スリルある岩稜登山ミニ体験と富士山の好展望を堪能! 「十二ヶ岳」縦走トレッキング
△マイナー登山道をあるく△(0008)
富士五湖の河口湖と西湖の北側に東西へ広がる御坂山地の一角。十二ヶ岳のピーク前後にまたがる急傾斜の岩場・鎖場の通行はなかなかのスリルを体感できます。
<趣意>
あまりメジャーではないマイナーな登山道。ちょっと気になってはいたもののなかなか行く機会のなかった山道を歩いてみました。
<十二ヶ岳の魅力>
(1)岩場・鎖場のスリリングな体験
十二ヶ岳の前後(十二ヶ岳を挟んで十一ヶ岳から金山の間)にはキレットのようにV字状に深く切れ込んだ地点があり、鎖が付いた長い岩壁の登降を繰り返します。岩壁に取り付くとまるで垂直のようにも覚えるスリル感です。
(2)富士山と西湖の展望
毛無山から十二ヶ岳、鬼ヶ岳までの間には南側に開けたポイントが複数あり、富士山とその麓の富士五湖の西湖の眺めを堪能できる好展望地となっています。またそのような展望ポイントは休憩適地にもなっているのでゆっくりと楽しめます。
<概要>
十二ヶ岳 (じゅうにがだけ)
所在地: 山梨県南都留郡富士河口湖町
その名の通り毛無山から西方向へ稜線上に12のピークが連なる。それぞれに「一ヶ岳」「二ヶ岳」…「十二ヶ岳」と名付けられている。
標高はそれぞれ毛無山が1600m、十二ヶ岳が1683m、鬼ヶ岳が1738m。
<トレッキングコース>
河口湖と西湖の間にある毛無山から西へ稜線を十二ヶ岳そして鬼ヶ岳へ縦走するルート。大小様々なピークを数多く踏む登り応えのある登山コースです。
■毛無山登山口バス停から毛無山
「毛無山登山口」バス停からスタートです。バス停脇の空き地の奥に「十二ヶ岳登山道入口」の看板が立っています。しばらく九十九折りに斜面を上がり、徐々にやや直登気味の小さな折り返しを重ねて標高を上げていきます。
やがて林が切れてススキの生えた草付きの斜面に出て空が広がりだすと毛無山の山頂です。眼下には河口湖と西湖そして正面に富士山の雄姿を眺めることができます。
■毛無山から十一ヶ岳
毛無山で一息ついて西へ十二ヶ岳に向かって歩き始めます。その名の通り一から十二のピークが連なる縦走路の始まりです。各ピークにはそれぞれ「一ヶ岳」から順に看板が立てられています。
一ヶ岳から十一ヶ岳まではほぼ順調にピークを越えていきます。ロープが付けられた斜面もありますがさほど難易度は高くありません。途中でこれから目指す十二ヶ岳の山体も見えて「あそこまで歩くのかー」と分かりやすい。
■十一ヶ岳から十二ヶ岳の核心部(岩場・鎖場)
このコースの最大の難所が十一ヶ岳と十二ヶ岳の間の岩場・鎖場です。
まず急斜面(感覚的には「垂直か!」と感じられるほどですが、実際にはたいした斜度ではないのでしょう)の岩場にしっかりと手足を使って三点支持で慎重に下りていきます。足を置くステップと手で掴む岩の出っ張りを確かめます。クライミングで講師からよく注意されますが「見切り発車しないこと!」
いったん下りきると空堀のような谷の合間に吊橋が架けられています。
吊橋は不安定でよく揺れます(1人ずつ渡ることと注意書きがあります)。吊橋の両端は人が何人も待機できるスペースはありませんのでこの区間を通行する場合には適度に前後の人との間隔を空けてゆっくりと進む必要があります。
吊橋を渡った先もすぐに急斜面の岩場に取り付きとなります。下降してきたときと同様に手がかり足がかりの岩の突き出しをさぐりながら登りやすいルートを見つけて上がります。十二ヶ岳のピークまで鎖付きの岩場の断続です。
岩場を越えて土の登山道となり、桑留尾への分岐点を過ぎると十二ヶ岳の山頂です。南側に富士山と西湖のパノラマ風景が広がっています。スリルのある岩場・鎖場を無事にクリアして山頂で息を整えることができる休憩適地です。
今回はさらに稜線を西へ金山と鬼ヶ岳そして雪頭ヶ岳を目指して縦走を続けます。時間的・体力的に余裕がなければ山頂から桑留尾の分岐点まで戻り下山すればバス停がある西湖の湖畔に出ることができます。
■十二ヶ岳から鬼ヶ岳
十二ヶ岳から先、すぐにこれまでと同様の岩場・鎖場の急傾斜の下りです。いったん下りきるとまた斜度のある岩場を登り返します。ハシゴが付いていますが、完全には固定されていないのでちょっとグラつくため注意が必要。
登り終えて来た方向を振り返ると十二ヶ岳のピークそしてその背景に富士山がそびえています。
岩場を過ぎると比較的なだらかな稜線が金山まで続きます。金山は眺望はありませんが平らな草地の広場となっており格好の休憩適地。金山からは左手に鍵掛峠と示された方向に進みます。
