Yahoo!ニュース

報徳が大阪桐蔭に2年連続勝利! 紫紺の優勝旗の行方やいかに? センバツ準決勝を展望する

森本栄浩毎日放送アナウンサー
報徳は今朝丸の好投で大阪桐蔭に2年連続の勝利。優勝戦線に躍り出た(筆者撮影)

 センバツは準々決勝が終わり、4強が出揃った。注目の近畿のライバル対決は、報徳学園(兵庫)が大阪桐蔭に2年連続の勝利で準決勝進出を決め、優勝戦線に躍り出た。

報徳は今朝丸が力投し、秋の雪辱を果たす

 降り出した雨の中、初回の攻防が明暗を分けた。ともに先頭打者が出塁したが、報徳は先発の今朝丸裕喜(3年=タイトル写真)が中軸を力でねじ伏せたのに対し、大阪桐蔭先発の平嶋桂知(3年)は、連続四球と味方のバント処理ミスからピンチを広げ2点を失った。秋の近畿大会と同じ両先発だったが、今朝丸の成長が半端なく、大阪桐蔭につけ入るスキを与えない。大阪桐蔭もようやく8回に1点を返したが、その裏に失策絡みで決定的な2点を奪われ、4-1で報徳が秋の雪辱を果たした。最後まで主導権を渡さなかった報徳の完勝と言える。

守備の破綻が痛かった大阪桐蔭

 今チームスタート時からの課題だった守備の破綻から押し切られた大阪桐蔭の西谷浩一監督(54)は、「(試合に)いい入りができなかった。大事なところで守り切れなかった。課題の詰まった試合だった」と振り返った。今朝丸の速球に力負けした打線については、「もっと変化球が多いかと思ったが、彼のような投手を攻略しないといけなかった」と完敗を認めた。低反発バットの影響もあって、秋のような打撃は期待薄だったが、報徳が要所で好守を見せただけに、守備力の差が勝敗を分けたように感じた。

報徳の大角監督は今朝丸に合格点

 一方、報徳の大角健二監督(43)は「いいタマを投げる投手と勝てる投手は違う。今朝丸には『勝てる投手にならないとエースではない』と言い続けてきた。大事なところでギアを上げられるようになった」と、一皮むけた今朝丸に合格点を与えた。今朝丸自身は「ストレートの質が良く、空振りが取れた」と話し、自慢の直球でねじ伏せられて満足そうだった。昨春は大阪桐蔭に勝ちながら優勝を逃していて、「これで日本一に一歩、近づいたと思う」と自信をのぞかせた。

準決勝は星稜-健大高崎、中央学院-報徳の顔合わせに

 休養日を挟んで土日に準決勝、決勝が行われる。前半のブロックは有力校が勝ち残った。秋の神宮大会優勝の星稜(石川)は、県勢初のセンバツ4強入りを果たし、2年生の左右の好投手を擁する健大高崎(群馬)とぶつかる。広陵(広島)が有力視されたブロックからは、競り合いに強い中央学院(千葉)が抜け出し、最激戦ブロックを勝ち抜いた報徳に挑む。

控え選手が成長した星稜

 星稜は準々決勝で2年生右腕の戸田慶星(けいた)が、阿南光(徳島)を「これまでの野球人生で最高」と言う2安打完封劇で圧倒した。

星稜のエース・佐宗は「戸田はすごいピッチングだった。(準決勝は)全力でチームに貢献したい」と、後輩の活躍に刺激を受けていた(3月14日、筆者撮影)
星稜のエース・佐宗は「戸田はすごいピッチングだった。(準決勝は)全力でチームに貢献したい」と、後輩の活躍に刺激を受けていた(3月14日、筆者撮影)

 エース左腕の佐宗翼(3年)を温存でき、万全の状態で準決勝のマウンドに送れるだろう。山下智将(としまさ)監督(42)は「いろんな人たちの思いを背負って戦っている」と、震災で打ちひしがれた故郷を思いやった。下位でしぶとい打撃を見せる中島幹大(3年)や初戦で決勝打を放った東汰生(ひがし・たいせい=3年)ら控え選手の活躍が目立ち、「冬に切磋琢磨した成果」と山下監督を喜ばせている。

エースに緊急事態の健大は打線が上向き

 対する健大高崎は、青柳博文監督(51)が「創部以来最強」と自信を持つ確かなチーム力で勝ち上がった。左腕・佐藤龍月(りゅうが)と右腕・石垣元気の2年生コンビが抜群の安定感で、3試合で失点1と強固なディフェンス力が看板だ。ただエースの佐藤に、指先のマメがめくれる緊急事態が発生。したがって石垣の先発も考えられるが、佐藤と比べると制球に不安が残る。上位打線が好調で、4番の箱山遥人(3年=主将)にも長打が飛び出すなど投打が噛み合ってきただけに、チームの動揺が懸念される。お互い、機動力を絡めた攻撃が特長で、守備の不安もない。星稜が若い投手に対し、試合巧者ぶりを発揮するか、健大の勢いが勝るか、終盤まで目の離せない攻防が続くだろう。

勝ちパターン持つ中央学院は1番打者に注目

 中央学院は、3試合とも遊撃手の颯佐心汰(さっさ・ここた=3年)が終盤に救援でマウンドに上がり、逃げ切ってきた。気力、体力とも充実した中心選手で、躍進の原動力となっている。エース番号を背負う長身右腕の蔵並龍之介(3年)は準々決勝で137球を投げているため、先発は横手投げの臼井夕馬(3年)か。まずはリードした状態で颯佐にバトンを渡したい。攻撃では1番の青木勝吾(3年)が絶好調で、好機にも強い。出塁すれば足も使えるため、徹底マークが必要だろう。

報徳は昨年の悔しさ晴らすか

 大敵を倒した報徳は、4校で最もチーム状態がいい。看板の投手陣が期待通りの活躍で、大角監督のマネジメントを楽にしている。エース番号を背負う間木歩(3年=主将)は当然、今朝丸の力投に刺激を受けているだろうし、2回戦で投げた左腕の伊藤功真(3年)も成長した姿を見せた。3人が揃って好調なだけに、計算が立つ。攻撃陣は4番の齋藤佑征(ゆうと=3年)が打ちまくり、好機で走者を還している。また投手陣を支える守りも崩れる心配がなく、試合運びにスキがない。昨年、大阪桐蔭を倒しながら優勝を逃した悔しさを知るだけに、最後の瞬間まで集中力が切れることはあるまい。

節目の大会にふさわしいフィナーレを

 今大会は天候に泣かされている。開幕から真冬のような寒さで、強風に横なぐりの雨の日、外野手の落球で試合が決したのは残念だった。土日は気温も上がり、ベストコンディションで最後の3試合が行われそうだ。甲子園100年、センバツ100年の節目にふさわしいフィナーレを期待している。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

森本栄浩の最近の記事