【獣医師が解説】奈良公園の鹿「想像の100倍マダニがくっついている」と話題に。その真偽と接し方
観光客に親しまれる奈良公園の鹿に、感染症などを引き起こす可能性がある「マダニ」がついているという投稿が話題になっていますと、ねとらぼが伝えています。筆者が、奈良公園に行ったときには鹿の体にノミも走り回っていました。
奈良公園の鹿はどのような存在なのか?
奈良公園に生息するシカは「神の使い」とされて国の天然記念物に指定されている野生動物です。決して飼育されている動物ではありません。野生動物は「無主物」であり、所有者がいないのです。
所有者がいないということがキーワードなのです。つまり愛護動物※ではないので、鹿は、動物愛護管理法の適用対象にはならないのです。
だからといって、個人が捕まえたり、傷つけたりすることは違法行為です。奈良公園に行くと「鹿に乗らない」などのポスターがありました。
※愛護動物とは、牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる、さらに、人が占有している動物で、哺乳類、鳥類、爬虫類に属するものを指しています。
奈良公園の鹿には、ノミもマダニもいる
鹿はかわいい動物です。
奈良公園にいる鹿はペットではないのです。野生動物なのでノミもマダニもいます。そのことを理解して奈良公園の鹿を見てほしいのです。
奈良公園の鹿は、自然の中に住んでいます。たとえば、犬は散歩でウンチをしたら、飼い主が処理します。
奈良公園の鹿は2022年度で1182頭が生息していますが、その鹿のフンをどうして処置されているか知っていますか。
鹿のフンは、奈良公園の職員が処理しているわけではなく、片づけ役として、コガネムシ(フンコロガシとも呼ばれます)が活躍しています。
鹿のフンは、自然の中で以下のように循環しているのです。
鹿が芝生を食べフンをする→コガネムシがフンを食べて地中へ運ぶ→芝生の肥料となる→芝生生育→鹿が芝生を食べる
鹿は、奈良公園に生えている芝や木の実などの植物や観光客があげる鹿せんべいを食べています。
つまり奈良公園の鹿は、自然の一部なのです。
野生動物との距離感
奈良の鹿は人に慣れていますが、触れたり、近寄ったりすると、ノミやダニが人間に寄生するリスクはあります。そのことは、理解することは大切です。
もちろん、ダニは刺されるとダニ媒介感染症にかかるなどがあることを理解しましょう。ノミもおり、特に年齢の若い人がノミの被害を受けます。家族で奈良公園に遊びに行っていて、親はどうもなくても子どもだけが刺される可能性が高くなります。
鹿はかわいいので、近寄ってみたいとか思うかもしれませんが、特に夏場のこの時期、ノミもダニもいることを理解して、遠くから見てあげましょう。獣医師の目から見て、鹿の中で毛並みが悪く、後ろ脚で体を掻いている鹿にノミの多い確率が高いです。
奈良公園に犬を連れて行くときの注意
犬は鹿の天敵です。
鹿は、犬に驚いて走り出し、人身事故や交通事故の原因になる場合があります。
奈良公園内を散歩するときは、犬には必ずリードをつけ鹿に近づけないでください。それに加えて、ダニやノミなどの予防策を犬に施すことをお勧めします。また、飼い主の方も肌を露出した服装やサンダルの使用は控えましょう。自然と共存することは、なにかを考えて行動しましょう。