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レッドクレー(赤土)コートで戦えることの大切さとは!? Part2【テニス】

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
ジュニア選手たちにアドバイスをした錦織圭(写真すべて神 仁司)

「ローランギャロス ジュニアシリーズ」のアジア最終予選(2024年10月16日~20日、東京・第一生命相娯園テニスコート)が開催された。

 フランステニス連盟(FFT)、アジアテニス連盟(ATF)、日本テニス協会(JTA)が共同で主催する今大会には、アジア8カ国から男子16名、女子16名のトップジュニア選手が出場し、それぞれの優勝者には、2025年ローランギャロス・ジュニアの部シングルスの本戦ワイルドカード(大会推薦枠)が与えられる。

 男子は決勝で、川西飛生が、4-6、6-1、7-6(4)で田畑遼を破って、パリ行きのチケットを手にした。

「グランドスラムジュニアの予選も本戦も出たことがなかったので、このような機会をいただいて、しっかりそれを取りきることができたんで、めちゃくちゃ嬉しいです」(川西) 

 一方、女子は決勝で、上方璃咲が、6-2、3-6、6-3で早坂来麗愛を破って優勝した。上方は、2023年1月に、ITFジュニアランキング2020位だったが、大会時にはノーランキングだったにもかかわらず、見事ローランギャロス本戦出場権を手にした。

「全日本(ジュニアU16)で優勝して、(RGJrシリーズの)ワイルドカードをもらえることになった。全然出れると思っていなかったので、最初選手リストを見た時に、自分だけノーランクだったから、(ITFジュニアランキング)200番台の選手もいたのでレベルが高いなと思った。けれども、試合をやって海外の選手とはり合えることに嬉しさを感じました。勝ちきれて嬉しいです」(上方)

男子で、2025年ローランギャロス・ジュニアの部シングルスの本戦ワイルドカードを獲得した川西飛生(右から2人目)
男子で、2025年ローランギャロス・ジュニアの部シングルスの本戦ワイルドカードを獲得した川西飛生(右から2人目)

 

 今回のジュニアシリーズでは、レッドクレーコートが整備されて、至る所にローランギャロスのロゴマークが施され、東京にいながらパリの雰囲気を体感できたが、ワイルドカードを獲得したジュニア選手が、その本当の意味を知るのは、ローランギャロスの会場に足を踏み入れた時だと、伊達公子さんは指摘する。

「この一枠をつかみ取った事実に加えて、その意味を本当に理解できるのは、たぶんローランギャロスのコートに立った時ではないか。ローランギャロスの空気感を一度でも経験しているか、していないかは大きな違いだと思う。音楽だったり、タオルのボックスだったり、すべてパリと同じようにプレーできた。(日本のジュニア選手が)なぜ、この(第一生命の)コートが、こうなっていたのかを気づくのはパリに行ってからなんじゃないかなと思いますね。皆さんこだわって大会を作っているということも含めて大きな意味が私にはあると思います」

 さらに、レッドクレーコートで、トップスピンのきいたボールの重さやバウンドの高さ、ベースライン後方を含めたコートカバーリングの広さ、そういった試合の難しさを体感しながら、まだまだ自分が積み上げないといけないことがあること、そういった気づきのスタートにしてほしいと伊達さんは願う。

「まだまだできることはやっぱりあると思います。フットワークにしても、ショットの選択、戦い方、駆け引き、もっともっと(レッドクレーの)洗礼を受ければ、磨かれていくだろう。

 南米やヨーロッパの(ジュニア)選手とやった時に、全然自分のプレーをさせてもらえず、コートの広さが変わってくるぐらい考えさせられることになると思う。そういうことも含めて、“土”というものを存分に感じてほしいですね。(レッドクレーを)私は好きにはなれずに終わりましたけれども(苦笑)、(今の日本ジュニア選手たちに)好きなってほしいなと思いますね」

女子で、2025年ローランギャロス・ジュニアの部シングルスの本戦ワイルドカードを獲得した上方璃咲(右から2人目)
女子で、2025年ローランギャロス・ジュニアの部シングルスの本戦ワイルドカードを獲得した上方璃咲(右から2人目)

 

 今回、ローランギャロスへの出場権を手にした日本ジュニア選手2人の活躍が楽しみではあるが、大会アンバサダーを務めた錦織圭は、ジュニア時代には決して結果だけを追い求めないでほしいと警鐘を鳴らす。

「結果だけを見て、ジュニアの時に判断してほしくないな、と。常にみんなに言いたい。プロになっても若干同じではあるんですけど、勝ちだけを求めると、ジュニアだとつなぐだけで、ミスをしないだけで勝てちゃったりすることが多い。それをすると、プロになって勝てなくなったりする。日本人に起こりやすいことかな」

 これまでジュニア時代に結果を残していても、プロに転向すると伸び悩んでしまう多くの日本選手を、錦織もたくさん目にしてきたからこそ、はがゆさもある。

「(日本ジュニアは)プロに入った段階で苦戦する子が多い。上に上がっていきそうなテニス。すごい勝っているけどジュニア止まり、このままだと大変そうだな、とか。試合で駆け引きができているかできていないか。なるべく早く気づかせてあげて、道しるべを示せる人がいるといい。プロへの移行の仕方を、誰かがサポートできたらなとは思います」

 もちろん伊達さんも、「プロになってからも、上にいれるような成長をしてほしい」と願いは一緒だ。

 ツアープロを育成できる日本人コーチが少な過ぎることは、長年日本テニス界が抱えてきた問題で、もしかしたら“錦織世代”から優れた指導者が出現するのを待たなければいけないのかもしれない。

 テニスは、引き分けのない厳しい勝負の世界ではあるが、錦織は、「テニスをどれだけ楽しんでやっているか」ということも大切だと語る。ジュニア選手でもプロ選手でも同じで、テニスを楽しめているからこそ、錦織は17年間も長い間プロとして活躍できているのかもしれない。だからこそ、選手だけでなく、選手を見守るコーチや親にも、錦織の言葉を大事にしてほしいのだ。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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