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富士山を愛でる縦走登山 ”ガイリーン”こと「箱根外輪山」トレッキングでぐるっと箱根半周!(前編)

上町嵩広登山レポーター
眼下に広がる強羅などの街並みと右手に大涌谷そしてその後背に箱根外輪山がずっと続く

△マイナー登山道をあるく△(0009)

箱根・芦ノ湖の外縁を連なる箱根外輪山の縦走トレッキングコース。稜線の一方に富士山、もう一方に芦ノ湖などを見渡せる快適な稜線歩きが楽しめます。

<趣意>
あまりメジャーではないマイナーな登山道。ちょっと気になってはいたもののなかなか行く機会のなかった山道を歩いてみました。

正面の金時山へ向かう草付きの登山道
正面の金時山へ向かう草付きの登山道

<箱根外輪山の魅力>

(1)気持ちの良い尾根歩き
いったん外輪山の稜線まで上がればその先は開けた尾根歩きの縦走となり、空も高く広がり開放感のある道が多いです。また起伏もあり適度な歩き応えがあります。
(2)富士山や大涌谷の展望スポットが要所にある
標高自体は高くないので稜線といっても樹林帯もありますが、ところどころで富士山や大涌谷の展望に恵まれたスポットがあります。今回のコースでいいますとおおむね左手に富士山や大涌谷が見えます。

<概要>

箱根外輪山 (はこねがいりんざん)
所在地: 神奈川県小田原市・南足柄市・足柄下郡箱根町、静岡県御殿場市・裾野市・三島市・駿東郡小山町
箱根外輪山は箱根山を中心とした火山活動により形成された外輪山。芦ノ湖はカルデラ湖に相当する。
主な山稜は明星ヶ岳、明神ヶ岳、金時山や三国山など。外輪山一連の最高峰は金時山(標高は1212m)。
外輪山稜線の縦走路はトレイルランニングの愛好者などからは”ガイリーン”と通称されることもある。箱根湯本から元箱根まで馬蹄形のように結んだ場合はおおむね30Km強。

箱根外輪山の登山コース案内図
箱根外輪山の登山コース案内図

<登山コース>

今回は箱根湯本駅を起点に塔ノ峰の稜線へ上がりそこから反時計回りに元箱根までを歩くルートを2回に分けて紹介いたします。

前編として箱根湯本駅から矢倉沢峠(金時山の手前)までの箱根外輪山東半分をレポートします。全体的に急登はあまりありませんが、稜線歩きのため起伏が多く、登り返しは何度もあります。

■箱根湯本駅から塔ノ峰を経て明星ヶ岳登山口まで

箱根湯本駅からスタート
箱根湯本駅からスタート

阿弥陀寺への分岐路
阿弥陀寺への分岐路

箱根登山鉄道「箱根湯本」駅からスタートです。駅を出て国道1号線を芦ノ湖方面へ向くと登山鉄道の高架下をくぐり、左手の阿弥陀寺の方へ進みます。滑り止めが施されたなかなか急な舗装道路の坂。しばらく歩くと右手に阿弥陀寺へ入る脇道があります。

簡易舗装された道を上がっていくと阿弥陀寺。寺の境内の右手を通り裏手に入ります。この先からいよいよ本格的な登山道になります。

阿弥陀寺の裏手から塔ノ峰への山道に入る
阿弥陀寺の裏手から塔ノ峰への山道に入る

涸れ沢のような谷筋があり、小路が左右に分かれていますが右手の斜面への道がルートです。目立ちませんが指示板もあります。最初は竹藪の斜面。しばらくすると雑木林に変わり、塔ノ峰を示すしっかりとした道標も設置されています。

