台風1号の伊豆諸島通過と前線の影響で広い範囲で雨、南シナ海では台風2号に発達しそうな熱帯低気圧
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/nyomurayo/01779072/title-1717077350412.jpeg?exp=10800)
台風1号が伊豆諸島へ
日本の南を北東に進んでいる台風1号は、5月31日朝から昼前にかけて伊豆諸島に最も接近する見込みです(図1)。
![図1 台風1号の進路予報(5月30日21時)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/nyomurayo/01779072/image-1717077520010.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
台風1号の最大風速は20メートル、最大瞬間風速30メートルで、31日昼前には伊豆諸島近海で温帯低気圧に変わる見込みですが、勢力が強くないといっても台風は台風です。
台風という名がつく以上、大きな災害が発生する危険性があります。伊豆諸島では、明け方から昼前にかけて、うねりを伴った高波に警戒してください。
【追記(5月31日7時)】
台風1号は、5月31日未明に日本の南で温帯低気圧に変わりました。ただ、構造が変わったというだけで、広範囲で雨を降らせるということについては変わりがありません。また、波もすぐには低くなりませんので、引き続き注意が必要です。
台風1号の影響は伊豆諸島だけではありません。
台風1号の進行方向には前線が停滞しています(図2)。
![図2 台風1号と前線の雲(5月30日15時)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/nyomurayo/01779072/image-1717077596710.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
この前線が台風1号の接近に伴って活発化し、東日本の太平洋側では、朝の通勤・通学の時間帯に雷を伴った強い雨の所もある見込みです(図3)。
![図3 雨と風の分布予報(5月31日6時の予想)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/nyomurayo/01779072/image-1717078515547.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
また、東シナ海から別の前線がのびてくることから、5月31日は九州から東北まで太平洋側を中心に雨の見込みで、北海道や南西諸島も所々で雨が降るという、ほぼ全国的に雨の一日になりそうです。
台風の雨
台風が一番早く上陸したのは、昭和31年(1956年)の台風3号で、4月25日に鹿児島県大隅半島南部に上陸しました(表1)。
![表1 早い台風の上陸](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/nyomurayo/01779072/image-1717077891453.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
しかし、この台風3号は、勢力が弱く、大きな被害とはならなかったのですが、2番目に早い5月27日に上陸した昭和40年(1965年)の台風6号は大きな被害が発生しています。
この台風6号は、5月27日12時頃,房総半島に上陸し千葉市付近を通過して,同日13時には銚子の北約30kmの海上に達し,18時には温帯低気圧となってます。
しかし、走り梅雨で停滞していた前線を刺激し、西日本から東日本の太平洋側の広い範囲で大雨となり、死者・行方不明20人、浸水家屋3万6000棟などの大きな被害が発生しました。
台風による雨は、台風の渦が強まると中心付近の上昇気流が強まることで雨が強くなる「うず性降雨」と「地形性降雨」、「らせん状に台風を取り囲む降雨帯による雨」、「前線による雨」の4つに大別できます。
ここで、「台風のうず性降雨」というのは、台風の規模にもよりますが、一応中心から200キロから300キロの範囲で強く降っています。台風中心付近の渦が強まれば(最大風速が速くなれば)、それだけ中心付近の上昇気流が強まって水蒸気がさかんに雨粒となり、その結果として、強い雨が降ります。「風の強い台風ほど雨も多い」ということです。
また、「地形性降雨」とは、地形の起伏によって大気が強制上昇させられることにより、山の風上側に降る雨のことで、風速が速ければ速いほど、地形の傾きが急であればあるほど強い雨になります。一般に山岳地方の風上側では、平地に比べて2倍~3倍も降ることがあるのは、この地形性降雨のためです。
台風の上陸または接近により、この4つの降雨が重なって台風の雨となるのですが、このうち主たる雨であるうず性降雨や地形性降雨は、台風の進路が似ていると似た降り方をしますので、台風の降雨分布は、台風の進路が似ていると似た分布になります。
大災害の可能性が高くなるのは、梅雨期や秋に多い「前線による雨」で、台風から離れた場所でも大雨となりますので、台風と前線の組み合わせは油断できません。
昭和40年(1965年)の台風6号は、台風と前線という危険な組み合わせでした。
令和6年(2024年)の台風1号は上陸の可能性はほぼなくなっていますが、台風と前線という危険な組み合わせですので、最後まで油断しないで警戒してください。
遅い台風1号の発生
台風の統計が作られている昭和26年(1951年)以降、台風1号が一番遅く発生したのは、平成10年(1998年)の7月9日です。
今年、令和6年(2024年)は、5月26日にフィリピンで台風1号が発生しましたので、史上、7番目の遅さということになります(表2)。
![表2 台風の発生が遅い年](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/nyomurayo/01779072/image-1717077742647.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
台風1号の発生が一番遅かった平成10年(1998年)は、年間で発生した台風の数は16個と平年の26.1個よりかなり少なかったのですが、上陸した台風は4個と平年の2.9個より多くなっています。特に、台風7号と台風8号は、2日連続して近畿地方に上陸し、東海から四国東部にかけて大雨となり、大きな被害が発生しています。
台風1号の発生が遅かった平成10年(1998年)、平成28年(2016年)、昭和48年(1973年)、昭和58年(1983年)には共通点があります。それは、非常に強いエルニーニョ現象が終息した年ということです。
そして、今年、令和6年(2024年)も非常に強いエルニーニョ現象が終息した年です。
南シナ海の台風2号にも注意
台風1号の発生が遅かった令和6年(2024年)ですが、南シナ海で発生した熱帯低気圧が台風2号に発達する見込みです(図4)。
![図4 台風1号と南シナ海の熱帯低気圧の進路予報と海面水温(5月30日21時)](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/nyomurayo/01779072/image-1717078096981.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
南シナ海の熱帯低気圧が存在する海域は、海面水温が約30度と、台風が発達する目安となる27度を大きく上回っています。このため、台風2号に発達すると考えられているのです。
【追記(5月31日16時30分)】
気象庁は、5月31日15時に南シナ海の熱帯低気圧が台風2号に発達したと発表しました。
台風1号が発生したフィリピン近海も、海面水温が30度以上あり、発達して強い台風になったのですが、北上と共に海面水温が低くなり、風が弱まってきました。
台風1号の風による危険性は小さくなりましたが、雨による危険性が小さくなったわけではありません。
筆者は、過去に5月の台風について調べたことがあります(図5)。
![図5 台風の5月の平均経路と令和6年(2024年)の台風1号と台風になりそうな熱帯低気圧の位置](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/nyomurayo/01779072/image-1717078058441.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
それによると、令和6年(2024年)の台風1号のようにフィリピンから日本の南へ進むものや、台風になりそうな熱帯低気圧のように、南シナ海を北上して華南に上陸するものは珍しくないといえます。
現在、梅雨入りしているのは、沖縄・奄美地方だけですが、他の地方もまもなく梅雨入りです。
台風2号が発生したとして、華南に上陸し、その後に熱帯低気圧に変わる見込みです。そして、前線が停滞していると考えられている日本にやってきますが、台風であろうと、熱帯低気圧であろうと、多量の水蒸気を持っていることは同じです。
日本から離れている南シナ海の台風2号になりそうな熱帯低気圧ですが、今後の動向についての注意が必要です。
タイトル画像、図1、図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。
表1、表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。
図5の出典:「饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁」に筆者加筆。