台風1号がようやく発生、今年も生きた「エルニーニョ現象の終わった年」というジンクス
今年は、台風1号の発生が遅れていましたが、7月3日9時に、ようやく、マリアナ諸島近海で発生しました。
台風1号の中心気圧は1002ヘクトパスカル、最大風速は毎秒18メートル(最大瞬間風速が毎秒25メートル)です。そして、明日には最大風速が毎秒25メートル以上の暴風域を伴うまで発達する見込みです。
7月3日の台風発生というのは、台風の統計をとりはじめた昭和26年以降、2番目に遅い記録です。
そして、台風1号の発生が遅い年は、「エルニーニョ現象の終わった年」というジンクスは、今年も生きています。
しかし、「台風の発生が遅い年の台風1号は南シナ海」というジンクスは、崩れています。
台風発生の定義
台風は東経180度以西の北西太平洋(南シナ海を含む)で、最大風速が毎秒17.2メートル以上になった熱帯低気圧をさします。
そして、その年で最初に発生した台風が台風1号で、以後、発生順に番号が付けられています。
気象庁が台風の統計をとりはじめた昭和26年(1951年)以降の65年間で、6月になるまで台風の発生がなかったのは、今年以外では5回しかありません(表)。
台風の発生が遅い年はエルニーニョ現象が終わった年
エルニーニョ現象というのは、南米沖の海面水温が平年より高くなる現象です。これに伴って太平洋高気圧の位置が東に移動し、日本ではあまり暑い夏にはならないというのがエルニーニョ現象です。
逆に、南米沖の海面水温が平年より低くなる現象が、ラニーニャ現象です。
(7月4日追記・訂正:当初の記事では、ラニーニャ現象は南米沖の海面水温が平年より高くなると誤って記してしまいました。正しくは、平年より低くなるのがラニーニャ現象ですので、上記のように訂正いたします。)
エルニーニョ現象とラニーニャ現象は繰り返しおきており、特に、20世紀後半には非常に大きなエルニーニョ現象が3回発生しています。
図2は、南米沖のエルニーニョ監視海域で、平年より海面水温が高いときを赤、低い時を青で表示したものです。赤が大きい時はエルニーニョ現象、青が大きい時はラニーニャ現象ということになります。
3回の赤が大きいエルニーニョ現象が終った年、ともに台風1号の発生が遅くなっています。つまり、表での台風1号の発生が遅い1位、2位、3位が、それに相当しています。
今年は、平成26年から続いていた「ゴジラ」というあだ名がつくほど強力なエルニーニョ現象が終わった年です。つまり、過去のジンクスは生きていました。
エルニーニョ現象が終わる時にどういうことが起きるかというと、インド洋で対流が活発になります。このため、例年であれば台風が良く発生するフィリピンの東海上では雲がほとんど発達しなくなります。台風の卵である積乱雲があまり発達しない(台風が発生しない)というのがエルニーニョ現象の終わった時期の特徴です(図3)。
台風1号の発生が遅い年の台風1号は南シナ海
台風1号の発生が遅い年の台風1号の発生海域は、これまでは、いずれも南シナ海でした(図4)。
今年の台風1号の発生はマリアナ諸島近海で、このジンクスは崩れています。
ただ、6月下旬に何回か南シナ海で熱帯低気圧が発生し、台風まで発達するかとみられていましたので、このジンクスが大きく崩れたわけではありません。
台風1号の発生が遅くても警戒が必要
台風の発生が遅い年といっても、上陸数はそれほど減っていませんし、台風災害がなかったわけではありません。
台風1号の発生が7月9日と非常に遅かった平成10年の場合、台風の年間の発生数は16個と少なかったのですが、上陸数は4個もあります。
しかも、台風4号(8月26~31日)は、上陸はしなかったのですが、北上しながら前線を刺激し、栃木県那須町で日降水量607ミリなど、栃木県北部から福島県にかけて記録的な大雨を降らせ、土砂崩れや浸水により、死者・行方不明者22名、浸水家屋1万5000棟などの被害が発生しています。
静岡県に上陸した台風5号により7名が、和歌山県に2日連続して上陸した台風8号と台風7号により19名が、鹿児島県に上陸した台風10号により13名が亡くなるなど、上陸した4つの台風で大きな災害が相次いでいます。
台風の発生が遅いといっても、台風災害が少ないわけではありません。これからも、台風の発生に注意し、台風に警戒が必要です。
特に、今年の台風1号は、発達しながらフィリピンの東海上まで北上します。
日本にどの程度の影響を与えるか、現時点でははっきりしていませんが、日本付近にある梅雨前線を刺激する可能性は十分ありますので、今後の台風情報に注視する必要があります。