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テニスウェア市場に新規参入したアドミラルの狙いとは!?

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
沖縄でのテニスクリニックで、子供たちに手本を見せる加治(写真/神 仁司、以下同)

 2019年秋に、アドミラルが、テニスウェアに新規参入し、日本国内市場に新風を吹き込んだ。プロテニスプレーヤーでは、すでに2019年10月から、加治遥(346位、島津製作所所属、グラムスリー契約)が、アドミラルのテニスウェアの着用を始めている。

 株式会社セットゥ ユイットゥのアドミラル・ブランドマネジャーである野口純也氏は、テニスウェア新規参入のきっかけを次のように語る。

「これまでゴルフウェアを手がけてきましたが、2019年秋冬からテニスウェアにも参入させていただきました。トップアスリートグループさんというジュニア育成テニスアカデミーがあり、富士薬品さんと一緒にジュニア選手を育成していくプログラムがあるのですが、その中で、アドミラルとしてテニスウェアもやってみようかという話になりました」

テニスクリニックで、子供たちに挨拶をする、アドミラルの野口氏
テニスクリニックで、子供たちに挨拶をする、アドミラルの野口氏

 セットゥ ユイットゥは、豊田通商グループの豊通ファッションエクスプレスの子会社で、日本国内におけるアドミラルのアパレルライセンス管理を行っている。

「アドミラルは、すごくアットホームというか、選手とすごく距離が近いです。担当の方とお会いすることがすごく多いですし、全日本(テニス選手権、2019年)でも毎日誰かが日替わりで応援に来てくださいました。すごく心強いサポートをしてもらえているのは感じています。結果が一番の恩返しなので、形としていかに自分が表せられるかというか、もっと頑張らないとな、と思っています」

 アドミラルの印象をこう語る加治は、園田学園女子大学を卒業後にプロへ転向した選手で、現在25歳。プロとしてのスタートは世界的に見れば遅いが、テニスへ前向きに取り組み、グランドスラムなどの世界の舞台を目指す姿勢に、アドミラルを手がける人たちからの共感が得られた。

2019年秋よりアドミラルのテニスウェアを着用している加治遥。大卒プロだが、今後の活躍が期待される
2019年秋よりアドミラルのテニスウェアを着用している加治遥。大卒プロだが、今後の活躍が期待される

「日本のプロゴルファーは、すごく高い賞金を手にしていますが、日本のプロテニス選手の現状は本当に厳しい。そんなに大きな契約ではないですけども、加治さんがグランドスラムを目指すにあたって応援できるようなサポート契約をさせていただきました」(野口氏)

 2019年12月22日、沖縄・南城市玉城庭球場のテニスコートで開催された「アドミラル テニスクリニック 沖縄」では、このイベントの協賛に初めてアドミラルがつき、加治も初参加した。野口氏は、テニスクリニックに初協賛した意義を次のように語る。

「アドミラルは、テニスに参入してまだ若い。小中学生など、テニスを始めて間もない子供たちと共に成長できたらという思いがあります。まずは参入したばかりなので、(選手の)応援もそうなのですが、小さい子供たちに、こういうブランドがあって、日本のトッププロも着ているよ、という販促の一環でもあります」(野口氏)

 テニスクリニックだけでなく、3年連続で沖縄での選手合宿を主催した株式会社グラムスリーの代表取締役・坂本明氏は、アドミラルとの初タッグについて次のように語る。

「もともとわれわれの出発点が、ボールを最後まで追いかけるような一生懸命にテニスに取り組む選手を、世界200~300位からトップ100に入れるために、どうサポートできるか、です。当然、(海外遠征のための)経済的な部分で難しい問題があり、その現状の中で、選手たちにより多くのスポンサーをしてもらえるようにしなければならない。今回、われわれの活動にある程度ご理解をいただき、アドミラルさんにご支援いただけたのは、ひとつの大きな成果。3年目の合宿の中で、こういったことが達成できたことは良かったと思います。

 せっかくアドミラルさんには、加治さんのサポートについていただけましたので、加治さんには、大卒でもプロになってグランドスラムを目指せるんだというところを見せてほしいですね」

グラムスリーの坂本氏は、3年連続で、沖縄での選手合宿とテニスクリニックを主催している
グラムスリーの坂本氏は、3年連続で、沖縄での選手合宿とテニスクリニックを主催している

 もちろん野口氏の加治への期待は膨らむし、同時に、アドミラルのテニスウェアの新たなる展開への意気込みも増すばかりだ。

「加治さんが、グランドスラムで活躍できるようになれば、アドミラルのブランドの認知度が上がります。そうなれば、さらに若い選手への応援ができます。アドミラルとして、基本的に“選手ファースト”でという考えは変わることはありませんが、加治さんには、できるだけランキングを上げてもらいたいです。われわれもしっかりしたサポートができるように、いいものづくり、アドミラルを着ていたから勝てたというような服づくりをしたい」

 グラムスリーを介して、加治との出会いがあり、沖縄でテニスウェアの新しいブランドとしてアピールできたアドミラル。テニス市場での挑戦は、まだ始まったばかりだが、2020年代にどう成長していくのか非常に楽しみだ。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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