2校だけで代表の9割を独占!半世紀以上続く宿命のライバル「天理-智弁」 智弁の気合が天理を上回った!
ライバル対決で盛り上がる夏の地方大会は少なくない。大阪桐蔭と履正社の「大阪2強」や仙台育英と東北の「宮城2強」。広陵と広島商の「広島2強」は過去のものとなった感が否めないが、半世紀以上にわたってしのぎを削るライバル関係が、奈良の天理と智弁学園である。
1県1校以降、天理と智弁で9割以上、代表を独占
1県1校となった1978(昭和53)年の60回大会以降、昨年までの45大会で、天理が22回、智弁が19回、奈良代表になっている。残る4回は郡山2回、桜井、奈良大付が1回ずつで、2強のいずれかが91%の確率で奈良大会を制している。ここまで特定の2校が代表を独占する地区は、全国どこを探しても見当たらない。当然、お互いが「(天理に、智弁に)勝たないと甲子園には行けない」と思っている。
春にミスで負けた智弁は気合十分
今チームは春に直接対決があって、天理が智弁のミスに乗じて8-2で快勝していた。そのため今夏の智弁はノーシードで、準々決勝での早期対決が実現した。試合は、春の苦い経験もあってか、智弁が立ち上がりから気合十分で優勢に試合を進める。しかし天理も試合巧者ぶりを発揮して、5回に2死3塁から、2番・赤埴幸輝(2年)がしぶとく打ち返し、2-2の同点で後半に入るという期待通りの熱戦となった。
智弁がスクイズで勝ち越し、長打で突き放す
智弁は6回表、天理バッテリーのミスなどから1死3塁の好機を迎えると、7番・山崎光留(ひかる=3年)がスクイズ敢行。
これが鮮やかに決まって天理先発の麻田悠介(3年)を降板させると、8回には2番手の下坊大陸(りく=2年)を攻めて追加点の好機を迎えた。ここで天理の藤原忠理監督(58)は、主将の松本大和(3年)を救援させる。するとまたも山崎が、右翼線を破る2点適時三塁打を放ち、5-2と天理を突き放した。
智弁のエースは足がつるも、気合で投げ抜く
諦めない天理はその裏、智弁先発の田近楓雅(3年)から、2死満塁の絶好機。7回に足がつるアクシデントにもめげず続投を志願したエースが、渾身の力で天理の6番・大谷汰一(3年)を打ち取って、3点差を守り抜いた。
田近は春は登板しておらず、「今日の試合に懸けていた」と気合十分で、小坂将商監督(47)も「足がつって心配したが、本人が『いける』と言うんで。気持ちが入っていた」と田近を絶賛した。それでも、天理という宿敵を倒したあとの気の緩みが気がかりなようで「ここからが難しい」と、準決勝の郡山戦に向け、まったく安堵した様子を見せなかった。
両監督がリスペクトの丁寧な挨拶を交わす
一方、天理の藤原監督は「春はうまく打線が機能したが、今回はウチがミスから失点した。相手のプレッシャーもあった」と、智弁の気合に脱帽した様子。
1月に就任したばかりで、「懸命に私の野球を理解しようとしてくれた」と選手たちをねぎらい、「若いチームなので、これをいい経験にしてくれたら」と話して、次チームに期待を込めていた。インタビューを終えて引き上げる際、若い小坂監督の方から歩み寄って、藤原監督と丁寧に挨拶を交わしていた。お互いがリスペクトの気持ちを感じ合えたことは、想像に難くない。