あの近江が負けた! 甲子園未経験の綾羽にまさかのコールド負けで、6大会連続の出場を逃す!
あの近江が負けた。しかも2-9の7回コールドで。夏の滋賀大会5連覇中で、中止だった4年前の独自大会も優勝していたので、夏の滋賀での敗戦は実に7年ぶりとなる。相手の綾羽(あやは)は甲子園未経験で、公式戦で近江に勝ったことは一度もなかった。
スタメン大幅変更も初回から劣勢に
近江の多賀章仁監督(64)は、スタメンに下級生を多く起用した。先発は2年生左腕の堀一輝(2年)で、準々決勝の伊香戦で決勝打を放った強打の箕浦太士(1年)も、今大会初スタメンで5番に入った。伊香に0-4からの逆転勝ちをした「勢いを止めたくなかった」(多賀監督)という積極采配だったが、堀が先頭打者に四球を与えるとあっと言う間に崩れ、1死しか取れずに左腕・河越大輝(3年)を救援させた。
綾羽が幸運な安打から突き放す
河越はスクイズを鮮やかなグラブトスから併殺に仕留めて2点で切り抜けると、近江もすぐさま箕浦が押し出し四球で1点を返した。その後、試合は淡々と進んだが、5回に綾羽が9番・北川陽聖(2年)の、ファウルになりそうな当たり損ねの打球が、スパイク跡で向きが変わりフェアグラウンドに戻る幸運な安打から好機を迎える。
ここで2番・北邑流星(3年)が、左翼左へライナーの安打。これを左翼手が取り損ねて後逸(記録は三塁打)する間に、2者が生還して、4-1と綾羽が突き放した。
近江は反撃点が少なく、7回に大量失点
しかし近江もさすがで、取られたら取り返す。河越の代打・森島海良(3年)の安打から上位に回し、1点を返した。しかし近江の反撃は複数点とはならず、「初回も5回も、せめて追いついていれば」と多賀監督は悔やんだが、伊香戦で好救援した北川凌佑(3年)が7回につかまり、大量5失点。7点差をつけられたその裏も、綾羽のエース・武村春輝(3年)に抑えられ、まさかのコールドで6大会連続出場は夢と消えた。
エース不在で投手起用に悪戦苦闘
多賀監督は、「3年生に申し訳ない。(負けられないという)プレッシャーはあったと思う。今大会は常に総力戦で、いつも試練の試合と思っていたが、ウチがチャレンジャーになり切れなかった」と振り返り、春の県大会でヒジを痛めたエース・西山恒誠(3年)不在の影響についても、「結果的にはそうなった」と、声を振り絞った。複数投手を絶妙に使い回す多賀監督の手腕をもってしても、今大会の投手起用は悪戦苦闘の連続だった。センバツで初戦敗退ながら14三振を奪った県ナンバーワン投手・西山の存在が、いかに大きかったかを物語る。
綾羽の監督の恩師は近江初出場時の監督
一方、初の甲子園へ王手をかけた綾羽は、春の県大会優勝はあるが、ほとんどが県内の選手で寮もなく、近江や、決勝で当たる滋賀学園ほど恵まれた環境ではない。
率いる千代(ちしろ)純平監督(35)は、強化指定クラブとなった一期生の主将で、秋の近畿大会で前田健太(MLBタイガース)のPL学園(大阪)とも対戦経験がある。恩師の田中鉄也さん(故人)は43年前、近江を甲子園初出場に導いた監督で、病に倒れた田中さんから7年前にバトンを受けた。
恩師の墓前に吉報を届けられるか
千代監督は、「近江に何度もチャレンジして勝てなかったが、近江が甲子園で活躍してくれて、レベルアップできた」と、近江へのリスペクトを忘れなかった。これが高校野球だ。この日は近江の4投手に16安打を浴びせ、4盗塁も決めた。滋賀学園との決勝でも「勇気を持って攻めていきたい」と、攻撃野球を誓う。土曜日には「近江戦初勝利、甲子園初出場」を、恩師の墓前に報告するつもりだ。