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台風1号は金曜未明に与那国島近海を通過し、週末~週明けの西日本に接近

饒村曜気象予報士
ヤエヤマヒルギの幼木(写真:アフロ)

今年の台風1号は、7月3日9時にマリアナ諸等近海で発生しました。昭和26年以降では、平成10年の7月9日に次ぐ、2番目に遅い発生です。この台風1号が、発達しながら西進を続けていますが、今後は速度を少し落とし、金曜の未明(0~3時)に与那国島近海を通過しそうです。そして、夜遅く(21~24時)には転向して週末から週明けの西日本に接近するという予報が発表されています(図1)。

図1 台風の5日予報(7月6日0時発表)
図1 台風の5日予報(7月6日0時発表)

与那国島地方の暴風域に入る確率

与那国島地方では、暴風域(最大風速が毎秒25メートル以上)に入る確率は、8日(金)の未明(0~3時)が1番高く、20%を超えています(図2)。

図2 与那国島地方の暴風域に入る確率(7月5日21時)
図2 与那国島地方の暴風域に入る確率(7月5日21時)

与那国島地方では、今後、この値が台風予報が発表されるたびに大きくなってゆけば、より危険性が増しているということですので、一層の警戒が必要となります。逆に小さくなってゆけば、台風の危険性が小さくなってきたということになりますので、今後の台風情報に注意が必要です。

台風の転向

月別に台風がどのような経路をとりやすいか、ということは昔から重要なテーマとして研究され、その結果、台風の主要経路の図が作られています(図3)。

図3 月別主要経路図
図3 月別主要経路図

それぞれ独自の顔を持つといわれるほど多様な台風をまとめ、1か月分を1本の線で表わしてある、かなり大雑把な図ですが、台風が北上してくるのが7月から(一部は6月から)10月までであることや、北上する台風は、夏から秋の深まりとともに東へ向きを変える位置(転向点)がより一層低緯度に変ってくることなどを簡潔に示している優れた図です。

台風1号は、今のところ、月別主要経路図の6月の線と7月の方法的線の中間を進んでいますが、8日(金)の夜遅くには転向して進路を東寄りに変え、週末~週明けの西日本に接近しそうです。

小さくなった予報円の大きさ

気象庁の台風の進路予報の精度は、近年の数値予報モデルの改良やひまわり8号等の新たな観測データの活用によってかなり向上しています。つまり、予報誤差が小さくなっています(図4)。

図4 台風の進路予報の年平均誤差の推移
図4 台風の進路予報の年平均誤差の推移

予報円表示が始まった昭和57年は、台風の進路予報は24時間先までしか行われていませんでした。そして、その24時間先の進路予報の誤差は平均で200キロメートルを越えていました。それが現在は平均で100キロメートルを下回っています。平成7年に始まった72時間先(3日先)の進路予報でさえ、昭和57年当時の24時間先の進路予報より精度が良いのです。

また、平成11年に始まった5日先の台風進路予報は、平成元年の2日先の台風進路予報と同程度の精度を持っています。

そして、昨年の台風進路予報は、24時間先、2日先、3日先、4日先、5日先のいずれもが過去1番の進路予報精度を更新しました。

気象庁では、台風進路予報の改善を背景に、今年の台風1号から予報円の大きさ(半径)を約20~40%小さくしています。予報円が示す面積であれば、昨年までの3分の2から半分になっていますので、かなり小さな円になっていると感じられると思います。

図3の出典:饒村曜(1986)、台風物語、日本気象協会。

図3以外の図の出典:気象庁HP。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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