塔ノ峰の説明案内板
塔ノ峰の説明案内板

右手に植林されたであろうか杉林が現れて道を登りきると塔ノ峰へ辿り着きました。眺望はあまりありません。一息ついてから道標にしたがって明星ヶ岳へ向かいます。

塔ノ峰から森のなかの登山道を下る
塔ノ峰から森のなかの登山道を下る

アザミがよく咲いていました
アザミがよく咲いていました

明るい林の中の道をゆっくりと下っていくと車道に合流です。車道を左手(西側)へすこし進むと右手に明星ヶ岳登山口が出てきますのでふたたび森のなかへ入ります。

■明星ヶ岳登山口から明星ヶ岳を越えて明神ヶ岳まで

左手にちょこんと富士山が頭をのぞかせる
左手にちょこんと富士山が頭をのぞかせる

そこそこ直登の明星ヶ岳への登山道
そこそこ直登の明星ヶ岳への登山道

登山口から稜線へまた上がっていきます。そこそこの傾斜が続きますが左手には富士山や大涌谷の山並みも見えてきます。やがて周りは森からカヤトの道へと変わります。

明星ヶ岳の説明案内板
明星ヶ岳の説明案内板

空が広く見えてきて開けた平地に出ると明星ヶ岳になります。樹林が刈り払われているのか、広い草地となっており休憩にはもってこいの場所です。

両側から覆いかぶさるようなササダケの登山道
両側から覆いかぶさるようなササダケの登山道

手前の大涌谷とその背後に右から左へずっーと続く箱根外輪山 果てしない…
手前の大涌谷とその背後に右から左へずっーと続く箱根外輪山 果てしない…

明星ヶ岳から次に明神ヶ岳を目指して歩き出します。両側はササダケに囲まれた道です。左手に展望がありこれから向かう外輪山の長い山並がずっと続いているのを望むことができます。「果てしない…」とも思えてちょっと気が遠くなる。

振り返れば相模湾
振り返れば相模湾

しばらくすると明神ヶ岳の(手前の…)ピークが目の前に立ちはだかってきます。ピークへの斜面を上がりきるとまた開けた稜線です。左手に大涌谷、右手に静岡側の街並みそして振り返れば相模湾を見渡せます。明神ヶ岳はもうすぐです。

明神ヶ岳
明神ヶ岳

白煙を噴き上げる大涌谷
白煙を噴き上げる大涌谷

果てしなく続くこれからの行く末の箱根外輪山 右手の突起が金時山そして正面に雲に隠れた富士山
果てしなく続くこれからの行く末の箱根外輪山 右手の突起が金時山そして正面に雲に隠れた富士山

今回の前編では明神ヶ岳が一番の展望スポットといえます。対面して、山腹から白煙を沸き立たせる大涌谷の荒々しい姿が広がるパノラマ風景はなかなかの絶景ぶり。その日の風向き次第では硫黄の匂いを感じることもあります。大涌谷の右手には雄大な富士山の姿も併せて眺めることができました。

■明神ヶ岳からカヤト道を通って金時山手前の矢倉沢峠まで

ニシキウツギかハコネウツギか このあたりは季節になるとウツギが多く花を咲かせています
ニシキウツギかハコネウツギか このあたりは季節になるとウツギが多く花を咲かせています

明神ヶ岳のベンチでちょっと休憩してからさらなる先の金時山へ向かいます。トンネルのように樹木が両側から覆いかぶさるような道を抜けると、尾根上の広いササ原に出てきます。

カヤトの道が続く
カヤトの道が続く

火打石岳の手前で北側の斜面につけられた巻き道へ。巻き道が終わり稜線へ戻ると両側に高くそびえたカヤト道が始まります。ほかの山域ではあまり目にすることができないレアなシチュエーションでしょうか。

カヤト原の間を登山道が貫く
カヤト原の間を登山道が貫く

矢倉沢峠の先は金時山へとつながる
矢倉沢峠の先は金時山へとつながる

行く先に金時山のピークがラスボスのようにどん!とそびえています。カヤトのなかにつけられた道が延々と続いていくのが遠くまでよく見通せます。カヤトの道のなかを何度か登り返してようやく矢倉沢峠に出てきました。

そのまままっすぐ稜線を進めば金時山になりますが、今回はここでいったん仙石原のほうへ下山します。金時山は後編に持ち越しです。

[行程表]

※標準的タイムによる目安(休憩除く)
箱根登山鉄道「箱根湯本」駅→ 阿弥陀寺(30分)→ 塔ノ峰(60分)→ 明星ヶ岳登山口(20分)→ 明星ヶ岳(100分)→ 宮城野分岐(70分)→ 明神ヶ岳(50分)→ 火打石山案内板(60分)→ 矢倉沢峠(60分) ※矢倉沢峠から仙石バス停までは+30分程度
コースタイム/ 7時間30分程度(仙石バス停までは+約30分)
標高差/ 1100m程度 (箱根湯本駅:96m、塔ノ峰:566m、明星ヶ岳:924m、明神ヶ岳:1169m、矢倉沢峠:868m ※仙石バス停:651m)

