東京で一番遅いイチョウの黄葉 暖かい時代になると東京でも奄美のように黄葉なしで落葉か?
東京でイチョウの黄葉
イチョウは、他の木に比べて葉が厚くて水分が多いことに加え、幹も他の木よりも水分が多くて燃えにくいという性質があります。
江戸時代には、防火用の空き地(火除け地)にイチョウが植えられ、大正12年(1923年)9月1日の関東大震災の際には、実際に火事の延焼を防いだところもありました。
関東大震災のときに火事の延焼を焼け焦げながら食い止めたイチョウは、震災イチョウとして、大手濠緑地や浅草寺などに残っています。
ちなみに、大手濠緑地の震災イチョウは、中央気象台長(現在の気象庁長官)の岡田武松が、震災復興の区画整理で切り倒されそうになった震災イチョウを、関係各所に頼みこんで中央気象台の敷地内に移植したもので、皇居のお掘脇で火事を止めたのではありません。
関東大震災のこともあり、街路樹として、一番多く植えられているのがイチョウで、その黄葉は秋の風物詩となっています。
令和6年(2024年)12月3日、東京や宇都宮、甲府、松江、鳥取でイチョウが黄葉しました。前日に、京都、彦根、広島、松山でもイチョウが黄葉していますので、遅ればせながら、令和6年(2024年)も紅葉・黄葉の季節に入りました。
東京でのイチョウの黄葉は、平年より10日遅いだけでなく、昭和23年の統計開始以来、最も遅い記録です(図1)。
近年、東京でのイチョウの黄葉日は遅れる傾向があり、11月下旬の観測はほとんど令和になってからです。
今年の記録更新まで、一番遅い黄葉日は令和5年(2023年)と昭和54年(1979年)の12月1日です。
そして、12月3日という日付けは、東京でのイチョウの落葉日の平年です。
奄美大島・名瀬では、イチョウの落葉の平年は12月23日ですが、イチョウの黄葉の平年はありません。冷え込みが弱いために黄色に色付かず、黄葉が観測できないまま落葉するからです。
東京も暖かい時代となると、奄美大島と同じように、イチョウの黄葉日がどんどん遅れてゆくのではなく、黄葉そのものがなくなるかもしれません。
東京(東京都心)の最高気温と最低気温
令和6年(2024年)の東京は、記録的に気温が高い年となりました。
最高気温が25度以上の夏日を最初に観測したのは3月31日、最高気温が30度以上の真夏日は6月12日、最高気温が35度以上の猛暑日を最初に観測したのは7月4日、最低気温が25度以上の熱帯夜を最初に観測したのは7月4日と、いずれも平年より早くなっています。
そして、10月になっても暑い日が続き、猛暑日は20回、真夏日は83回、夏日は153回、熱帯夜は47回もありました(図2)。
東京は、明治8年(1875年)6月5日以降の気象観測がありますが、東京都心の夏日日数は、昨年(2023年)の140日を抜いて歴代1位、猛暑日、真夏日はともに昨年に次ぐ歴代2位の記録となりました。
また、平成25年(2013年)10月12日を抜いて、最も遅い真夏日となりました。
11月20日に最高気温が8.8度と寒い日がありましたが、11月も多くの日は最高気温も最低気温も平年を上回っています。
ただ、季節が進んで、平年値そのものが低くなっていますので、平年より高いといっても、夏日などの基準に及びません。
そして、今週末からは、最高気温はほぼ平年並みに、最低気温は平年より若干低くなる見込みです。
東京も、全国的な傾向と同じく、暑い暑いといっているうちに、短い秋は終わって冬になろうとしています。
図1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。
図2の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。