「年越し台風なし」は21年連続 令和3年(2021年)の台風は発生数が少なく接近・上陸は平年並み
大晦日の熱帯域の雲
令和3年(2021年)もまもなく終わりますが、日本の南の熱帯域には台風の卵となる積乱雲のかたまりがなく、20年連続で年越しの台風はなさそうです。
【追記(令和4年(2021年)1月1日0時20分)】
12月31日に台風は存在しておらず、21年連続で年越しの台風はありませんでした。
台風の統計がとられている昭和26年(1951年)以降、越年した台風は5個あり、このうち4個は昭和、1個が平成です(図1)。
そして、平成12年(2000年)の台風23号以降、年越しの台風はありません(図2)。
21世紀最初の平成13年(2001年)の正月、フィリピンの東海上に台風23号があって北東に進みました。
この台風は、21世紀最初の台風である台風1号ではなく、20世紀最後の台風23号で、越年した台風です。
つまり、21世紀後半には10年に1個くらいあった越年台風は、21世紀になってから21年もないのです。
ちなみに、越年台風5個のうち、3個はフィリピン南部に上陸しています。
新型コロナウイルスの影響がなかった時代であれば、フィリピンへは越年ツアーで多くの観光客がおとずれますが、台風はありがたくないというか、迷惑をかける越年客です。
台風番号
台風には昭和28年以降、正式に台風番号がつけられています。
そして、昭和26年(1951年)と昭和27年(1952年)は遡って正式に台風番号がつけられているのは、台風の定義が、現在と同じ「北西太平洋の熱帯低気圧のうち域内の最大風速が17.2メートル以上」となったのが、昭和26年(1951年)であるからです。
これが、台風に関する各種統計が昭和26年(1951年)から作られている理由の一つになっています。
台風番号は、年毎に台風が発生するたびに1号、2号、3号…と発生順につけられた番号です。一旦、台風に番号がつくと、その番号はその台風がどのような形態になっても同じ番号が使われます。
台風が“熱帯低気圧”に衰弱し、その後再発達して台風となった場合は、最初に付けられた台風番号が再び使われます。
台風番号が付けられたあとに得られた観測データから、台風ではなかったことが分かった時は、その台風は取り消しとなって番号が飛びます。
また、台風番号が付けられたあとに、別の台風の存在が分かった場合には、小数点の番号が付けられます。
ただ、台風の統計が作られている昭和26年(1951年)以降では、番号が飛んだり、番号に小数点がついたりするものはありません。
しかし、今でいう熱帯低気圧を台風に含めているなど、台風の定義が現在と違っていた昭和25年(1950年)にはその事例があります。
【昭和25年(1950年)の台風】
台風1号、2号、3号、4号、5号、6号、7号、8号、9号、10号、
11号、12号、13号、14号、15号、16号、17号、18号、19号、20号、
21号、22号、23号、24号、25号、26号、27号、28号、29号、30号、
31号、32号、33号、 35号、36号、37号、38号、39号、40号、
41号、41.1号、41.2号、42号、43号
つまり、台風34号が取り消され、台風42号の発生を発表したあとに2つの台風の発生が分かったので、台風41.1号、台風41.2号と、小数点をつけた台風を加えています。
台風の観測データが素早く集まらなかった時代の話です。
令和3年(2021年)の台風
平成3年(1991年)から令和2年(2020年)の30年間の平均値を平年値といいますが、令和3年(2021年)の台風発生数は平年値の25.1個より少ない22個でした(表)。
台風の発生数が最も多くなる 8~9 月において、例年台風が多く発生する海域での対流活動が不活発で、この期間の台風の発生数の少なさが原因です。
一方、台風の接近は、台風の中心が気象官署等から300キロ以内に入った場合をさしますが、12個の接近と平年並みでした。
また、台風の中心(気圧が一番低い場所)が九州、四国、本州および北海道の4島の陸地に達した時を台風の上陸といいますが、台風8号、第9号、第14号の3個が上陸し、平年並みの上陸数でした。
このうち台風8号は、開催中の東京オリンピックのサーフィン競技などに大きな影響をあたえ、宮城県に初めて上陸した台風となりました(タイトル画像参照)。
また、台風14号は、東シナ海を北上して長崎県を迂回し、福岡県に初めて上陸した台風となりました。
台風予報の精度
気象庁が発表した、令和3年(2021年)の台風21号までの台風進路予報誤差(速報値)は、1日先で91キロ、3日先で234キロ、5日先で268キロメートルとなっています(図3)。
前年に比べて誤差が大きくなりましたが、これは、海上を一定方向に長く移動する比較的予報しやすい台風が少なかったためと考えられています。
台風進路予報の精度は、その年の特徴に起因する様々な変動があり、進路予報が難しい台風が多い年は、予報誤差が大きくなりますが、計算機の飛躍的な性能アップと、気象衛星からの詳細な観測データ取り込みを背景に年々小さくなっていました。
台風の予報円表示が始まった昭和57年(1982年)は、24時間先までしか発表していなかったのですが、予報誤差が200キロ以上ありました。それが、現在では3分の1の誤差です。
3日先までの予報が始まった平成9年(1997年)の3日先予報の誤差は約400キロでしたが、約200キロと、昭和57年(1982年)の24時間先までの予報と同程度の誤差のところにきています。
台風強度予報(最大風速)の誤差については、1日先で毎秒4.7メートル、3日先で毎秒6.5メートル、5日先で毎秒7.9メートルです(図4)。
台風進路予報のように、目に見えての精度向上は見られませんが、近い将来、5日先の強度予報が、現在の48時間先の強度予報の精度に匹敵する時代がくるのではないかと思っています。
タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:饒村曜(平成5年(1993年))、続・台風物語、日本気象協会。
図2、図3、図4の出典:気象庁ホームページ。
表の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。