躍動するバルサの若い選手たちと守備を担保するシャビのアンカー起用法。
欧州の舞台で、一歩、前進した。
バルセロナは今季のチャンピオンズリーグで、決勝トーナメント1回戦でナポリと対戦した。ファーストレグを引き分けた後、セカンドレグで勝利して、ベスト8進出を決めている。
■欧州の舞台で苦戦
バルセロナが最後にチャンピオンズリーグで優勝したのは、2014−15シーズンだ。以降、欧州の舞台では苦しんできた。
バルセロナは2021年夏にリオネル・メッシが退団。昨年夏には、セルヒオ・ブスケッツがチームから離れている。
ただ、彼らが抜けた穴を大物選手獲得で埋めることは、かなわなかった。クラブの財政事情が厳しいためだ。
最前、ラ・リーガが発表したサラリーキャップの額で、バルセロナのそれは2億400万ユーロだった。レアル・マドリー(7億2700万ユーロ/約1163億円)との差は歴然で、アトレティコ・マドリー(3億3400万ユーロ/約534億円)より低い数字だった。
そのような状況で、今夏、到着したのはオリオル・ロメウ(移籍金350万ユーロ/約5億円)、イルカイ・ギュンドアン(フリートランスファー)、イニゴ・マルティネス(フリートランスファー)、ジョアン・カンセロ(レンタル)、ジョアン・フェリックス(レンタル)といった選手たちだ。移籍金が発生したのはロメウのみである。
■シャビの望んだ補強
ジョシュア・キミッヒ(バイエルン・ミュンヘン)、マルティン・スビメンディ(レアル・ソシエダ)、ベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)…。シャビ・エルナンデス監督が望んでいた選手の獲得は実現しなかった。
シャビ監督はシーズン序盤、ロメウをアンカーのポジションで起用していた。ブスケッツの代役に、ロメウを。シンプルな方策で、開幕から10試合、ロメウは全試合に出場した。そのうち、8試合でスタメンだった。
だが失点の多い状況が指揮官を悩ませた。バルセロナは昨季、シーズンを通じて26試合でクリーンシートを達成。リーガエスパニョーラでは、38試合20失点で優勝を決めた。それが今季はすでに28試合で34失点を喫している。
シャビ監督は、シーズン後半戦に向け、アンドレアス・クリステンセンを重宝するようになった。CBが本職の選手をアンカーに置くことで、守備に安定感をもたらそうと考えたのだ。
クリステンセンのアンカー起用で、もうひとつ、僥倖があった。パウ・クバルシの台頭だ。
クバルシは今年1月18日のコパ・デル・レイのウニオスタ戦でトップデビューを飾った。その3日後のベティス戦でリーガデビューを果たすと、急激なスピードで成長していった。
先のナポリ戦でも、ビクトール・オシムヘンを見事に止めてみせた。カルレス・プジョールに憧れて育ったという17歳のセンターバックが、バルセロナに新しい風を吹き込んでいる。
■メッシの後継者とヤマル
一方、メッシの後継者として、期待されるのがラミン・ヤマルだ。
ヤマルは昨年4月29日のベティス戦でトップデビューを飾った。15歳9ヶ月16日でのデビューは、アンス・ファティ、ビセンテ・マルティネスを抜いて、クラブ史上最年少記録になった。
ヤマルは今季、公式戦37試合に出場して6得点7アシストをマークしている。フェラン・トーレス、ラフィーニャ、ジョアン・フェリックスを差し置いて、ウィングでレギュラーポジションを確保した。
とはいえ、ヤマルを簡単にメッシの後継者と考えることはできない。
「物事がうまく進まなくなったときに、周囲の準備ができていないといけない。いまの世代は、インスタグラムだったり、ソーシャルメディアの存在があるので、より難しいと思う」と語るのはロベルト・レヴァンドフスキだ。
「若い選手たちは、そういったものから逃れられない。四角い部屋に閉じ籠もっていられないんだ。これはフットボール界の挑戦だ。彼らが10年や12年、それ以上の期間、メンタル的に耐えられるかどうか…。そのプレッシャーに耐え切れる選手はおそらく多くない」
若い選手を持て囃してばかりいてはいけない。そのように警鐘を鳴らすレヴァンドフスキの言葉にもまた、重みがある。
メッシ、ブスケッツ、偉大な選手がチームを去った。質を質で担保する、というのは容易ではない。
その結果が、ひとまず、出た。チャンピオンズリーグのベスト8だ。ただ、ここから先に向かうため、バルセロナには再び変化が必要になるかも知れない。