【浦和レッズ】自身初のACL優勝から1カ月 MF関根貴大が自らに課すプレーとは?
■数年来抱えてきた悔しさにひと区切り
プロ10年目を迎えた2023年の5月。浦和レッズのMF関根貴大は、ここ数年の胸がうずくような感情にひと区切りをつける成果を手にした。自身初となるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のタイトルだ。
クラブにとって通算2度目のACL優勝だった2017年はラウンド16まで主力として勝ち上がりに貢献したが、夏にドイツのインゴルシュタットへ移籍したため、優勝時には在籍していなかった。ベルギーのシントトロイデンから帰国した2019年は決勝でアルヒラルの前に完敗し、準優勝にとどまった。
「ACLの借りはACLでしか返せない」
強い決意で臨んだアルヒラルとのACL決勝は、アウェーとホーム、2試合とも先発。中心選手として優勝を掴み取り、うれしさと安堵で涙をこぼした。
■ACL後「もう一つギアを上げないといけない」と語っていた
それからちょうど1カ月が過ぎた。関根はACL優勝から中3日で行われた5月10日のサガン鳥栖戦こそ途中出場だったが、その次のガンバ大阪戦から前節の鹿島アントラーズ戦までリーグ戦5試合連続で先発。チームはこの5試合を3勝2分けで突き進み、現在は暫定5位につけている。
ACL決勝の前、マチェイ・スコルジャ監督が「ACLまではメンバーを固定している」とコメント。関根はその言葉を「終わったらメンバーを変えるという意味でもあると思う」ととらえ、「今、試合に出ている選手はもう一つギアを上げないといけない」と危機感を持っていた。
指揮官の言葉通り、ACL後にいくつかのポジションで先発の顔ぶれが変わる中、関根は変わらず先発を続けている。そして、チームはおおむね順調に勝ち点を積み重ね、「ACLとリーグの2冠」という目標を現実のターゲットとしながらリーグ中盤戦を迎えている。
■「モヤモヤしているところが多い。一個上に行かないといけない」
試合前のウォーミングアップで、スタンドから関根コールが真っ先に聞こえると、「単純なんで、やっぱり嬉しいですよ」と自然と表情がほころぶのだが、一方で心の奥では満足できていないどころか、むしろくぐもった感情を抱えていた。
「自分の良さを出せる試合がほとんどない感じがしている。モヤモヤしているところが多いので、そこでもう1個上に行かないといけない」
そう言って厳しい表情を見せたのは、5月27日の京都サンガ戦後だ。2-0で勝利したこの試合、関根は先発して89分までプレーした。5人の交代枠がある今、攻撃的なポジションでこの時間までピッチに立っていたのだから及第点であるのは間違いない。関根自身も「与えられている役割ができているから試合に出られているのだと思うし、そこは自信を持っても良い」と認めるのだが、やはり、それでは足りないという意識が強いのだ。
「点を取れていないし、最近アシストができていない。結果を残さないと他の選手に(ポジションを)取られてしまう可能性が高い。結果を残していくためにさらに工夫が必要だと思っています」
■イメージとして「酒井宏樹」と「興梠慎三」の名を挙げた
そんな風に言いながら、さらに言葉を継いだ。
「きょう(京都戦)は良い状況で自分にボールが入ってくる場面がほとんどなかったけど、その中でも力強さというものは見せないといけなかった。やっぱり、(酒井)宏樹くんとか迫力あるし、(興梠)慎三くんもそう。身体を張ってくれればチャンスになるので、2列目の選手が1枚剥がしたり、というシーンができれば、流れの中で点が取れたのかなと思う」
関根から酒井宏樹の名が出たのは意外だった反面、なるほど、という気もした。DFでありながらここぞという場面で見せる攻撃力は、今や浦和の見所のひとつだからだ。奪いきってカウンターにつなげたり、裏抜けでチャンスをつくったり。
関根は、「宏樹くん、力強いですよ。自分から五分五分へ持っていって、そこで、みたいな感じです」と刺激を受けつつ、「自分はそういう仕掛け方ではないので、人それぞれなんですが、ただ、強さは見せていかないといけないと思っています」と、イメージを浮かべていた。
■危機感を抱いて臨んだ広島戦で見せた「強さ」
京都戦後に語っていたことを実際にピッチ上で表現したのは、中3日で行われた5月31日のサンフレッチェ広島戦だった。
関根は0-1で迎えた後半27分、西川周作のロングキックを相手と競り合いながら落とした。身長167センチと小柄だが、ロングボールの競り合いは自信を持っている部分。京都戦後に思い描いていた「強さ」を見せたそのプレーが起点となって、酒井宏樹の同点ゴールが生まれた。
続く6月4日の鹿島アントラーズ戦では、前半から積極的にチャンスを作り出そうという意図が見えた。前半15分、安居海渡からパスを受けて、ダイレクトでゴール前へ浮き球のパス。リンセンのヘディングシュートは惜しくも枠を捉えなかったが、ワンタッチのクロスは関根が見せた新しい姿だった。
さらに前半17分には、ホイブラーテンからサイドでパスをもらって中へ切れ込みながらドリブルを仕掛け、DF2人の間を割ってPAに侵入しようと試みた。このときは潰されたが、抜けていれば間違いなくビッグチャンスだった。
試合は両者譲らず0-0で終わったが、「前向きに仕掛けられるシーンが最近の中では多かったと思う。相手のブロックが堅かったのでサイドから行くしかないと思っていたから、思い切っていった」と自身のプレーには一定の手応えを感じていた。
■「そんなのを見ていたら恥ずかしい」
鹿島戦の先発メンバー発表後、各選手のスタッツを目にした時、「恥ずかしい」と思ったことがあるという。
「スタメンのスタッツ見てたら、フィールド選手で(得点欄が)ゼロって、僕だけでしたからね。そんなのを見ていたら恥ずかしいし、ゴールめちゃくちゃ取りたいです」
関根の指摘通り、浦和は先発11人中、GK西川周作と関根以外の9選手が既に今季ゴールを挙げていた。2列目の選手である以上、モヤモヤを払拭してもう一個上に行くためにはやはりゴールが必要だとの認識を再確認させられたスタッツ一覧。腹を据えた背番号14に注目したい。