Yahoo!ニュース

Apple Pay 10周年、日本独自のこだわりの実装も - @tarosite

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
Apple Payを発表するTim Cook CEO - 2014/9、筆者撮影

2014年10月にスタートした、非接触とオンラインのセキュアな決裁システム「Apple Pay」が10周年を迎えました。現在のApple PayとApple Walletの担当バイスプレジデントはJennifer Bailey氏。

Apple Payの世界中の利用者数は、2020年9月の段階で5億700万人(Statista)。2019年にAppleがApple Payから得た収益は9億8800万ドルで、2024年には40億ドルにまで成長すると予測されています(Statista)。

2014年当時米国にいて、どんなに気をつけていてもリアル・ネットで半年に1度はスキミングに遭っていたところ、これが一切なくなり、めちゃめちゃイノベーションだと思いました。

そうした社会問題を解決しながら、Appleはプラットフォーマーとして手数料を得る、普及すればするほど、収益が上がっていく、非常に鮮やかなプラットフォームビジネスである、と評価できます。

発表時の写真、初めてAmexカードでApple Payをアクティベーションしたときのキャプチャ、Berekey発祥のシアトル系元祖コーヒー店、Peet's Coffeeのコンタクトレス対応決済端末の写真を載せておきます。

Apple Payの仕組みは、クレジットカードのトークンを発行して端末のセキュア領域に取り込み、これを用いてNFCタッチ、もしくはオンライン決済を行う仕組みです。

決済時にクレジットカード番号を生でやり取りしないため、スキミングの被害に遭いにくく、NFCトークンがコピーされても、カード再発行なしにこれを無効化して、あらたなトークンを設定することができる仕組みです。

実際、トークンがスキミングされたことは、10年間使ってきて一度もありませんでした。

クレジットカードがスキミングされると、決済に使えないだけでなく、ケータイや電気、水道といった公共料金、サブスクなどの支払いカードを全て変更しなければならなくなり、とてつもない手間になります。

あるいは、変更し忘れているサービスがあると、未払いになってしまったり、サービスがキャンセルされてしまうことにもなり、生活に支障が出てしまうので、絶対に避けたいことでした。

■日本対応は、NFCとFelicaの2本立て

日本向けのiPhone 7とApple Watch Series 2にわざわざFelica対応を入れて、2016年にSuicaを先行対応させて参入しました。

その後iPhone 8、iPhone X、Apple Watch Series 3からは、日本のクレジットカードも利用できるようになりましたが、その実装は他国と比べて凝ったものでした。

日本にはSuicaをはじめとする交通系に加えて、iD、QUICpayといった、Felicaを用いた非接触決裁「おサイフケータイ」のリーダーが全国に普及していました。

AppleはこれらのリーダーでApple Payを利用できるようにすべく、日本のクレジットカードは、海外と同様のNFC(A・B)でのコンタクトレス決裁に加えて、各カード会社が対応するおサイフケータイでの決裁(Felicaを用いたiD/QUICpay)にも対応させました。

Apple Walletのクレジットカードの券面に、Visa、Master、Amex、JCBといったグローバルネットワークのロゴと、iD・QUICpayのロゴが両方載っていると思います。

このロゴの意味は、グローバルネットワークのロゴがNFCでのコンタクトレス決済対応、iD・QUICpayのロゴがFelicaを用いたおサイフケータイ対応、を意味しています。

@tarosite / #アップルノート より:
https://tarosite.net/apple/2024/10/18/apple-pay-10th-anniversay-and-japan-market-adaption/

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

松村太郎の「情報通信文化論」

税込330円/月初月無料投稿頻度:月4回程度(不定期)

米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

松村太郎の最近の記事