函館本線(山線)は「小樽―長万部」全線で混雑 ニセコ駅でも乗降客多く、新幹線でカバーできない需要あり
例年、冬の観光シーズンには地元の利用者に加えて押し寄せる観光客で大混雑となっている函館本線の小樽―長万部間。このうち、小樽―倶知安間について、通常は大半の列車がH100形2両のワンマン運転が行われているところ、昨年末の2024年12月28日から午前中の一部列車が車掌乗務のH100形3両編成で運行されている。この記事を執筆している2025年1月6日時点でも、H100形3両編成の運行は続いており、JR北海道公式ホームページの「列車走行位置」でもその情報を確認することができる。
さらに、この混雑は倶知安―長万部間にも拡大しており、こちらの区間でも激しい混雑が続いている。こうした年末の状況については、筆者の記事(函館本線「小樽―倶知安」で一部列車がH100形3両編成に! 閑散線区の「倶知安―長万部」も激しい混雑)でも詳しく触れている。倶知安―長万部間には1日4.5往復しか列車の設定がなく、昼過ぎの列車に乗客が集中しやすい傾向があるが、今回は、筆者が年末に実際に倶知安―長万部間を乗車したときの様子を報告したい。
なお、筆者は、このとき年末年始の首都圏での年越し大回り乗車に参加するため、長万部駅からは特急北斗号と北海道新幹線はやぶさ号に乗り継いで大宮駅まで行き、そこから東武野田線でこの日の宿泊地となる柏駅へと向かっている。
倶知安駅の待合室は椅子が取り払われ整列スペースに
筆者が倶知安駅に到着したのは、長万部行が発車する2時間ほど前となる10時30分頃。H100形3両編成の列車が倶知安駅に到着する様子を狙うために、早めに倶知安駅入りをすることにした。この3両編成の列車は、札幌駅を6時9分に発車する然別行の普通列車で車両基地から送り込まれ、然別駅を8時5分に発車する小樽行でいったん小樽に戻り、小樽駅を9時36分に発車する倶知安行となり、再び小樽に戻るという運用が組まれている。この列車が倶知安駅に到着するのが10時52分となるわけだ。この日の天気はかなりの雪であったが、雪の降りしきる中、倶知安駅に到着する3両編成の列車をカメラに収めた後、筆者は長万部行に乗車するために倶知安駅へと向かうことにした。
倶知安駅に行ってみると、待合室にあった椅子はその大半が取り払われ、床に黄色い線が書かれた整列スペースとなっていた。筆者は、昨シーズンに日中の列車がキハ201系3両編成の運行に改められた際に乗車した際には、改札口から駅待合室の端まで100名を超える長蛇の列ができていたが、今シーズンからは、待合室内で列を折り返して整列できるように万全の準備がなされているように感じられた。
倶知安駅から2両編成に120名ほどが乗車
倶知安駅を12時35分に発車する長万部行は12時頃から列が出来始め、12時10分頃に改札を開始。さらに12時16分には小樽駅からの普通列車が倶知安駅に到着し、この列車からの乗り換え客を合わせて、長万部行を待つ乗客の数は120名ほどとなり、倶知安駅のホームは溢れんばかりの人でごった返していた。そして12時25分頃に長万部行が入線。車内の座席はあっという間に埋まり、50名ほどの立ち席客が出る状況となった。
筆者は、倶知安駅の改札では3人目に並び、改札の開始と同時にホームへと入ることができた。このためホーム上ではほぼ最前列に並ぶことができたため、4人掛けのボックス席を確保できた。筆者と同席したほかの3名は言葉を聞く限り中国系の旅行者と思われ、列車が発車すると北海道の雪景色が珍しいのか、しきりに車窓からの風景をカメラに収めていた。ニセコ駅では除雪用のモーターカーと列車交換し、中国系の旅行者にとってはこの除雪用の車両も珍しかったのか、熱心に写真を撮影していた。
また、ニセコ駅では20~30名ほどが下車したと同時にほぼ同数の乗車があり、ニセコ駅から乗車してきた白人観光客の手には、ニセコ駅の出札補充券で発行された「ニセコ→函館」の乗車券が握りしめられていた。函館本線の山線については、ニセコ駅からの需要も増え始めているほか、新幹線では楽しむことのできない車窓風景も観光の魅力と感じている旅行者が多い様子である。こうしたことから、新幹線の駅ができない地域からの需要や、ほとんどがトンネル区間で景色がほとんど見えない新幹線では味わうことのできない車窓風景などに対する在来線の観光需要があることが確認された。
そして、黒松内駅では、長万部駅から来る対向列車が17分遅れるということで、しばらく停車。H100形1両編成でやってきた倶知安行の車内の様子を見ると、すし詰め状態で100名ほどは乗車しているのではないかという状況となっていた。そして筆者の乗った列車は長万部駅には14時28分頃に到着したが、ここで降りた乗客がすべて函館方面に乗り継ぐというわけではなく、長万部駅で途中下車する者や、札幌方面の特急に乗り換える乗客の姿も見られた。
それでも倶知安町は在来線の早期廃止を主張
函館本線の山線と呼ばれる長万部―小樽間140.2kmについては、北海道新幹線の札幌延伸に伴い、並行在来線としてJR北海道から経営分離されることが確定しており、北海道庁が主導する並行在来線対策協議会の場において廃止の方針が強引に決定された。
北海道新幹線の札幌延伸については、トンネル工事などの遅れで開業見通しが2038年ころになりそうであることは筆者の記事(北海道新幹線の札幌延伸開業は2038年度へ! 函館本線山線の廃止は白紙撤回し、活用方策を再検討すべき)で詳しく触れている。
函館本線の山線は、北海道新幹線の並行在来線と言えども、新幹線の駅ができるのは、長万部駅と倶知安駅のみで、新幹線の新小樽駅は現在の小樽駅からバスで30分ほどかかる町はずれに建設されることや、バスでは運びきれないほどの利用者がいる余市駅は全く通らないことから、現在の山線の利用者を新幹線で代替することは不可能と言ってもよい状況だ。
こんな状況においても、倶知安町では、新幹線新駅整備に支障することを理由に山線の早期廃止を主張しているが、協議会に地域のバス会社は呼ばれておらず、昨今深刻化するバスドライバー不足から、鉄道代替バスの引き受けに難色を示している現状があり、倶知安町の主張は支離滅裂で完全に破綻していると言っても過言ではない。
(了)