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大谷翔平がユニフォームを着たラマー・ジャクソンって、どんな選手?

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
ボルティモア・レイブンズのラマー・ジャクソン

 アメリカ人が最も愛するスポーツ、アメリカンフットボールのプロリーグ『NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)』の2022年シーズンが9月8日(日本時間9日)に開幕した。

 アメリカ人がどれだけアメフトを愛しているかを伝える方法は多数あるが、アメフトに馴染みの少ない日本人に対しては、NFL開幕を祝ってメジャーリーガーが好きなNFL選手のユニフォームを着て遠征に出たとのニュースが分かりやすいだろう。

 すでに多くのメディアで報じられたように、大谷翔平が所属するロサンゼルス・エンゼルスの選手たちは、9月8日の移動日にアナハイムからヒューストンに移動する際に、各選手たちが好きなNFL選手のユニフォームを着用して旅に出た。

 ニュージャージー州出身のマイク・トラウトは熱狂的なフィラデルフィア・イーグルス・ファンとして知られており、イーグルスのクオーターバック(QB)、ジェイレン・ハーツのユニフォームを選択。

 ニューヨーク・ジャイアンツとジェッツの本拠地はニューヨーク州ではなく、河を挟んだ対岸にあるニュージャージー州に在るので、ニュージャージー州出身のトラウトがジャイアンツやジェッツではなく、イーグルスのファンであることを不思議に思うかもしれない。

 トラウトが生まれ育ったカンバーランド郡はニュージャージー州の南部に位置しており州北部にあるメットライフ・スタジアム(ジャイアンツとジェッツのホーム・スタジアム)までは約225キロも離れている。

 最も近いNFLチームはお隣のペンシルバニア州にあるイーグルスで、イーグルスの本拠地までは約90キロ。トラウトが10歳だった2001年からは4年連続で地区優勝を果たして、イーグルスはトラウト少年の心をがっちりと捉えた。

 メジャーリーガーとしてリーグ・ナンバー1選手に上り詰めたトラウトだが、所属するエンゼルスは低迷を続けており、感情を剥き出しにするような痺れる試合を体験できないでいる。そんなトラウトにとって、愛するイーグルスの試合を観ている瞬間は、最も興奮する時間なのかもしれない。

大谷がラマーのユニフォームを選んだ理由

 トラウトがイーグルスのユニフォームを選んだ理由は分かったが、日本の岩手県出身の大谷は、なぜ縁もゆかりもなさそうなボルティモア・レイブンズのQB、ラマー・ジャクソンのユニフォームを選んだのだろうか?

 エンゼルスの試合を中継するバリー・スポーツ・ウエストのエリカ・ウェストン・レポーターが大谷を直撃。

 「ショー、ラマー・ジャクソンのファンなの?」と尋ねると、大谷は笑いながら首を横に振ったと試合中継でレポートしている。

 水原一平通訳が「彼(ラマー・ジャクソン)は、僕らのファンタジー・フットボール・チームの選手なんだ」と大谷がジャクソンのユニフォームを着た理由を明かしたとレポートを続けた。

 ファンタシー・フットボールとは、実際のNFL選手の成績を基に競い合うゲーム。アメリカでは職場の同僚たちとリーグを作ることが多く、実際のNFL選手をドラフトしながら自分のオリジナル・チームを作り上げ、シーズン中にはトレードなどで選手の補強も可能。大谷がファンタジー・フットボールをやっているということは、多少なりともNFLを観ていると推測できる。

大谷とラマーの共通点

 実は大谷とラマー・ジャクソンには多くの共通点がある。

 まず、両選手ともに満場一致でMVPに選ばれていることだ。

 ジャクソンは2019年シーズンに満票でMVPに選出され、大谷も2021年に満票でアメリカン・リーグのMVPを獲得している。

 次に両者ともに、これまでの常識を覆す存在であること。

 投手、打者として前人未到の活躍を続ける大谷に関しての説明は不要だと思うが、ジャクソンもQBというパスを投げる司令塔的なポジションを務めながらも、ランニングバック(RB)顔負けの走力を誇り、ランでも積極的に攻めていく。通常はQBが怪我することを恐れて、チームはQBのラン機会を限定するものだが、ジャクソンだけはRB並に走っている。NFL史上初となる3000パスヤード&1000ラッシングヤードの記録を打ち立てたが、これは今年大谷が達成した10勝&30本塁打に匹敵する記録だ。

 両選手ともにプロ入り当時は「そのスタイルはプロでは通用しない」と言われながらも、人並み外れた才能と努力で、そのスポーツの常識を引っくり返してきた。

 そして、3つ目の共通点は両選手ともに次の契約が大きな注目を集め、リーグ最高年俸を手にするのではと噂されていること。

 大谷は来季終了後にフリーエージェントの権利を手にするし、ジャクソンは今季が契約最終年。リーグ最高年俸を求めて、レイブンズと交渉を続けていたが、開幕までに合意することはできなかった。

 大谷もジャクソンもMVP受賞選手ながら、市場価値よりもかなり低い格安な年俸でプレーしており、次の契約では大きな昇給が確実視されている。

ジャクソン本人とレイブンズも反応

 ジャクソンはエンゼルスの公式ツイッター・アカウントが投稿した大谷が自身のユニフォームを着た姿のポストに「いいね」をして、二刀流として活躍を続ける大谷にリスペクトを示した。

 また、レイブンズはチームの公式サイトに『大谷がラマー・ジャクソンのユニフォームを着て遠征に出る』との記事を掲載。ジャクソンは大谷のように二刀流選手としてNFLに変革を起こせる選手になれるとして、2人の偉大なる二刀流選手を取り上げた。

エンゼルスの公式が投稿したポストに「いいね」をしたラマー・ジャクソン(ラマー・ジャクソンの公式ツイッターより)
エンゼルスの公式が投稿したポストに「いいね」をしたラマー・ジャクソン(ラマー・ジャクソンの公式ツイッターより)

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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