Yahoo!ニュース

許せないのはどっち?「カネ目当ての女」と「カラダ目当ての男」

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

男性が許せないのは?

タイトルの通り、「カネ目当ての女」と「カラダ目当ての男」、許せないのはどっち?という質問があったらなんと答えるだろうか。

男性は「カネ目当ての女」と答えて、女性は「カラダ目当ての男」と全員が答えるかというと決してそうではない。男女でも違いはあるが、年代や配偶関係によっても多少の違いは出る。

まず、男性から見ると、当然「カネ目当ての女」が許せない割合が高い。年代や配偶関係と問わず、40-50%で一定である。「カラダ目当ての男」が許せないというのは10%にも満たない。

しかし、唯一、20代の未婚男性だけは「カラダ目当ての男」が許せない割合が2割を超えている。これは、多分、「カラダ目当ての男」がのさばることによって、自分にデメリットが生じる場合もあるからだろう。

(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(C)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

とはいえ、この20代未婚男性をのぞけば、概ね男性の回答はほぼ一致しているといえる。

もし、自分が受けた過去の経験から回答が導き出されているとするならば、世の男性の半数近くは「カネ目当ての女」から何かしらの実害を受けているのかもしれない。

女性が許せないのは?

一方で、女性はどうだろう。予想通り、男性とは真逆の結果となる。

「カラダ目当ての男」が許せない女性は、未既婚ともに20代では50%を超える。これも、男性同様、自分の経験上、若いうちは「カラダ目当ての男」による実害を受けた経験が多いのかもしれない。

しかし、男性と違うのは、女性の場合は年代によって大きく変化している点である。「カラダ目当ての男」が許せない割合も、30代、40代となるにしたがって、その割合は減る。50代の既婚女性にいたっては、グラフ上ではわかりにくいかもしれないが、微差であるものの「カネ目当ての女」の方が許せないが上回ってしまうのだ。

これはこれで、既婚女性にとっては、年代があがるごとにケアすべきリスクの内容が変わるということだろう。既婚女性にとって、もし夫にカネ目当てで近づいてくる女がいたならば、それは自分達の家庭の経済環境が壊されてしまうかもしれないからだ。もしくは、夫はどうでもよくて、息子が変な女に騙されやしないかと心配する親心かもしれない。

しかし、そう考えると、50代既婚男性にも娘がいる可能性はあるはずだ。変な男につかまって娘が泣く羽目になることはあまり父親として心配ではないのだろうか。

2021年の出生動向基本調査では、未婚男女が結婚相手に求める条件が大きく変わった。

写真:アフロ

1997年対比で、女性の条件として「男性の容姿」をあげる割合が14ポイントも増加し、逆に、男性の条件としての「女性の経済力」をあげる割合が17ポイントも増えた。時代や環境変化によって、求められるものが変わるように、許せるもの、許せないものも変わるのだろう。

もし、冒頭の質問の選択肢に「カネ目当ての男」と「カラダ目当ての女」があれば、また違う結果が出たのかもしれない。

価値観は経験で変わる

「こんなくだらない質問が何の役に立つんだ?」と思う人もいると思うが、役に立つか立たないかは、神ではないのだから結果を見ないとわからない。調査する前に予想していた仮説通りの結果が出る場合もあれば、違う場合もある。

違う結果が出た場合は、なぜそういう結果が出たのかという新しい問いがそこに生まれる。

経済力や容姿の問題は、恋愛や結婚に密接に結びつくものである以上、ある人にとっては「くだらない」問題でも別に構わないが、別の人にとっては深刻な問題である場合もあるのである。

写真:アフロ

人の価値観というものは経験によって決定されていく。経験したことがあることとないこととでは、その与える影響は大きく違うものである。特に、失敗や痛みを伴う経験の有無は、その後の価値観を大きく左右するだろう。

この結果をベースにまた別のクロス集計をすると、新たな視点が加えられるかもしれない、と思ってやっている。

そして、性欲も金銭欲も根源的に人間に内包されているものであり、否定できるものではないし、ないものとして扱うべきものでもないだろう。

また、許せないもの、許せるものの個々人の基準を作っているものは必ずしも個人の経験だけではなく、他者の目や世の中の空気も影響を及ぼす視点も忘れてはいけないことだと思う。

関連記事

結局、結婚は「愛なのか?金なのか?」未婚と既婚の男女年代別の意識の違い

結婚相手に求める条件に異変~男の結婚は「経済力」だけでなく「容姿」重視へ

恋愛相手や配偶者に嘘をついている割合からわかる「恋愛上手は嘘上手」

-

※記事内グラフの商用無断転載は固くお断りします。

※記事の引用は歓迎しますが、著者名と出典記載(当記事URLなど)をお願いします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

荒川和久の最近の記事