銭湯で話題沸騰!人気No1ポスターは名古屋の素人パパがスマホで撮ったものだった!
素人のスマホ写真ポスターが広告のプロの作品を抑え人気1位に!
今、全国の銭湯にかわいらしく印象的なポスターが貼り出されています。手ぬぐいを頭に乗せたおかっぱ頭の女の子が気持ちよさそうに湯船につかるこの1枚は、OAC(日本広告制作協会)主催の「銭湯ポスター総選挙2018」で人気投票1位に輝いた作品です。
実はこのポスター、名古屋の銭湯に通うファンが手づくりで制作して、個人でコンテストに出品。並みいるクリエイターの作品を抑えて栄冠を獲得したものなのです。
「1歳から銭湯に通っている娘をモデルに、写真は私がスマホで撮影しました」とは出品者の鷲尾康彰さん。彼は名古屋市内の会社員で、いわゆるクリエイターではありません。素人のスマホ写真のポスターが栄えある広告賞に輝くことになったとは! そのいきさつを尋ねました。
少女のインパクトにほれ込んだ銭湯好きクリエイター
「撮影場所の平田(へいでん)温泉には家族で毎週のように通っています。4年ほど前にお店のフライヤーをつくることになり、うちの娘がモデルを務めることになったのがそもそものきっかけです」
このフライヤーを制作したのが大阪在住のクリエイター、勝原小夜里さん。銭湯のミニチュアを制作してイベントで発表するなど、銭湯を応援する活動を展開しています。そして、2014~15年にその作品展を平田温泉のロビーで開いたことからしばしば店に顔を出すようになり、それが運命の出会いにつながりました。
「ひと目見て、ちょっと他にない独特の魅力を持った女の子だな、と思いました。天真爛漫で女将さんから聞く語録も大人顔負けの面白さで、『是非、彼女を平田温泉のマスコットガールに!』と女将さんに強くお勧めし、フライヤーをつくることになりました」(勝原さん)
ちなみにこの娘さんのWeb上のあだ名は“師匠”。落語の林家こん平師匠にどことなく似ていて、また年齢の割に妙に落ち着いていて言動に貫録があることから、父親の鷲尾さんが命名しました。1作目のフライヤーが好評だったことから、翌年2作目を作成。さらに1年後、平田温泉の女将さんから「今度、銭湯ポスター総選挙というコンテストがあるから、これを元にポスターにして出品してみたら」と勧められたことが、今回の出品へとつながったというわけです。
主催者、銭湯ファンも認めるモデル少女の魅力
総選挙には70作品が応募。昨年9~12月に5地区10軒の銭湯でポスターが掲示され、鷲尾さん・勝原さんによる作品が投票数2154票のうち最も多い204票を集めました。
銭湯ポスター総選挙は、OACによるクリボラ(クリエイティブボランティア=クリエイターがその経験を活かして社会貢献する活動)の一環で、銭湯をテーマにするのは前年に続いて2回目。銭湯につからなければ見られないポスター展を企画することで、銭湯に気軽に足を運んでもらい、お客と銭湯のコミュニケーションが生まれることを期待して開催されました。
主催のOACは今回の人気投票の結果に「やはりモデルの女の子のインパクトが強かったのでしょう」と語り、さらに「全70作品中、協会所属の制作会社が53作品、一般の制作会社が5作品。個人や学生からも合わせて12作品の応募がありました。個人や一般制作会社からの応募が増えたのはうれしい限りです」とよりオープンなコンテストになったことに企画の認知度の広がりを感じているといいます。
銭湯ファンからも、このポスターの評判は上々です。全国の300か所以上の銭湯を巡っているWebサイト『銭湯・奥の細道』管理人の原沢聡志さんは「“師匠”の昭和っぽいかわいらしさが銭湯に合っている。変にひねったりしていなくて、パッと見た瞬間に目に飛び込んできて、銭湯の魅力が分かりやすく表現されている」と評価します。
ポスターを見に銭湯へ行こう!
そして、何よりこれをきっかけに銭湯へ足を運んでみようと思う人が増えることこそが、制作者の願いです。
「最近は特に地震や台風の影響もあって、銭湯がものすごいスピードで減ってしまっていて、一軒でも多く残ってほしいと願っています。銭湯の経営者がこの笑顔で元気になってくれたらうれしいですし、普段はあまり銭湯へ行かないという人が少しでも行ってみようかなと思うきっかけになればと思います」と勝原さん。鷲尾さんも「煙突、下駄箱、浴槽、カランなど、いろいろな銭湯に行くと一軒一軒個性があると分かるし、普段通っている銭湯のよさにも気づくことができる。自宅のお風呂とは違った解放感を感じられるので、まずは一軒行ってみてほしい」と言います。
ポスターは約4500部が印刷され、1月下旬に全国の銭湯へ配布されています。あなたの町の銭湯でも、愛らしい“師匠”に出会えるかもしれません。
(写真撮影/筆者 ※ポスターおよび表彰式の写真は日本広告制作協会提供)