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私たちは、「悩みなどなくても、心の病(精神病)になる」という事実を、どう考えればいいのか?

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

今日の記事は、昨日の記事【人は何故こころ病むのか?】の続きです。

「心の病は、悩みやストレスから発症する」というのは、多くの人が誤解している大きな間違いです。ストレスとは無縁な生活をしていても精神的にタフな人でも、なる時には心の病になってしまいます。それが、心の病の興味深い特徴です。

たとえば、外因性精神障害という心の病があります。
これは、身体的基盤を有する精神障害で、器質性精神障害や脳炎や脳腫瘍やパーキンソン病、アルツハイマー、症状精神病、中毒性精神障害、痴呆症などがそれらにあたります。

器質性精神障害とは、感染・外傷・腫瘍・血管損傷などを原因とした心の病のことです。症状精神病とは、脳以外の身体疾患を基礎とする脳の機能障害によって起こる心の病のことで、悪性貧血・全身感染症・代謝栄養障害・肝疾患・腎疾患・甲状腺機能低下などの内分泌疾患、ステロイド剤などの医薬品による精神障害などが、これにあたります。中毒性精神障害とは、アルコール中毒・薬物中毒のことです。
ちなみに、痴呆症とは、物忘れがひどい病気ではありません。痴呆症は物を覚えられないという病気です。それが証拠に痴呆症の人は、昔の出来事をよく覚えていて、それを語ったりします。
外因性精神障害とは、外から原因がわかるという意味で、それで外因性精神障害と名付けられています。

続いて、ストレスや悩みに関係なく、発症する心の病として、内因性精神障害というのものがあります。これは、脳内の神経化学伝達物質の異常によって引き起こされる病気で、うつ病双極性障害統合失調症がこれにあたります。
ちなみに、双極性障害は、以前は躁うつ病と呼ばれていました。
統合失調症は、以前は精神分裂病と呼ばれていました。

如何でしょう?
うつ病や双極性障害や統合失調は、ストレスや悩みがなくても発症する可能性があるというのは、大きな驚きなのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、
悩みやストレスから生じるこころの病をノイローゼ
悩みやストレスとは関係なく発症するこころの病を精神病と言います。

続いて、統合失調症という、心の病についてご説明します。
統合失調症には、興奮型・破瓜型・妄想型があります。
興奮型の患者は、興奮して暴れたり大きな声を出したりすることが多いです。
破瓜型の患者は、感情をなくしたようです。壁の一点をじっと見続けたりします。
妄想型の患者は、妄想に取りつかれます。誰かが自分の部屋に盗聴器を仕掛けているなどという妄想を抱くことが多いです。

世の中には、統合失調症の方のことをクルクルパーだと思ってらっしゃる方がいますが、それは誤りです。多くの統合失調症の方は、統合失調症という心の病を抱えた普通の人です。たとえば、妄想型の統合失調症の患者さんは、おかしな妄想を持っていますが、自身が抱えている妄想以外に関しては、ごくごく普通なことが多いです。スーパーに行って買い物して、お金を支払って、お釣りをきちんと貰って、家にちゃんと帰って来ます。
また統合失調症の方に対して、彼らは犯罪を起こす恐ろしい人だという印象を持ってらっしゃる方がいますが、それも誤りです。こころの病を抱えてらっしゃる方は、統合失調症の患者さんを含め、犯罪を起こす確率は、健常者より低いというのが事実です。

続いて、うつ病という心の病についてご説明します。
うつ病の患者さんは、憂鬱な気分を抱え、興味や喜びの気持ちを喪失し、食欲の異常や睡眠障害を引き起こすことが多いです。また、焦りやイライラする気持ちを持ってらっしゃる方も少なくありません。他には、疲れやすかったり、思考力や集中力を低下させていたりすることもあります。
またうつ病の方は、自死することが少なくないので、周囲の方は、気をつけて見ていなければなりません。うつ病の方は、「死にたい」等という生やさしい気持ちではなく、「死ななければならない、死ぬしかない」という強い気持ちを持っていることが多いので、本当に注意したいところです。

続いて、双極性障害は、「自分は何でも出来る」という元気な気分と鬱々とした気分を繰り返すという心の病です。こちらも統合失調症やうつ病と同じく脳の異常から生じる精神病です。双極性障害にはⅠ型とⅡ型があるのですが、Ⅰ型の患者さんは、元気な時はエネルギーに満ち溢れていて、とんでもないこと(例えば大きな借金をつくるほどの高い買い物をしたり等)をしがちなので、周囲の方は注意したいところです。

次にお薬の話ですが、ノイローゼの方は、お薬があまり効きません。環境を変えるか、事象の捉え方や考え方や性格を変えねば、なかなか良くはなっていきません。ノイローゼの方にとってお薬は、対症療法に過ぎません。
逆に、精神病の方には、比較的、お薬がよく効きます。脳内の神経化学伝達物質の調整をすれば、良くなっていくからです。精神病の方にとってお薬は、根本療法となります。ただ、精神病の方の中でも一部難治性の方はいらっしゃって、そういう方は、お薬を飲んでもなかなか良くはなりませんし、長期に渡ってお薬を飲む必要が生じます。

いっとき、うつは心の風邪だという言葉が流行りました。この言葉の意味は、「うつは誰もがなりうる病気であり、特別に珍しい病気ではない」という意味です。決して、「大した病気ではない」とか「放っておけば自然に治る」とかいう意味ではございませんので、どうぞそのあたりのことを勘違いなさらないようにしてください。

というわけで、今日は以上です。

今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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