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関東~東海は静電気の季節に突入 多くの地方は年明けから

饒村曜気象予報士
ドアノブを握ろうとして静電気に痛がる女性(提供:Mono_tadanoe/イメージマート)

静電気の季節

 冬になると、ドアノブに触った時など、突然パチッとくる静電気の衝撃を経験することが多くなります(タイトル画像参照)。

 これは、物質と物質がこすれたり、衝突する時などに、物質を作っている原子が持っているプラスとマイナスの電気のバランスが少し崩れ、プラスの電気を持つ物質と、マイナスの電気を持っている物質に分かれます。

 このような状態が静電気です。

 発達した積乱雲の中では、雪の結晶やあられなどの粒子が激しく衝突して静電気が発生し、プラスの電気を持った軽い粒子が雲の上部にたまり、マイナスの電気を持った重い粒子が雲の下部にたまっています。

 落雷は、このたまった静電気の放出ですので、「パチッとくる静電気の衝撃」は、極めて小さい落雷です。

 服をぬいだり、着ている服がなにかとこすれあったり、様々な理由で人間の体には静電気がたまっています。

 通常は、体に静電気がたまっても、空気中の電気を通しやすい水分を通して少しずつ放電されていきますが、乾燥してくると、静電気がどんどん体内にたまってくるので、ドアノブなどに触った時に静電気が放出され、痛みを感じたりします。

 静電気が発生しやすい条件は湿度20%以下、気温25度以下といわれています。

 このため、一般的に、夏は冬に比べて湿度が高く、気温も高くなるため、静電気の発生が少ないということができますが、地方によって差があります。

関東~東海は静電気の季節

 気象観測から、静電気が起きやすい月を求めるのは、その人の体質まで考える必要があり、非常に大変です。

 ここでは、便宜的に、最小湿度が20パーセント以下の日があった月を「乾燥した月」、最高気温が25度に達しなかった月を「寒い月」とし、乾燥した月のうち寒い月を「静電気が発生しやすい月」としてみました。

 その結果、関東から東海地方は、11月から「静電気が発生しやすい」となっています(図)。

図 各地の静電気が発生しやすい月(令和元年(2019年)~令和2年(2020年))
図 各地の静電気が発生しやすい月(令和元年(2019年)~令和2年(2020年))

 その他の地方の「静電気が発生しやすい月」は年始になってからですが、新潟など、日本海側の地方の真冬は湿度が高いために「静電気が発生しやすい月」は早春になってからです。

 また、沖縄は、一年を通して湿度も、気温も高いことから、静電気が発生しにくいといえるでしょう。

人工的に作り出した環境の中で生活

 静電気に関しては、私たちがエアコンなど、人工的に作り出した環境の中で生活していることを忘れるわけにはゆきません。

 冬であれば、一般的に外気より室内の気温が高いと考えられます。

 夏の場合が外気は湿っていても、エアコンが効いていると、室内では気温が下がり、乾燥するために静電気が発生しやすい環境が変わっています。

 一般に、夏は冬に比べて気温が高く、湿度が高いために帯電量は少なく、静電気も起きにくいですが、エアコンが効いている場合には、静電気がおきることがあります。

 静電気が発生すると痛みだけでなく、体にも悪影響を及ぼしかねません。

 静電気の季節に入ってきましたので、部屋を加湿したり、肌に保湿材(乳液など)を付けたりして、湿度に気を付けましょう。

 また、綿などの天然繊維の衣服を身に着けることも対策になります。

 天然繊維は、化学繊維に比べて吸湿性が高いからです。

 さらに、静電気防止スプレーを衣類にかけておくことで、すでに衣類にたまっている静電気を外に逃がす効果や、静電気の発生を抑える効果が期待できます。

図の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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