<登山コースの補足>

道標は要所に設置されており迷うことはあまりないと思います(阿弥陀寺裏手から登山道に入るところがちょっと分かりにくい)。
稜線を歩くため起伏は多めです。またちょっと急登の登り返しをするところも何ヶ所かあります。
明星ヶ岳までは雑木林が多く、その先から矢倉沢峠まではササダケのカヤト道の部分も多く見られます。
ところどころ左手に大涌谷や箱根外輪山の山並みを見通すことができます。
矢倉沢峠にお茶屋さんがありますが不定期営業のようで週末など休日であっても必ずしも営業しているわけではないようです。
仙石バス停そばに自動販売機があります。近くにコンビニエンスストアとドラッグストアがあります。
●水場やトイレなど
水場は登山道上にはありません。
トイレは箱根湯本駅と阿弥陀寺にあります。阿弥陀寺のトイレはお寺さんのご厚意で利用できるものになります。

[難易度・危険個所など]

とくに大きな難所や危険個所などはほとんどありません。
箱根湯本駅からスタートする場合、外輪山の稜線にいったん上がり切りさらに起伏が続き何度も登り返しを繰り返すことになります。相応の体力と脚力が必要になりますので余裕を持った計画を立てることをお勧めいたします。
●エスケープルート
明星ヶ岳と明神ヶ岳の間に国道1号線の宮城野に下山する分岐路があります。宮城野には箱根湯本駅(もしくは小田原駅)行きのバスが運行しています。また多少時間がかかります(宮城野から坂を上っていく)が箱根登山鉄道「強羅」駅に徒歩でアクセスすることも可能です。

[アクセス]

●往路
箱根登山鉄道「箱根湯本」駅から徒歩。
●帰路
「仙石」バス停まで徒歩。箱根湯本駅行きと小田原駅行きがあります。
登山口に一番近いバス停は「金時登山口」バス停ですが運行本数が少ないため、タイミングが合わない場合にはそこから徒歩5分程度の「仙石」バス停までいけば運行本数も多くなります。
※箱根の道路(国道138号線や国道1号線)は時間帯により渋滞しやすいです。
●お得な切符
「箱根フリーパス」は小田急系列、「箱根バスフリー」は西武系列でそれぞれ利用できる路線や範囲などが異なりますので事前によくご検討ください。

[付近の山]

金時山
箱根駒ヶ岳
箱根・旧東海道 石畳の道
大野山
真鶴半島
愛鷹山
石垣山

<私的な雑感>

箱根外輪山縦走路”ガイリーン”は富士山と大涌谷の眺望に恵まれた軽快な縦走コースというイメージです。

今回の前編の行程でいいますとルート上の合間合間に左手には大涌谷や富士山が望めるスポットがいくつもあります。また行く手にこれから踏破するであろう外輪山の山並みがずらっと連なっている光景に良くも悪くも感嘆します。

前編は尾根への取り付きから稜線へ出るまでが登り切る場面があるのでちょっとシンドいなぁーと感じることもありますが、そこを乗り切れば大きな展望地に出て爽快な気分にさせてくれます。

いったん稜線に上がればその先は比較的悠々とおしゃべりでもしながら歩いて楽しめます。樹林帯が切れたカヤト道などはほかの山域にはなかなかないロケーションであり、とても空が広く高く開放感を楽しめます。個人的にはこのカヤト道がお気に入りです。

なお今回のルートを後編と合わせて一回で踏破する場合はかなりの長時間となりますので前後のアクセスも考慮して慎重に計画を立てた方がいいと思われます。せっかく日本屈指の温泉観光名所である箱根に来ているのですから、どうせなら途中で一泊して温泉宿でゆっくりと箱根を堪能してみるのも一案ではないでしょうか。

そんなわけで箱根外輪山縦走路”ガイリーン”は、金時山登山などだけだとちょっと物足りないなーという登山好きの方にはさらなるアクティビティのプランとしてとても面白いと思います。

※後編(矢倉沢峠から金時山を経て外輪山の稜線上をぐるりと芦ノ湖を回り箱根峠へと下山します)は次週配信予定です。

<備考>

箱根町観光協会公式サイト「箱根全山」 ※公式サイト
富士箱根伊豆国立公園 (環境省)

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(2024/11/06 登山レポーター:上町嵩広)

登山レポーター

登山やトレッキングに関する極私的な観点からの感想や記録のレポートがメインです。登山道の情報だけでなくお食事処や立寄り湯などの関連情報もお伝えしていきたいと思います。皆様の今後の山行のお役に立ち、またこれから登山を始めたいと考えていらっしゃる方のためになれば幸いです。登山歴は15年ほど。普段は奥多摩や丹沢周辺に出没し、八ヶ岳や北アルプスにも出張ります。雪山やテント泊もやっています。ブログ「note」内でマガジン『登山の魅力』や『歴史に連なる山登り』なども掲載しております。よかったら併せてご覧ください。好きな山は「編笠山」(八ヶ岳)。山の抱負は「ちょっとだけ背伸びした山を登ってみる」

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