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【先行レビュー】ノイズキャンセリング搭載のAirPods 4に、自分の耳は選ばれるのか?

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員

Appleは9月20日より、第4世代となる完全ワイヤレスイヤフォン、AirPods 4を発売します。今回は、AirPods 4の先行レビューをお届けします。

Apple:AirPods 4

なお、YouTube Liveで、実機レビュー&解説も行いました。こちらも合わせてご覧ください。

AirPods 4の位置付けとラインアップ

AirPodsシリーズは、iPhoneからヘッドフォンジャックがなくなった2017年に登場し、日本をはじめとする先進国でベストセラーとなっているBluetooth接続の完全ワイヤレス(左右独立型)イヤフォンです。

左から、AirPods 4(ANC) 、AirPods 4。箱も極めて小型に。
左から、AirPods 4(ANC) 、AirPods 4。箱も極めて小型に。

現在、上位モデルからオーバーイヤーヘッドフォンのAirPods Maxがある以外は、Appleブランドは全て完全ワイヤレスイヤフォンで、シリコンチップをつけて耳を塞ぐ形で装着するカナル型のAirPods Pro 2、そして今回アップデートされたのがインナーイヤーイヤホンのAirPods 4となります。

AirPods 4には、アクティブノイズキャンセリング(ANC)に対応する「AirPods 4(ANC)」 29,800円と、ノイズキャンセリングなしの「AirPods 4」21,800円が登場します(価格はいずれも税込)。

カラーはこれまで通り、ホワイトの1色。AirPods Maxはカラフルな5色展開ですが、通常のAirPods、AirPods Proシリーズは、白以外出す気がないのかもしれません。

極めて小型なケース、イヤフォンの形状変更

まず、ANCの有無に関わらず、共通しているAirPods 4の特徴から見ていきましょう。

左から、AirPods 4(ANC)、AirPods 3
左から、AirPods 4(ANC)、AirPods 3

今回AirPods 4は、ケースやイヤフォンなどのデザインが変更されています。

インナーイヤー型のイヤフォンは耳に入れて引っ掛けて固定する方式で、その形状が非常に重要です。

左から、AirPods 4(ANC)、AirPods 3
左から、AirPods 4(ANC)、AirPods 3

耳の形状には個人差があり、今回もAppleはリサーチを通じて5000パターンから絞り込んだとされる新しい形状は、平らな面積が拡大され、エッジに向けての形状が鋭角になり、引っかかりやすさを意識しています。また、センサーや音が出る開口部なども小さくなり、軸も短くなっています。

完全に個人差の世界ですが、筆者にとっては、少しフィット感が増したかな?と感じる程度の変化で、AirPods 3と大きな変化なく利用できます。

左から、AirPods 4(ANC)のケース、AirPods 3のケース
左から、AirPods 4(ANC)のケース、AirPods 3のケース

また、ケースは小型化されています。昨今、バッテリーを内蔵するために、完全ワイヤレスヘッドフォンのケースはどちらかというと四角く大きく、という傾向が強いように感じます。

そうした中で、試聴時間を短くせず、ケースを小型化することに成功しているAppleは、省電力性も含めて、技術の面でリードしていることをうかがわせます。

ケースにはこれまで通り、充電やペアリングなどの状態を表現するランプが前面にありますが、ボディの内側に隠されており、消灯時はランプがあることもわからないようになっています。

またランプの下にはタッチセンサーがあり、ダブルタップ操作で、ペアリングなどのモード変更が行えます。

ANC有無での3つの違い

今回、8000円の差で、ノイズキャンセリングに対応する「AirPods 4(ANC)」と、非対応の「AirPods 4」がラインアップされています。

両モデルで共通しているのは、新しい形状のイヤフォンとケース、H2チップ搭載、ANCオフ時の連続再生時間5時間、本体と合わせて30時間という数字も揃っています。

左から、AirPods 4 (ANC)、AirPods 3。ANC対応でマイク性能などが向上している。
左から、AirPods 4 (ANC)、AirPods 3。ANC対応でマイク性能などが向上している。

1つ目の違いは、形状は全く同じイヤフォン本体では、ANCが利用できるかどうか。機能性としては、AirPods Pro 2と同様に、周囲の環境に合わせてノイズを低減する「適応型オーディオ」、「外部音取り込みモード」、「会話感知」に対応し、つけっぱなしでも車内アナウンスを聞き取ったり、店員との会話を自然に聞き取ることができます。ANCについては次の項目で触れます。

またANCの有無とともに2つの大きな差があるのがケースです。ANCモデルのケースには、ケースのワイヤレス充電、「探す」に対応し、音を出して探せるようにするためのスピーカーが搭載されています。なお、有線での充電は、両モデルともUSB-Cに変更されました。

ケースのワイヤレス充電は結構便利で、QiやApple Watchのワイヤレス充電機に乗せておけば良いため、数日に一度の充電であっても、使い勝手に大きく差が出るポイントです。ANCとQi充電のための8000円は、良い投資だと考えます。

インナーイヤー型だけど、十分ノイズキャンセリング

新幹線の車窓とAirPods 4(ANC)
新幹線の車窓とAirPods 4(ANC)

