函館本線「小樽―倶知安」で一部列車がH100形3両編成に! 閑散線区の「倶知安―長万部」も激しい混雑
小樽―倶知安間は一部の列車がH100形3両編成に
2024年も残りわずかとなり、函館本線の山線と呼ばれる小樽―長万部間では、インバウンド観光客も含めて大変な混雑となっている。こうしたことから、12月28日からは小樽―倶知安間で通常H100形2両編成で運行される一部の普通列車では、H100形を1両増結した3両編成での運行が始まった。なお、通常、この区間をH100形で運行される列車はワンマン運転が行われているが、3両編成の列車については車掌が乗務している。
ここ数年、冬の観光シーズンになると、山線のうち小樽―倶知安間については、地元利用者に加え押し寄せるインバウンド観光客で列車がすし詰め状態となることが常態化しており、昨年度の観光シーズンにはついに余市駅で乗客が乗り切れなくなる積み残しが発生した。こうしたことから、2024年2月には、午前中の一部の列車についてH100形2両編成からキハ201系3両編成に車両が増強され、冬の観光シーズンをしのぐ事態となっていた。
倶知安―長万部間でも激しい混雑
さらに今シーズンからは、倶知安―長万部間についても、混雑が常態化する事態となっているようだ。12月28日に小樽市内で筆者のオフ会を開催したときの話ではあるが、そのときに福岡県からはるばる山線経由で小樽入りしてくれた参加者の方が、長万部駅を13時9分に発車する倶知安行に乗車したときの様子を教えてくれた。
長万部駅からはH100形1両編成の列車に大型のキャリーケースなどを抱えた100名以上の乗客が乗り倶知安駅まで1時間半にわたってすし詰め状態での移動を強いられたという。
この列車には、函館駅を10時45分に発車する特急北斗9号が接続するが、長万部駅では1時間15分の待ち時間があるにもかかわらず、多くの乗客がこの列車を利用していたという。100名以上もの乗客が長万部駅でいったん途中下車することになったため、長万部駅舎には乗客が収まりきらず、一部の乗客は駅前にある「かにめし本舗かなや」の休憩スペースを利用して列車を待つことになっていたという。
筆者はこのとき、この参加者の方と倶知安駅で合流して小樽まで向かったのであるが、倶知安駅も待合室の椅子が撤去されており、椅子が撤去された部分には床上に整列スペースを示す黄色いラインが引かれていたことから、このシーズンの倶知安駅での混雑ぶりもうかがい知ることができた。
行政側の鉄道廃止の主張は破綻している
函館本線の山線と呼ばれる長万部―小樽間140.2kmについては、北海道新幹線の札幌延伸に伴いJR北海道から経営分離されることが確定しており、北海道庁が主導する並行在来線対策協議会の場において廃止の方針が強引に決定された。北海道新幹線の札幌延伸については、トンネル工事などの遅れで開業見通しが2038年ころになりそうであることは筆者の記事(北海道新幹線の札幌延伸開業は2038年度へ! 函館本線山線の廃止は白紙撤回し、活用方策を再検討すべき)で詳しく触れているが、並行在来線については問題が先送りとなりそうだ。
山線の廃止を決めた協議会は、地元のバス会社が呼ばれることがなく、かつ住民の声も反映されない密室協議であった。地元のバス会社は、並行在来線の廃止については報道発表で初めてその内容を知ったといい、昨今、深刻化するバスドライバー不足の問題から、地元バス会社は鉄道代替バスの引き受けに難色を示していることなどから、協議が泥沼化し迷走中だ。
しかし、倶知安町は、新幹線新駅整備に使用することを理由に山線の2025年での廃止を主張しており、倶知安町の主張は支離滅裂で完全に破綻している。鉄道代替バスの確保ができない以上、この鉄道を廃止してしまえば、地域住民の足はおろか、観光客にとってのアクセス手段も失うことになることから、地域経済に混乱を招く結果になりかねない。
さらに、山線廃止を決めた北海道庁主導の協議会では、「あらゆる手立てを講じたとしても大幅な収支状況の改善を見込めない」ことも廃止の理由として挙げていたが、倶知安―長万部間でさえ混雑が常態化しているこの状況では、むしろ特急列車の運行なども含めて伸びしろがあるといえる状態であり、北海道庁の認識は現場の実態と乖離していると言っても過言ではない。
(了)