Appleが睡眠計測デバイスのBedditを買収して、実現が期待されること
Appleが、iPhoneやiPadと接続して睡眠を計測できるデバイスを開発する「Beddit」を買収したことが分かりました。
Bedditのウェブサイトのプライバシーポリシーのページでは、5月8日のアップデートとしてAppleに買収されたことが明記されています。
Bedditは、ちょうど1本の帯のような形状で、シーツの下に敷き、睡眠の状況を計測することができるデバイスです。この帯の中にはピエゾ素子による圧力センサーや静電容量のタッチセンサー、湿度・温度センサーが内蔵されており、これらとスマートフォンのマイクを使って、睡眠の状況を計測します。
計測できる項目は、「睡眠時間」「睡眠効率」「睡眠するまでの時間」「睡眠サイクル」「睡眠の深さ」「呼吸」「いびき」「心拍」「ベッドにいた時間」「起床時間」「ベッドの中で起きていた時間」などで、前述のセンサーによる温度や湿度と総合しながら、睡眠のスコアを計測してくれます。
睡眠の質を計測し、飲酒や疲れ具合、睡眠前のルーティンなどによる睡眠の変化を知ることができます。またFAQには、睡眠時無呼吸症候群の治療に使われるCPAP(持続陽圧呼吸療法)と併用しているユーザーもいると書かれていました。
ちなみに、睡眠計測については、手首などに装着するアクティビティトラッカーが既に取り組んできた分野でしたが、145.95ドルのこのデバイスでは、特別な操作なく、自動的に睡眠を計測してくれるため、ベッドで本を読んでいて寝落ちしても、その寝落ち前から計測し始めてくれるわけです。
Appleによる買収の意味
AppleはBedditを買収しましたが、デバイス自体は継続して販売されています。iOS向けにより高い機能性を発揮する状態は以前と変わらず、今後もそうした状況が続いていくことになりそうです。ちょうど、Appleが2014年に買収したBeatsのオーディオ製品と同じような位置づけになるのではないか、と考えられます。
AppleはBeddit買収によって、Appleブランドの睡眠トラッカーを発売することはしませんが、Appleの既存の製品の向上には、そのノウハウやデータが活用されることになりそうです。
前述のように多くのアクティビティトラッカーは睡眠計測をサポートしていますが、Apple Watchは18時間というバッテリー持続時間の特性上、人間が寝るときにはApple Watchも充電するとして、睡眠計測機能をデフォルトでは導入していません。
Sleep++などのApple Watchアプリでの睡眠計測は可能ですが、充電に関する問題解決はなされないため、寝る前に充電するか、起きてすぐ充電する、という習慣がなければ、Apple Watchでの睡眠計測は現実的ではないのです。
しかし、Appleは将来的に、バッテリー持続時間の向上を実現すれば、Apple Watchを睡眠計測のツールとして活用することは考えていくでしょう。
Apple Watchには温度センサーこそ入っていませんが、加速度センサーやマイクは内蔵されており、Bedditはデバイスそのものとスマホのマイクを活用した計測をしていましたが、これをApple Watchだけで行えるようになれば便利です。
それだけに、バッテリーの進歩は、Apple Watchにまつわる多くの問題を解決し、期待を叶える技術的な関門となってきました。
また、Apple Watchなどの具体的な機能への導入でなくても、AppleがBedditを買収して行えることはあります。むしろ、こちらが本丸のようにも思えます。
とくに医学研究を行うためのアプリ開発API「ResearchKit」や、健康や病気の管理のアプリを開発するAPI「CareKit」を用意しているAppleにとって、睡眠の計測とそのデータの活用は、研究や療養のソリューションとして有用なデータとなることが期待できます。
BedditのAppleブランド化こそしないものの、Bedditデバイスからデータを取得するAPIをResearchKitやCareKitに組み込んで、活用できるようにするでしょう。