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遅れている関東甲信地方等の梅雨入り 梅雨が来ないうちに夏が来る

饒村曜気象予報士
南下した前線の雲と移動性高気圧に伴う晴天(6月11日15時)

梅雨入り前の暑さ

 今年、令和6年(2024年)は、沖縄・奄美・九州南部・四国で梅雨入りしていますが、各地とも平年より遅い梅雨入りでした。

 また、6月11日までに九州北部・中国・近畿・東海・関東甲信・北陸が梅雨入りしていませんので、平年より遅い梅雨入りが確定しています(表)。

表 令和6年(2024年)の梅雨入り
表 令和6年(2024年)の梅雨入り

 そして、東北地方も、しばらくは梅雨入りしそうもありませんので、今年、令和6年(2024年)は、梅雨がないとされる北海道を除いて、全国で遅い梅雨入りになりそうです。

 6月11日は、前線が大きく南に下がり、南西諸島~九州南部以外は、晴れて気温が高くなっています(タイトル画像)。

 今年の夏の特徴として、夏の主役の太平洋高気圧の勢力が弱いために、前線がなかなか北上してきません。

 太平洋高気圧が弱くても、大陸からの高気圧におおわれることが多く、強い日射等で、春先から気温が高い状態が続き、ときおり、季節外れの暑さとなっています。

 令和6年(2024年)は、ゴールデンウィークのときに記録的な暑さとなり、5月5日に最高気温が25度以上の夏日を観測したのが524地点(気温を観測している全国914地点の約57パーセント)、最高気温が30度以上の真夏日が116地点(約13パーセント)もありました。

 その後、ゴールデンウィークの頃の記録を大きく超えることはなかったのですが、6月11日は夏日が719地点(約79パーセント)と、真夏日が172地点(約19パーセント)と、ともに今年最多で、真夏並みに気温が上昇しています(図1)。 

図1 全国の真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(6月12日以降は予想)
図1 全国の真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(6月12日以降は予想)

 そして、6月12日は真夏日300地点(33パーセント)、夏日792地点(87パーセント)と、ともに今年の最多を更新しそうです。

 6月13日も真夏日346地点(38パーセント)と、真夏日の今年最多を、さらに更新しそうです。

 梅雨はどこにいった、あるいは、梅雨が来ないうちに夏が来るという雰囲気になると思われます。

関東甲信地方の梅雨入り

 ウェザーマップは16日先までの天気予報を発表していますが、これによると、東京では、信頼度が低いDやEが多く含まれる予報ですが、6月17日まで白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)が、6月19日までお日様マーク(晴れ)があります(図2)。

図2 東京の16日先までの天気予報
図2 東京の16日先までの天気予報

 梅雨入りの平年は、関東甲信地方では6月7日ですが、東京の16日先までの予報をみると、黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)や傘マーク(雨)が続く6月20日くらいまでは梅雨入りがなさそうです。

 昭和26年(1951年)から昨年までの73年間で、関東甲信地方で梅雨入りが一番多かったのは6月上旬の後半(6日から10日)ですが、平成13年(2001年)以降に限っても、6月上旬の後半が一番多くなっています(図3)。

図3 関東甲信地方の昭和26年(1951年)以降の梅雨入り
図3 関東甲信地方の昭和26年(1951年)以降の梅雨入り

 関東甲信地方で、梅雨入りが一番遅かったのは、平成19年(2007年)の6月22日です。

 6月17日の天気予報が雨に変われば、今週末の梅雨入りの可能性がありますが、ここで梅雨入りしないと、これまでの最遅記録に迫る可能性があります。

 ただ、関東甲信地方の梅雨入りが遅くなる、あるいは、梅雨期間が短くなるといっても、降水量が少なくなるとは一概に言えません。

 関東甲信地方で遅い梅雨入りだった1位から6位を調べると、そのうち4つまでは梅雨期間の雨量が平年より多くなっています。

関東甲信地方の遅い梅雨入り(1位から6位)
1位 6月22日(2007年)(梅雨期間降水量:111パーセント)
   6月22日(1967年)(梅雨期間降水量:86パーセント)
3位 6月19日(1960年)(梅雨期間降水量:52パーセント)
4位 6月17日(1999年)(梅雨期間降水量:124パーセント)
   6月17日(1982年)(梅雨期間降水量:101パーセント)
   6月17日(1969年)(梅雨期間降水量:113パーセント)

 短期集中型の雨に注意が必要です。

 今年、東京で一番暑かったのは、5月24日と6月11日の29.0度ですから、まだ真夏日は観測していません。

 とはいえ、6月11日までに、すでに34日の夏日を観測しています。

 暑さ対策に紫外線対策、今年は例年より早く始める必要があります。

日本付近への張り出しが弱い太平洋高気圧

 今年は、平成29年(2017年)に似ているのではないかと筆者は思っています。

 平成29年(2017年)は、太平洋高気圧の北への張り出しが弱く、関東甲信地方を除いて、軒並み平年より遅い梅雨入りでした。

 しかし、梅雨期間中の雨量は多く、「平成29年7月豪雨」と気象庁が命名するほどの豪雨が発生しています。

 線状降水帯によって島根・福岡・大分の各県で初の大雨特別警報が発表になるなど、西日本を中心に大災害が発生しました。

 全国的に梅雨入りが遅い年といっても、梅雨期の豪雨災害が無いわけではありません。

 現在、エルニーニョ現象が終わり、ラニーニャ現象に向かっていると気象庁が発表しています。

図4 太平洋東部赤道域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値(6月10日に気象庁が発表)
図4 太平洋東部赤道域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値(6月10日に気象庁が発表)

 東部太平洋赤道域の海面水温が高くなることで太平洋高気圧の日本付近への張り出しが弱くなるエルニーニョ現象、逆に東部太平洋赤道域の海面水温が低くなることで太平洋高気圧の張り出しが強くなるラニーニャ現象、今年の夏は、どちらの影響が強く出るか、予測が難しい年になりそうです。

 最新情報に注意してください。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図4の出典:気象庁ホームページに筆者加筆。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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