とにかく僕らは1戦必勝で戦っているので、その初戦に勝ってチームとしての歴史を刻みたいと思っています」

6月で現役を退いた福田優人捕手(左)は最後の決定戦だけ来られなかったとか。他の3試合はスタンドで応援しています。新宅選手(中)と田中慧選手も一緒に。
6月で現役を退いた福田優人捕手(左)は最後の決定戦だけ来られなかったとか。他の3試合はスタンドで応援しています。新宅選手(中)と田中慧選手も一緒に。

このチームのエースになりたい

 次は、完投で本大会出場を決めた迫投手。「前日から緊張していて…。この試合で負けたら今季は終わりですし、勝ったらまたみんなと続けられる。もっとみんなとやりたいなと思っていました。きょう先発を任せていただいて、まず勝てたことが嬉しいです」

 先発を言われたのは2日前の試合後。「もともと先発したいなとは思っていて、このチームのエースになりたいって今季はずっと言っていたので、チームを勝たせて(全国へ)連れていくというところで、僕の目標とするエースに一歩近づけるなと思った」という迫投手。

 公式戦の完投は「人生初」だそうです。「球数を投げることは得意というか、(練習で)バッティングピッチャーを2、3時間できるタイプなので、それが生きたかなと」

 3時間も?「はい。多分5箱ぐらい。そんな思いきり投げるっていう感じじゃないですけど。僕はブルペンやシートはそんなに入らなくて。バッティングピッチャーの時に、体のコントロールの仕方などを球数を増やしていって覚えていくんです」

 それで疲労がたまって次の日に投げられないことはなく「どんどんバッティングピッチャー、バッティングピッチャーってやっていました」と笑顔。頼もしいスタミナです。

本大会初戦の先発志願!

 ちなみに去年の本大会も少し投げて悔しい思いをしましたね?「あの時期ぐらいから、ダダダーッと成績が落ちていってしまった。気持ちが弱かったというか…。すごく悔しい1年になってしまった」

 そして「あれからの下半期は投げれば7点、8点取られるみたいな、本当につらい時期だったんですけど、秋川さんや東郷さんなど先輩から気持ちを強くさせてもらえたのは、去年があったからだなと思います」

 じゃあ当然、本大会の1回戦のマウンドは取りにいく?「もちろん、はい!いきたいなと」。大西さんではなく?「お、お、大西さんではなく、僕にいかせてくれと!そういう思いはあります!」。最後はちょっと無理に言わせた感じかもしれません(笑)。

人生初の完投で全国切符を手にした迫投手。写真は8日の日本製鉄広畑戦で先発した時の物です。
人生初の完投で全国切符を手にした迫投手。写真は8日の日本製鉄広畑戦で先発した時の物です。

「取れるアウトをしっかり取れた」

 最後は藤井助監督に締めてもらいましょう。

 守りも素晴らしい4試合でしたね?「ことしはずっと守備がいいので。今回もベーブルース杯もノーエラーだったし。派手さはないですけど、取れるアウトをしっかり取れている。目に見えないミスをなくそうと言っていて、それが今いい感じに来ていますね」

 パナソニック戦で、捕れずに内野安打となったものがあったけど、あれもミスではない?「そうですね。しいて言えば全部アウトにしてくれるのがいいんですけど、そこまで急に一気に上がるっていうのは難しいですね」

 去年に比べても、本当に進歩したのでは?「集中力なんですかね」。ピッチャーが頑張っていたから、点を取れれば勝てるという計算が、この予選で証明できたと思います。「そうですねえ。日替わり打線ですからね(笑)」

 最後が神戸ビルダーズになったことを「もともとミキハウスが勝ち上がってきても、(ミキハウスに)右ピッチャーしかいなかったんで、どっちが来てもいけるように。それでいこう!となって、そのまま行ったんです。そしたら神戸ビルダーズが来て、はまったなと思いました」と振り返っています。

 ミキハウスが敗退したことには「怪しいな~と思っていたら本当に負けました。ほんと怖いですね」と藤井助監督。何が起こるかわからないトーナメントだけに「きょうも、ほんと怖かったですよ。みんなが最初にちゃんと(気を)締めて入ったので、よかったですけど」と。それはどういうことですか?

 「相手が決まって選手たちは『ビルダーズが来た!』とか言うじゃないですか。でも、きょうは、そんな浮いている選手がいなかった。ちゃんと自分たちの野球をしようって。それでいい感じで入れたんですね。みんな1人1人がしっかりしているので」。なるほど、それもまた成長かもしれません。

目指すは全国での勝ち!

 本大会の目標はもちろん「勝つことでしょう。カナフレックスはまだ全国で勝っていないんで」と藤井助監督。そして「ずるずる、どんどん悪くなっていくみたいなことはないですからね。ちゃんと止めるやつらがいる。コールド負けみたいな、そういう試合が今季はない」とキッパリ。

 「それは守備もありますよね。ことし一番成長したのはショートの田中慧樹じゃないですか。去年までサードですから。冬に比べるとショートの動きになってきて、二遊間とセンターラインが安定しているので、その成長は大きいです」。藤井助監督の尽力があってこそ、とみんなが話していますよ。

 「守備が安定して、あとは打てば。みんなが打てば勝てるんですけどね」と藤井助監督は笑っていました。ことしは1回戦から京セラドーム大阪で試合ができます!「そうですね。久々に。楽しみですね」

日本選手権出場を決めて、ミーティングも終えて、帰ろうとする福間監督の周りに集まる選手たち。この手の動きは…もしかして?
日本選手権出場を決めて、ミーティングも終えて、帰ろうとする福間監督の周りに集まる選手たち。この手の動きは…もしかして?

  <掲載写真はチーム提供>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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