さて、H2チップを搭載し、インナーイヤー型ながらアクティブノイズキャンセリング(ANC)に対応したAirPodsを、郊外から都心に移動する私鉄、混雑する新宿駅、鬼門となる都営大江戸線、そして東北新幹線といったシーンで使ってみました。

結論から言えば、驚くほどノイズキャンセリングがちゃんと効く、という印象でした。

私鉄線の場合、停車駅も少なくそもそもあまりうるさくない環境で座っていましたが、AirPods Pro 2と同じぐらい、静かに音楽に集中できる環境でした。

新宿駅の雑踏、AirPodsのノイズキャンセリングは以前から、「会話感知」をオフにしていても、比較的人の声は消さない味付けがなされていますが、完全に背景のガヤガヤは消えています。しかし、時折雑音が差し込むタイミングがありました。

そして90dbにもなる心配していた大江戸線。何もつけていないとうるさくて非常に不快な騒音に晒されるのですが、AirPods 4のANCは善戦し、騒音を軽減。やはりANCの効果を発揮してくれていました。しかし完璧ではなかった。その理由については、次に触れます。

総じて、自分の生活圏であれば、AirPods 4のANCは、十分にその役割を発揮してくれることがわかりました。

大江戸線:AirPods 2とAirPods 4、ANC性能の違いというより

では、普段利用しているAirPods Pro 2との比較です。同じH2チップを使っており、ANCの仕組みそのものは共通であると考えて良いと思います。

その上で、大江戸線での試用では差が出ました。

ANCは、耳に直接届く外部からの音を遮断した上で、さらにそれを逆位相の音で打ち消すという仕組みで静寂を擬似的に作り出しています。

そのため、インナーイヤー型の場合、耳を密閉するわけではないため、外部からのノイズの遮蔽が甘くなります。

その違いが、特に騒音がうるさかった大江戸線では差が出てくるポイントになっていたと思います。

AirPods Pro 2の場合、シリコンチップで耳を塞ぎ、外部からの音をほぼカットする状態を作り出します。シリコンチップのメリットは、サイズを変えることで、どんな人の耳にとっても、同じ密閉環境を作り出せる点です。

これに対しAirPods 4は、フィット感は向上していますが、密閉という意味ではシリコンチップほど完璧であありません。そのため、騒音低減の効果が劣るのは、ANCの性能ではなく、自分の耳とイヤフォンのフィット時に生じる隙間のせい、ということになります。

新宿駅で気になったこと:雑音が歩行に合わせて入ってくる

新宿駅でも気になることがありました。

駅で乗り換えるために歩くわけですが、歩いているときに、「すっすっ」と、歩くペースに合わせて、雑音が大きくなるような印象を覚えました。

これも、前述の、AirPods 4のフィット感に関係しています。つまり、歩いているときに、ちょっとずつ上下の振動でイヤフォンが動いて隙間が生じ、その隙間から音が漏れて入ってくるため、ANCを通らない雑音が耳に直接届いてしまうのです。

決してAirPods 4が歩いているときにずれて落っこちてしまう、ということはありませんでした。しかし頭の動きに合わせて生じる隙間から入ってくる雑音は、AirPods Pro 2では起きなかっただけに、気になる存在となりました。

夏前に発売して欲しかった!

AirPods 4は、Appleとしては価格を抑えながら、iPhone / Apple Watch / iPad / Macとの組み合わせでのペアリングと接続の高い利便性、小さいのにしっかりと持続するバッテリー、そして素直ですっきりとした音質、さらにノイズキャンセリングまで備える進化を果たした製品でした。

特にシリコンチップのイヤフォンは、夏場、耳の穴に密着する部分で、肌のトラブルになりがちで、日本の夏には少し厳しい製品だったと振り返っています。その意味で、「できれば夏前に出して欲しかった」と個人的には感じています。

実際、より小型で軽く、外耳に負担が少ないAirPods 4でANCが利用できるようになり、AirPods Pro 2よりも気軽に常用しやすい製品だと感じています。

個人的には、ANC搭載モデルこそ、AirPods 4のメリットを最大限に享受できる製品であり、ANCモデルの選択がおすすめです。

その一方で、AirPods Pro 2に比べると、街歩きのお供には若干劣る面も発見できました。ぜひ店頭で、フィット感とともに、新しいイヤフォンと自分の耳の遮音の相性も見ておくべきだと思います。

店頭で試すコツ

店頭でAirPodsを試すとき、多く人はANC性能を実感します。AirPods 4でもANC性能をぜひ試すべきですが、もう一つ試しておくべきは、ANCがオフの際の自分の耳における遮音性です。

ANCは雑音を消しに行くのでわかりにくいのですが、ノイズキャンセリングをオフにした状態で、AirPods 4を装着している時と、していない時での雑音の聞こえ方の差を確かめてみてください。

意外と雑音が聞こえるな、と思ったら、おそらく遮音性が十分ではない可能性が高いので、AirPods Pro 2の方が、ノイズのコントロールがしやすい、と判断することができるでしょう。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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