「年収1千万円の新入社員」は日本企業に定着するのか
新卒の売り手市場が過熱する中、今年に入り、新人の一律の初任給を大きく見直す動きが相次いでいます。入社3年内で最大3千万円を支払う制度の導入を決めたユニクロや、年収1千万円のエグゼクティブ枠の募集を開始したくら寿司が代表です。
つい先日はNECも年収1千万円超の採用枠新設をリリースし話題となりました。
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こうした動きの背景にあるのは、終身雇用の形骸化です。
「将来の出世」では誰も振り向かなくまった
日本企業は長く新卒一括採用を採用し、新人には一律の初任給を適用してきました。それは組織内で最も低い水準であり、毎年少しづつ昇給して40歳を超えるころには生産性以上に受け取れ、定年までの期間を通じて元が取れるという仕組みです。
ただし、少なくない数の企業が早期退職を実施するなど、はたして本当に将来報われるのか怪しいと考える若手が増えつつあります。
最近ではキャリアのまったくことなる職種に配置転換させた上で2割以上の大幅な賃下げを行う企業も増えています。学生の“終身雇用不信”は強まるばかりです。
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余談ですが、先日、東大京大生の人気就職ランキング上位を外資系企業が占めていることが話題となりました。こうした企業は“出世払い”ではなく、20代からきっちりパフォーマンスに応じた年俸を払うという共通点があります。
日本企業が外資に負けずにそうしたハイスペック人材を確保するには、同様に若いうちからしっかり働きに応じて報酬を支払う制度を導入するしかありません。これが、大手で特別枠が導入されはじめた理由です。
一千万円に上げるだけでは失敗する
とはいえ、年功序列にどっぷりクビまで漬かってきた職場に年収1千万円のハイスペックな新人を配属しても、彼が組織を変えてくれるわけではありません。そのままだと恐らく彼は何も実現しないまま3年以内に転職するだけでしょう。
ハイスペック人材に活躍してもらうには、それを可能とするような人事制度改革を合わせて実施する必要があります。
年功賃金を見直し、果たす職責に応じた役割給に見直す。その見直しを毎年実施し、勤続年数によらずに処遇が柔軟に上下する制度を導入する。一言でいうなら、新人だけではなく組織全体がリターンを目指しリスクをとれるような体質に生まれ変わることです。
そうした改革を着実に実施できるかどうかで、冒頭のハイスペック人材採用企業の明暗は分かれることになるでしょう。