アウシュビッツ博物館のX、5月の1か月で3565人がフォロー解除「歴史を後世に伝えていきましょう」
「私たちのオンラインでの活動を支援してください」
アウシュビッツ絶滅収容所博物館の公式X(旧ツイッター)が、2024年5月に3565人がフォローを解除してしまったことを報告していた。フォロワー増加数、インプレッション、エンゲージメントは明らかにしていない。
アウシュビッツ絶滅収容所博物館は「アウシュビッツで起きた人類の悲劇を記憶しておくことはとても重要です。全てのフォロワーの方々が私たちのミッションを強化してくれます。皆さんは是非、このアウシュビッツ絶滅収容所で起きた悲劇の歴史の記憶のコミュニティに参加してください。私たちのオンラインでの活動を支援してください。私たちのポストした投稿をシェアして、他の方々にもフォローをすすめてください。一緒にアウシュビッツ絶滅収容所での悲惨な歴史を後世に伝えていきましょう」とコメントしていた。
記憶のデジタル化と後世への継承のためにXを活用
アウシュビッツ絶滅収容所博物館ではX(旧ツイッター)で毎日情報発信を行っている。アウシュビッツ絶滅収容所博物館のX(旧ツイッター)では、毎日、アウシュビッツ絶滅収容所で犠牲になった方々の誕生日や殺害された日に、彼らの写真とともに生まれた場所、いつ殺害されたかをポストしている。110万人以上が殺害されたアウシュビッツ絶滅収容所なので、毎日誰かしらの誕生日である。ナチスドイツではヨーロッパ中のユダヤ人を絶滅することを政策として掲げていたので、支配した地域でもユダヤ人をリスト化していた。そしてどの地域で何人のユダヤ人をどこの収容所に送るという"ノルマ達成"を官僚主義的に行っていたが、その際にもきちんとユダヤ人の情報をリスト化していた。そのようなナチスドイツによるユダヤ人の徹底的な管理に向けた"まめな記録"が現在ではデータベース化されており、アウシュビッツ絶滅収容所博物館ではその日が誰の誕生日かがわかる。
写真が残っていない犠牲者の場合は文字だけで犠牲者の情報をポストしている。ユダヤ人にとっては家族や友人らとの幸せだった時代の写真は貴重なものでアウシュビッツまで持ってきたが、ナチスドイツにとっては全く価値のないものだった。そのためすぐにナチスドイツによって焼却されてしまったので、平和な時代の写真が残っているのはとても貴重である。だがアウシュビッツでは強制労働に適していると判断された囚人らは3方向から写真撮影されていた。それらの写真がデジタル化されて保存されており、3枚の写真が犠牲者の誕生日に掲載されることが多い。ホロコースト犠牲者や生存者らの貴重な写真がデジタル化されて保管されているだけでなく、X(旧ツイッター)で毎日世界中に発信されている。多い日には1日に10人くらいの犠牲者がポストされることもある。
さらにアウシュビッツ絶滅収容所博物館では、大量にある犠牲者の写真の他にも文書、遺品などをデジタル化して保管しており、それら貴重な歴史的コンテンツを毎日X(旧ツイッター)で世界中に発信している。
悲劇の記憶の継承のために160万人のフォロワーに毎日犠牲者の誕生日をお知らせ
アウシュビッツ絶滅収容所博物館ではフォローの呼びかけを積極的に行っていたのでフォローはしたものの、アウシュビッツ絶滅収容所での犠牲者の写真、小さな子供の写真、生々しい死体焼却の写真や残虐な写真などが毎日多数ポストされているので、見ているのが辛くなったり気分が悪くなったりしてしまいフォローを外してしまう人も多い。確かに見ているだけで辛い気持ちになるのは、ホロコーストを研究している欧米やイスラエルの研究者でも多い。また欧米では授業でホロコースト教育を行っている学校も多く、学生らが授業期間中やグループでの発表前、レポート作成時期などにはフォローしているが、授業期間が終わると解除してしまうことも多い。友達同士の些末なやり取りや、美味しい食事、パーティーやランチなど幸せな投稿と一緒のタイムラインに毎日このようなポストが多数流れてくると気分が滅入ってしまいフォローを外してしまうのも理解できる。
アウシュビッツ絶滅収容所博物館では、2019年8月に「解放75年を迎える2020年1月までに、X(旧ツイッター)のフォロワーを75万人まで目指す」と掲げていた。当時は55万人程度のフォロワーだったが、2019年末には75万まで到達し、目標はクリアした。その後、アウシュビッツ絶滅収容所博物館では「フォロワーを2020年1月27日(国際ホロコースト記念日)までに100万人」と目標を上方修正し、この目標もクリアされ、2022年末までにフォロワー数150万の目標を掲げてクリアした。2024年5月末で約160万人のフォロワーがいる。
アウシュビッツ絶滅収容所博物館のX(旧ツイッター)ではホロコースト関連のニュースや犠牲者の情報、生存者の体験など決して明るいニュースや情報ではなく、目を覆いたくなるような写真や生々しい情報も多い。
2023年10月に武装集団ハマスがイスラエルを攻撃してからは、様々な反ユダヤ主義に関する情報や陰謀論がSNSで多く拡散されているが、アウシュビッツ絶滅収容所のX(旧ツイッター)ではホロコースト時代の様子やニュースだけでなく、現代社会のヘイトスピーチや民族憎悪、欧米では根強く残っている反ユダヤ主義に対しても警鐘を鳴らしている。
▼平和な時代に撮影されたユダヤ人の写真を掲載するアウシュビッツ絶滅収容所博物館のX(旧ツイッター)
▼3方向から撮影された労働に適しているとされたユダヤ人