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横綱・照ノ富士がモンゴルと立正大学柔道部との架け橋に「自分にできることは今後も全力でやりたい」

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
左から立正大学の寺尾英智学長、照ノ富士、バトスル氏(写真:筆者撮影)

モンゴル相撲の横綱が描くスポーツの発展

横綱がまたひとつ、日本と祖国との架け橋をつないだ。

モンゴル出身の横綱・照ノ富士が、去る10月2日、品川区にある立正大学を訪問。同大学の柔道場で使われていた畳を、モンゴルのトレーニングセンターに寄付する際、その間を取り持ったのが照ノ富士だったため、挨拶に訪れたのだ。

横綱と共に足を運んだのは、そのトレーニングセンターを運営するバトスル・ナムスライジャブ氏。バトスル氏は、なんとモンゴル相撲の現役の横綱である。高校卒業後、1年ほど柔道を学びに日本に留学をした経験があるといい、直接日本語で少し話すことができた。

現役の横綱ながら、モンゴルでさらなるスポーツの普及・発展を目指して「BASUトレーニングセンター」を設立。「モンゴルの若い子たちと、モンゴルのスポーツ発展のために貢献したい。また、柔道で強い子が生まれてくれれば」という思いがあると語る。

「モンゴル相撲や柔道の練習をする傍ら、トレーニングセンターを作ったのは、モンゴルの若者たちにがんばってもらいたいからです。そこに、日本から柔道の畳をいただいたのはとてもありがたいこと。実物を見ましたが、本当にきれいで質のいいものをいただきました」

同大学の柔道場は、昨年東京オリンピック仕様の新しい畳を新調したばかり。それまで使っていたミズノ製の畳もまだ使える状態だったため、大切に保管されていた。照ノ富士は、友人である柔道の吉田秀彦氏を通じて同大学の柔道部を紹介してもらい、その畳を寄付してもらうに至ったという。同大学も、社会貢献のためとあって喜んで寄付したそうだ。寺尾学長は次のように話す。

「いままでは、こういったスポーツでのご縁はありませんでした。ひょんなことから我々にお役に立てることがあったということ、またこうして横綱が足を運んでくださったことを、大変ありがたく思います」

寺尾学長から目録を受け取る照ノ富士(写真:筆者撮影)
寺尾学長から目録を受け取る照ノ富士(写真:筆者撮影)

柔道経験のある照ノ富士「モンゴルは柔道が盛んな国」

同席した照ノ富士も、来日前は柔道に打ち込んだ一人。寺尾学長らにモンゴルの柔道をアピールした。

「モンゴルは柔道が盛んな国で、柔道人口も多いんです。モンゴルでは毎年、ナーダムという大きな祭があって、モンゴル相撲の力士たちは、ナーダムの前に日本に来て、柔道の練習をしてから帰ります」

バトスル氏も、柔道で有名な天理大学でいつも練習するのだと話した。言葉も文化も違う日本とモンゴルだが、スポーツを通じた交流が盛んであることは大変喜ばしいことである。

照ノ富士は、「立正大学に柔道部はあるということなので、これから相撲部も作っていただいて(笑)」と笑いを交えながら、「これからも、自分にできることがあれば全力でやりたいと思っています」と、大相撲の横綱としての心得をしっかりと伝えた。

外から見た日本の魅力を肌で感じている横綱だからこそ、広げられる世界がある。送られた畳は現在船で輸送中とのことだが、近い将来、モンゴルの若いアスリートたちに、日本の心が畳と共に受け継がれる。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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