5週間、ノルウェー国会前に座り込み野宿をした22歳の先住民が退去
「私が座り込みを開始したのはノルウェー統一地方選挙の開票日だった9月11日でした。座り込みを初めて5週間になります。この1ヶ月間、応援してくれた皆さんにとても感謝しています」
先住民サーミ人であるミフカル・ハエッタ(Mihkkal Hætta)さん (22)は、ノルウェー政府がサーミの人権を侵害して2年目に突入したことを抗議するために、北極圏の故郷から首都オスロの国会広場前に「引っ越し」をした。
北欧では市民による抗議活動は普通なために、国会前では毎日のように誰かがデモをしている。しかし、国会広場前に大きなラヴヴォを設置して、動くことを拒否して生活を始める人を見たのは筆者も初めてだった。
サーミ人の移動型住居ラヴヴォを建てて、ミフカルさんひとりで始めた活動だった。すぐに彼を応援しようと仲間のサーミ人やノルウェー市民が動き出し、雨風をしのげるようなラヴヴォに強化した。週末や夜中には酔っ払いなどがちょっかいを出してくるため、常に数人がラヴヴォの前で座り込み・警備をして、ミフカルさんのプライバシーができるだけ守られるように配慮していた。
「みんなに体調を聞かれるたびに『元気だ』と答えてきたけれど、今は認めます。私は本当に疲れています。私の声にも疲れがにじみ出ているかもしれません。この期間の間、国会にも3回行きました」
ミフカルさんとサーミ人の若者たちは国会内広間でも座り込みをし、サーミ独特の歌唱法「ヨイク」を歌いながら、警察に担いで運び出されるまで動くことを拒否した。
「この1ヶ月間、不快なこともありました。例えば、サーミ人にとっては貴重で高価なとても大切なベルトを盗まれたこと。私の家には見知らぬ人たちがたくさん訪問してきていて、思ってもみなかったような質問をされたりしました」
ミフカルさんは『モネジャー』(ママとマネージャーを兼ねた言葉)になってくれた二人のサーミ人女性には感謝してるとも答えた。
「故郷が恋しくてたまりません。だから最後に支えてくれたたくさんの人々にありがとうと感謝の気持ちを伝えたいと思います。私は明日引っ越します」と10月14日に話した。
数日間にわたるサーミ人とノルウェー市民による抗議活動で、政府側は態度を変えなかったが、国王と王大使が彼らとの謁見を許可し、声を聞いた。サーミ人と特別な歴史をもつ国王が謝罪と同情という、政府とは反対の「人らしい対応」をしてくれた国王に彼らは感謝に、抗議活動を続ける新たなエネルギーをもらったと発言している。
今は国会前にはミフカルさんのラヴヴォはないが、異例のアクティビティはメディアの注目も集め、仲間たちの連帯の力もさらに強めたようだった。