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ウクライナ副首相「一晩で8億円分のロシア軍の設備を破壊。できるだけ多くのドローンを提供し続けて」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

戦場では何台あっても足りないドローン

2023年8月にウクライナの副首相のミハイロ・フェドロフは自身のSNSで、クピャンスクでウクライナ軍のドローンが爆弾を投下してロシア軍の軍事施設を破壊している動画を公開。副首相は「ドローンによる攻撃で、一晩でロシア軍の軍事施設600万ドル(約8億円)分を破壊しました。ドローンは効率的にロシア軍の軍事設備を破壊しています。これからもできるだけ多くのドローンをウクライナ軍に提供し続けてください」とアピールしていた。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。ウクライナ軍では監視・偵察目的で導入した民生品ドローンに爆弾や手りゅう弾を搭載してロシア軍の上空から落下させてダメージを与えている。

デジタル推進も担当しているミハイロ・フェドロフ副首相は、ロシア軍がウクライナに侵攻した直後から、ドローンの開発と調達を積極的に進めてきた。ウクライナ国内での製造だけでなく、世界中の政府や団体などにもドローン提供をよびかけており、多くのドローンがウクライナ軍に提供されている。ロシア軍の侵攻直後からドローンによる攻撃のアピールをしてきたが、2023年8月に入ってからはこのようにドローンによるロシア軍の施設の破壊を積極的に伝えている。

小型民生品ドローンに爆弾を搭載して標的に突っ込んでいく、いわゆる神風ドローンによる攻撃や、小型民生品ドローンから爆弾を投下して標的を爆破するなどウクライナ軍では1機数万円程度の安価なドローンによってロシア軍の高額な軍事施設や戦車などを破壊してきた。ウクライナ軍が調達してきた安価な民生品ドローンに爆弾を搭載して突っ込んでいくだけだが、高価な歩兵戦闘車や対戦車ミサイルにでも突っ込んでいき爆発させたら、それらの軍事施設や兵器は使用できなくなる。いわゆる「非対称な戦い」で、コストパフォーマンスは高い。

だが、ウクライナ軍だけでなく、ロシア軍もイラン製軍事ドローン「シャハド」でウクライナ軍に突っ込んできたり、ウクライナ軍と同じように安価な民生品ドローンに爆弾を搭載してウクライナ軍に爆弾を投下したり、突っ込んで爆発させたりして攻撃を行っておりウクライナ軍とウクライナの民間インフラ、一般市民の生活に多大なダメージを与えている。

副首相の動画を見るとドローンによる爆弾投下で連戦連勝に見えてしまう。だが、ドローンは両軍にとって脅威であるため、検知されるとすぐに破壊されるか機能停止されてしまう。ウクライナ国内でドローン生産も行っているし、世界中からドローンの支援は行われているが、戦場ではドローンは何台あっても足りない。そのため副首相も「できるだけ多くのドローンをウクライナ軍に提供し続けてください」と訴えている。

▼副首相のSNSで、ドローンからの爆弾投下でロシア軍の軍事施設を大量に破壊していることと、これからも多くのドローン提供をアピール

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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