ソーシャルメディアの拡散が「タイムラグ」を生み、被災地のニーズに合った支援を難しくしている
熊本地震では、ソーシャルメディアに大量の情報が発信・拡散され、情報が過剰に溢れています。マスメディアで伝えられない現地の情報を知ることが出来る一方でデマや、不確実な情報が多く、支援活動を困難にしています。
拡散され続ける「現地情報」
例えば、「益城中央小学校が避難所でないため孤立しており、物資が全然ない」という支援を呼びかけるツイートが出回ってます。これに対してジャーナリストの津田大介さんが現地に電話で確認し、21日に以下の様なツイートを行っています。
ツイッターで「益城中央小学校」を検索すると、津田さんのツイート後も、拡散され続けていることがわかります。津田さんも指摘しているように、現地の状況は刻々と変わります。小学校の住所や電話番号が掲載されているツイートもあり、支援活動の混乱を生じさせています。
この辺りのことは、22日の朝日新聞朝刊「耕論」災害とコミュニケーションのインタビューに回答したのですが、情報によるミスマッチはソーシャルメディアの拡散によるタイムラグにあります。
- ネット情報過剰、選別せよ 藤代裕之さん(法政大学准教授)
発信元を確かめる、他の情報がないか避難所や現地の名前でツイート検索をする、など拡散する前に情報の確認をするべきなのですが、非常に難しい状況になっています。
語りたがる人を止めることはできない
このような事態を予想し、4月16日に下記のような記事を書いて、安易な情報拡散は控えることを呼びかけたのですが、この記事はソーシャルメディアの反応は非常に少なく、ヤフートップに紹介されることもありませんでした。
心理学者のオールポートとポストマンは、噂の公式「R~i(重要さ:importance)×a(あいまいさ:ambiguity)」だと指摘しています。川上善郎は不安が高まると噂を人に伝える可能性が高まると指摘しています。
余震も続き、現地から地震関連の様々な情報発信が伝えられ、心配と、不安と、支援したいという気持ちがないまぜとなり、ソーシャルでの発信につながっているのです。「語りたい」という気持ちが要因なので、Amazonほしいものリストや、他の物資のマッチングシステムの整備ではカバーできないのです。
このままではネットは使えなくなる
朝日のインタビュー記事では字数の都合もあり、マスメディアが「情報のトリアージ」の役割を果たして、ネットを流れる情報が正しいのか、間違っているのか、対応の必要があるのか、ないのかを伝えるべきと述べているのですが、まとめサイトやバイラルメディアの責任も見逃せません。
現地からの情報発信を確かめることなく、次々と記事を作り(もしくはユーザーがまとめることを止めていない)、それらがソーシャルメディア経由で、さらに拡散して情報爆発が起き、本当に必要な情報を見えにくくしてしまっているのです。また、プラットフォーマーの役割も重要です。NHKの生活・防災アカウントや津田さんが、不確実情報を確認する「情報のトリアージ」を行っていますが、焼け石に水状態です。
このままでは大規模な災害時には、ソーシャルメディアとネットメディアから離れるしかなく、インフラとしての役割が果たせなる可能性があります。