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結果に脱帽。セネガルを迷宮入りさせたスローテンポとローインテンシティ

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ロイター/アフロ)

2度同点に追いつけた要因と出場選手の採点&寸評

 グループリーグ2試合を終えて、勝ち点4ポイント。日本がセネガルと並んでグループHの首位に立つ状況になろうとは、正直、大会前には予想できなかった。まずは、この結果には脱帽だ。

 幸運にも恵まれて初戦のコロンビア戦で勝ち点3を手にしたことにより、明らかにチームはポジティブな空気を醸し出すように変化したことは間違いない。それが、このセネガル戦でも表れていた。

 試合開始早々のミスで先制点を献上しながら、ワンチャンスをものにして前半のうちに同点に追いついた。また、後半71分という時間帯に再びリードを許しながら、今度はその直後に相手のミスを逃さずに試合を振り出しに戻すことに成功した。

 2度リードを許し、しかし2度同点に追いついたという事実は大きい。これまでの日本であれば、失点後に自信を失って追加点を許してしまうケースが多かったが、少なくとも現在のチームにはそのような悪循環は起こらなかった。

 技術的に選手が急激な成長を遂げたというわけでもなく、また特段チームとして戦術的なブラッシュアップができたというわけでもない。ミスも相変わらず多く、危ない場面も度々起こっており、決してハイレベルなサッカーを見せているわけでもない。

 その一方で、ノーマルな4-2-3-1を使って、極めてオーソドックスにサッカーをしている中で、それなりの結果を出すことができている。サッカーがメンタルのスポーツであるという側面を、現在の日本が証明していると言えるだろう。

 逆に、2度追いつかれたセネガルは、最後までリズムをつかみきれずに終わった。おそらくその原因のひとつは、思わぬかたちで試合開始早々に先制できたため、チーム全体に“油断”が生まれてしまったことにあるだろう。

 また、試合自体がセネガルの実力を発揮し難い“テンポ”で進んだことも、不調の引き金にもなっていた。ポーランド戦のように、スピーディかつインテンシティの高い試合になればなるほどセネガルは実力を発揮し、集中力が研ぎ澄まされ、驚異的なパフォーマンスを見せる。

 しかし、この試合は他のW杯の試合と比べてテンポがスローで、インテンシティも低かった。

 しかも、負傷などで度々試合が途切れたうえ、日本が慎重にボールを保持し、時にはミスパスをしてアウトオブプレーの機会が増えたため、その度にセネガルの集中力はそがれていった。

 もちろん、日本がそれを意図してやったとは思わないが、それらが日本に幸いしたことは間違いないだろう。

 さて、グループリーグ突破まで、あと勝ち点1ポイント。まだグループリーグ突破を果たしたわけではない。次は敗退が決定したポーランドが相手となるだけに、日本はチャレンジャー精神を維持することが難しい状況で試合を迎えることになる。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】川島永嗣(GK)=4.5点

致命的なミスにより、セネガルの先制点を献上。初戦のコロンビア戦に続いて不安定なプレーが目立ち、次のポーランド戦でのスタメンが危うくなった。

【右SB】酒井宏樹=6.5点

最要注意人物のマネとマッチアップ。リーグアンでアフリカ系選手とのマッチアップに慣れていることもあり、しっかりと対応。相手のエースを沈黙させることに成功した。

【右CB】吉田麻也=6.0点

プレミアリーグでの経験を生かし、フィジカルバトルにしっかり対応。フィードの部分で課題は残されるも、ラインコントロールも含めて最終ラインを統率した。

【左CB】昌子源=6.0点

序盤こそアフリカ系選手に対する不慣れな対応が散見されたが、時間の経過とともに落ち着きを取り戻した。セフティファーストが徹底され、いくつかの効果的な縦パスも入れた。

【左SB】長友佑都=6.0点

スピードスターのサールに振り回されたシーンもあったが、致命的なミスもなく及第点のプレー。攻撃面では乾の先制点につながる思い切ったオーバーラップが光った。

【右ボランチ】長谷部誠=5.5点

自陣エリアでミスを犯すなど、不安定なプレーがあった。ビルドアップ時にセンターバック2人の間に下がってボールをさばくなど、初戦との違いは見られた。

【左ボランチ】柴崎岳=7.0点

低い位置からのロングパスで先制点の起点となった。その他、相手が空けたスペースに効果的に進入し、チャンスを構築。2失点目の守備でもっと粘り強さを見せていれば7.5点。

【右ウイング】原口元気(75分途中交代)=5.5点

コロンビア戦と同様に守備面での貢献は評価できるが、ポジション的には攻撃面でもっと影響力を発揮したいところ。やはり右よりも左の方が適しているように見受けられる。

【トップ下】香川真司(72分途中交代)=6.0点

またしても時間の経過とともに存在感を失ってしまった。相手の嫌なスペースにポジションをとれているが、もっとフィニッシュに関わる仕事が求められる。

【左ウイング】乾貴士(87分途中出場)=7.0点

テクニカルなシュートで先制ゴールを決めた他、後半78分の本田のゴールをピンポイントのクロスでアシストした。長友との縦関係も良好で、チームのキーマンとなった。

【1トップ】大迫勇也=6.0点

後半61分の柴崎のピンポイントクロスを空振りしてしまったシーンは、ポジションがポジションだけにマイナス0.5点。それ以外はポストプレーも含めて屈強な相手CBを困惑させるほどのパフォーマンスを見せた。

【MF】本田圭佑(72分途中出場)=6.5点

初戦はアシストを記録し、この試合では同点ゴールを決めた。それ以外に目立ったプレーはなかったが、大事な場面で持ち前の勝負強さを発揮した。

【FW】岡崎慎司(75分途中出場)=6.0点

同点ゴールの場面では、相手GKとDFの間に入り込んでいたことにより相手のミスを誘発。らしいプレーでチームに貢献した。

【MF】宇佐美貴史(80分途中出場)=採点なし

プレー時間が短く採点不能。ワンチャンスあったが、見せ場を作れず。

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サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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