緩やかな尾根を歩き最後にひと登りすると鬼ヶ岳に登頂です。山頂は樹林も少なく、四方が開けており眺めもよい。もう一息で最後のピーク・雪頭ヶ岳です。鬼ヶ岳から左手のルートを進みます。その先には雪頭ヶ岳の山頂が見えています。
■鬼ヶ岳から雪頭ヶ岳を経て下山
岩壁に架かったハシゴを下りてふたたび登り返すと雪頭ヶ岳になります。その南面は開けた草付きの斜面で通称”お花畑”と名が付けられています。今回はちょうど端境期で残念ながらお花はほとんど咲いておりませんでした。
雪頭ヶ岳から先は登山口に向かって下り一筋です。ひたすら九十九折りに南面を下っていきます。広葉樹の森からカラマツの林へと変わりさらに下っていくと杉などの針葉樹の薄暗い森となります。
下りきると砂防ダムの堰堤とそのそばの広場に出て登山道は終わりです。簡易舗装の林道を歩いて行けば国道21号線に出て河口湖駅行きの「根場民宿」バス停に到着。今回はここがゴールになります。
[行程表]
※標準的タイムによる目安(休憩含まず)
「毛無山登山口」バス停→ 毛無山(100分)→ 十二ヶ岳(90分)→ 金山(40分)→ 鬼ヶ岳(30分)→ 雪頭ヶ岳(20分)→ 砂防ダム堰堤(90分)→ 「根場民宿」バス停(20分)
コースタイム/ 6時間30分程度
標高差/ 800m程度 (毛無山登山口バス停:910m、毛無山:1600m、十二ヶ岳:1683m、鬼ヶ岳:1738m、根場民宿バス停:910m)
<登山コースの補足>
要所に道標やピンクリボンがあるので迷うことはあまりないと思います。
[水場やトイレなど]
水場は登山道上にはありません。
トイレは河口湖駅と「根場民宿」バス停そばにあります。
[難易度・危険箇所など]
毛無山から金山の間(とくに十一ヶ岳から金山の間)に長い急斜面の岩場・鎖場の登降が複数断続します。3点支持で慎重に登降する必要があります。岩稜登山経験の浅い方は経験者と一緒に登った方がよいと思われます。
●山梨 山のグレーディング
十二ヶ岳(長浜~桑留尾)
体力度: 2 (1→10)
難易度: C (A→E)
鬼ヶ岳(根場民宿バス停方面~山頂)
体力度: 3 (1→10)
難易度: B (A→E)
[アクセス]
●往路
富士急行線「河口湖」駅から路線バス(富士急バス:西湖周遊バス「グリーンライン」)で「毛無山登山口」バス停まで約25分。
●帰路
「根場民宿」バス停から往路と同じ路線バスで「河口湖」駅まで約40分。
[付近の山]
三ツ峠山
黒岳
竜ヶ岳
石割山
富士山
<こんな方にオススメ>
(1)岩稜登山が好き
(2)岩稜登山の練習をしたい
(3)富士山の眺望がよい山に登りたい
<私的な雑感>
「十二ヶ岳」縦走登山コースは、穗高連峰や槍ヶ岳そして剱岳などの「本格的な岩稜登山をこれからやっていきたい!」という方のための入門ルートとしてピッタリなのではないかなーという印象です。
初めてこの岩場・鎖場(十一ヶ岳から十二ヶ岳の間のV字状の岩壁)を通行したときにはひどく長く感じました。実際は、岩壁を下りて吊橋を渡ってさらに渡った先の岩壁を登り返すまで、10分強程度だと思いますが。心の中で「ひぇ~」と脂汗を流して岩にしがみつき(これもクライミングの講師に「体を岩から離せ!」と指導されますけど…)、ようやく登り切ったときには精神的に疲れました。
岩場・鎖場の通行がご心配な方はヘルメットを着用した方がいいかもしれません。また岩稜登山練習にも利用されているルートですので、カラビナ、スリングやハーネスなどを持参して鎖と自分を繋いで滑落防止のためのセルフビレイのフィールドワークにも適していると思われます。
とくに剱岳の”カニのタテバイ”などと近しいシチュエーションになります。なお同じく”カニのヨコバイ”のような岩場・鎖場をトラバースするところはほぼありません。
今回ご紹介したコースは日帰り登山を想定していますが、踏破に少々時間を要しまた路線バス等の本数も少ないため、河口湖までのアクセスに不便な方は時間的に厳しいかもしれません。その場合には毛無山から十二ヶ岳まで縦走して桑留尾に下りていくショートカットでも十分に楽しめるかと思われます(この場合、コースタイムは標準的タイムで5時間程度。休憩のぞく)。
そんなわけで「十二ヶ岳」縦走ルートは変化と起伏に富んだ稜線歩きと岩稜登山のミニ体験に加えて富士山の雄大な光景も眺めることができる、絶好の日帰り縦走登山コースと言えると思います。
<参考リンク>
山梨 山のグレーディング (山梨県)
山梨の登山・山岳情報ポータル (山梨県)
(2024/09/18 上町嵩広)