新「青春18きっぷ」の使い勝手を検証 旅行中の予定ルートに災害運休発生で、元が取れなくなるリスクも?
2024年冬シーズンから青春18きっぷが大幅にリニューアルされた。それまでは、春・夏・冬休み期間中の任意の5日間で利用でき、かつ複数人でのグループ利用も可能だったが、今回の変更により「連続する3日間用」と「連続する5日間用」の2種類の販売に変更され、グループ利用も不可となった。こうした突然の制度変更により困惑したユーザーも多かったようで、SNS上では「青春18きっぷの良さが失われてしまった」と戸惑いの声があがり、約3万4千筆を集めるオンライン署名活動にも発展したが、JR東日本はこうしたユーザーからの声に対して塩対応だったことは筆者の記事(JR東が約3万4千筆、署名受取拒否で再び騒動の「青春18きっぷ」 署名主催者は何を意図していたのか)でも触れている。
豪雪被害で日本海沿岸ルートを断念
さて、そんな新生「青春18きっぷ」であるが、その使い勝手はどうかと思い、さっそく使用してみた。普段は北海道を拠点としている筆者は、この年末年始、首都圏で過ごしており、往路は北海道・東北新幹線を利用して首都圏入りしたのに対して、復路は1万円の青春18きっぷ3日間用を使用することにした。当初の予定では2日分を使用し、1月3日朝に高崎駅7時11分発の水上行で出発し、新潟、秋田経由で青森入り。フェリーで函館に渡りそのまま札幌方面を目指す行程を考えていた。なお、普通に乗車券を購入した場合は、高崎→青森間(経由:上越線・信越・白新・羽越・奥羽)で10,340円、函館→札幌間(経由:函館線)で5,940円であることから、青森まで行くだけで元が取れる計算だった。そして1日余る分については、1月2日から使用開始とすることで、筆者の記事(東邦亜鉛安中精錬所の停止で、「3月に運行終了」の安中貨物 工場夜景の中での入れ替え作業が印象的だった)にある安中貨物の見学に使うことにした。
このように、青春18きっぷを活用して復路の計画を立てたものの、筆者は思わぬトラブルに遭遇することになった。1月2日夜の段階で、青森県内の大雪の影響で、奥羽本線の大館―弘前間について1月3日の始発から少なくとも13時ころまでの運休とそれに伴うバス代行輸送も行われないことが発表された。当初は、1月3日に終日運休となっても1月4日の始発から動いてくれれば、仮に大館で足止めとなっても新青森駅から新幹線オプション券利用でリカバリーができることから、そのまま大館まで行くことを考えていた。
しかし、1月3日朝、高崎駅で改めて運行情報を調べたところ、奥羽本線の大館―弘前間が終日運休となっていたほか、青春18きっぷでは利用できないが旧東北本線ルートである青い森鉄道線の三沢―青森間でも始発からバス代行輸送のない運休が発表されていた。特に奥羽本線では、線路設備に被害が出ているという情報もあり、筆者はこのままでは運休が長期化しかねないと直感したことから、急遽、この日の行き先を仙台に変更し、高崎駅から上越線ではなく両毛線に乗り東北本線の小山駅を目指すことにした。
両毛線の車内で、仙台―苫小牧航路の空席状況を調べたところ、2等和室が4席だけ空いていたので、急遽予約し、仙台港から帰路に就くことを決めた。仙台港フェリーターミナルの最寄り駅は仙石線の中野栄駅となるが、若干時間に余裕があったことから、仙台駅からは仙石東北ラインの石巻行に乗り、仙石線の高城町駅で下車して中野栄駅に折り返すことにした。なお、筆者がフェリーに乗船してから改めて奥羽本線の運行情報を調べてみたところ、大館―弘前間は当面運休と発表されていた。
計画変更で元は取れたのか?
今回のルート変更では、高崎→中野栄間(経由:両毛・東北・高城町・仙石)の乗車券が6,930円、苫小牧からは2,860円相当の区間に乗車したほか、1月2日には安中に行くためにICカード利用で441円分相当の乗車をしたことから、その合計額は10,231円となりギリギリ元を取る形となった。しかし、高崎から新潟に向かい、そこで鉄道による北上を断念し、新潟から苫小牧航路を利用した場合には、高崎―新潟間の運賃は4,070円となることから元を取ることができなかった。
新しい「青春18きっぷ」の使い勝手については、1万円の3日間用であれば、運賃が6,050円となる東京―仙台間(経由:東北)など片道の運賃が5,000円を超える区間を3日間以内に往復する場合や、運賃が11,000円となる日本海沿岸まわりでの東京―青森間(経由:東北・高崎線・上越線・信越・白新・羽越・奥羽)など片道の運賃が10,000円を超える区間を3日間かけて乗り通す場合には、利用価値があると言えよう。
しかし、旅行途中で災害時など思わぬ事態で計画どおりに進まなくなった場合には、任意の5日間利用では1日分青春18きっぷの利用を取りやめてほかの日に使うなどの対応ができたが、現状の連続する期間利用では、乗れなくなった日の分も含めて有効期間が強制的に消化されてしまうことから元が取れなくなってしまうリスクも潜んでおり、その点には注意が必要だ。
(了)