平昌オリンピック 人工雪のカギは低温と多量の水確保
韓国・平昌オリンピック大会が2月9日に開幕します。
雪が少ない大会
韓国・平昌は、もともと雪の少ない地方です。冬に多い西高東低の冬型の気圧配置になると、シベリアからの寒気が陸地を通ってきますので、厳しい寒さになりますが、雪はほとんど降りません。日本海側の地方は、シベリアからの寒気が日本海を通る過程で下層から湿ることで大雪になるのとは大違いです。
冬型の気圧配置のときは、気象衛星「ひまわり」からは、朝鮮半島がくっきり見えます。黄海・東シナ海や日本海、日本列島と違って、朝鮮半島上空には雲が無くなるからです(図)。
今冬の平昌は、ラニーニャ現象の影響で冬型の気圧配置の日が多いことから、平年以上に雪の少ない状態が続いていますし、開幕までの5日間も強い冬型の気圧配置になると予想されています。
韓国では、人工雪で補うこととし、11月から少しずつ人工降雪機で人工雪を作り、それを見て貯めているとの報道もありましたが、カギは、低温と多量の水の確保です。
人工雪と多量の水確保
人工的に小さな氷を沢山作ってばら蒔く、あるいは、圧力をかけた水と空気の混合体を一気に吹き出すことなどで積雪状態にする機械が人工降雪機です。しかし、高性能の人工降雪機を無理やり多数集めたとしても、気温が0度以上であれば、役にたちません。
しかし、冬型の気圧配置のときは、シベリアからの寒気が陸地を通ってきますので、厳しい寒さになることから気温の問題はなさそうです。
ただ、多量の水確保の問題があります。人工雪では、自然に降る雪に比べて含まれる空気の量が少ないという特徴があります。自然に降る雪が100平方メートルに10センチの場合、この雪を溶かすと約1トンの水になりますが、100平方メートルに10センチの人工雪を作るとなると、場合によっては約5トンの水が必要です。
オリンピックのために韓国で初めて作られた滑降コースの距離が2857メートルですので、仮に、長さ3000メートル、幅100メートルの範囲を50センチの人工雪で覆うとなると、7万5000トンもの水が必要になります。競技が始まれば、つねに競技によって荒れてきた表面を補修するための雪も必要でしょう。
雪が必要な競技のすべてを人工雪で補うとなると、多量の水を山の上に持ち上げる必要があります。
山の積雪は水資源
少雪のときに、山にある競技場を人工雪で補うには大量の水が必要ということは、山に積雪があるときは、山に多量の水があることになります。山の積雪は水資源です。
日本海側の地方では、山の積雪が春に溶け、春先の稲作に必要な多量の水となっています。日本海側に米どころが多いのは、積雪という水資源があるからです。
また、積雪には保温効果があります。雪の中に多くの空気を含んでいるため、気温が極端には下がりません。新潟県北部の村上がお茶の北限になっているなど、多雪地帯は以外と温かい地方の作物がとれます。
大雪には多くのデメリットがありますが、メリットも少なくありません。
図は、2月4日9時に追加しました。図の出典:気象庁ホームページ。