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就活生は必見!その企業はホワイトかそれとも…?国がお墨付き「安全衛生優良企業」認定とは!?

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

採用面接解禁前の内定率が29.1%

就職活動の最前線では、2017年3月卒業予定の学生が6月1日から採用面接解禁となりました。都内ではリクルートスーツに身を包む学生が大変目立っています。今年の就活状況はどのようになっているのでしょう。

5月に実施された就職内定率調査によると5月1日時点の内定率はなんと29.1%と既にフライングしている企業が多数あるようです。因みに、前年(2016年3月卒)17.9%よりは上回っていますが、前々年(2015年3月卒)は58.9%であり、2008年からの過去データから見ると昨年の内定率は、異常に低かったことが伺えます。(図1)

(図1)出典:株式会社ディスコ(キャリタス就活2017学生モニター調査結果)
(図1)出典:株式会社ディスコ(キャリタス就活2017学生モニター調査結果)

就活のスケジュールは年々変更され長い歴史から見ても学生、企業、それを取り持つ大学双方にとって捉えどころがない状況が続いており、気の毒だとつくづく思います。今年の活動スケジュールですが、昨年は会社説明会の期間が5カ月間あったのに比べ3カ月間と短くなり、業界研究や企業研究に費やす時間が足りないといわれ、事前準備が整わないまま面接が始まってしまうといった状況のようです。(図2)

就活面接6月解禁なのに…「内定」もう5割(産経新聞 5月29日(日)配信)

(図2)出典:就職活動の日程(産経新聞)
(図2)出典:就職活動の日程(産経新聞)

「安全衛生優良企業公表制度」はホワイト企業の証

ところで、そんな就活生の熱視線を集める企業群があるのをご存知でしょうか?昨年、厚生労働省がスタートさせた「安全衛生優良企業公表制度」の認定を受けている企業がそれです。2016年5月末日現在で認定を受けている企業は全国で20社ありホワイト企業と言われているのです。「安全衛生優良企業公表制度」は、厚生労働省の労働基準局安全衛生部が担当しています。昨今のいわゆるブラック企業問題は大きな社会問題となっており、これを是正していく目的が大きく、コンセプト的には中小企業の採用活動に効果を発揮してもらいたいと厚生労働省は考えているようです。

とはいえ元々、労働安全衛生法に則した内容になっていますのでその厳しい基準をクリアした企業でないと認定は得られないものとなっています。

「安全衛生優良企業公表制度」を、簡単にお伝えすると労働者の安全や健康を確保するための対策に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を維持・改善しているとして、厚生労働省から認定を受けるものとされています。

そして、この認定を受けるためには、過去3年間労働安全衛生関連の重大な法違反がないことに加え、労働者の健康保持増進対策、メンタルヘルス対策、過重労働防止対策、安全管理などの積極的な取組を行っていることが求められます。

「安全衛生優良企業公表制度」(厚生労働省)

「安全衛生優良企業の紹介」(厚生労働省)

安全衛生優良企業 一覧(出典:非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構)
安全衛生優良企業 一覧(出典:非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構)

トヨタ自動車、東京海上日動なども既に取得

労働安全衛生法は、「職場における労働者の安全と健康を確保する」ことを目的に1972年労働基準法から分かれ施行されました。当時、産業界の反発はもの凄かったらしいですが、当時の産業界の重鎮が「人に幸福をもたらさない会社ならつぶしたほうがよい」と発言、「安全衛生は職場をあずかる者のモラルとしてやらなければならない」として定義されていったそうです。

各業界のリーディングカンパニーであるトヨタ自動車や、東京海上日動火災海上保険などが取得をしたことから、注目度は日に日に高まっておりPマークやISOのような民間同士でのビジネス取引においても活用されるかもしれないと言われています。また、入札や調達条件にも入ってきますので、取得のメリットは大きいでしょう。

普及のための活動を展開しているSHEM

実は、この「安全衛生優良企業公表制度」の登場をいち早くキャッチしホワイト企業を増やしていこうと非営利で活動している組織があります。SHEM。正式名称は非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構といい、代表を務めているのが理事長の木村誠氏です。

木村理事長は、奥様が特別支援学校で働いていることから知的障害に関する話などを日常的に聞いていたそうです。ある時、2015年12月から労働安全衛生法の改正によるストレスチェック義務化が始まることを知り、精神疾患等についていろいろ調べていくうちに現代の最大の病気であることを知ったといいます。中でも、職場の働く環境により誘発される精神疾患等が多数あることを知り、自分が新卒で入社した時代や会社と比較してあまりにも変わりすぎている社会に強く問題意識を持ったそうです。

そこで、労働環境の悪化という社会問題を社会起業家として解決したいと思いいろいろ動いているうちに、一念発起して「安全衛生優良企業公表制度」を応援するためだけの法人として非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構を立ち上げたというのです。

偶然は重なり、ご長男の就職活動も始まるタイミングでしたから、まさに就活生が知らずにブラック企業に入社しては困るという切実な思いが強くなります。ブラック企業は労働法に疎い学生などからすると判別がしにくく、間違って入社してしまって悲惨な人生とならないよう判別するWebページ「優ジロウ」を制作し、どんどんホワイト企業を増やそうと活動しているそうです。昨年から、セミナー等を展開し顧客は関西や九州にまで広がっているといいます。

先日、木村理事長にお会いする機会がありました。その際に『ブラック企業は決してなくならないと思います。そちらを見るよりはむしろホワイトを目指す企業をどんどん増やし、北風と太陽のように「これをやるとこんな良いことがあるよ、ご褒美をたくさん貰えるよ」といったような、インセンティブを享受してもらえる社会にしていければと考えています』と話されていました。

企業の繁栄と就活生にとって安心を与えるこの「安全衛生優良企業公表制度」の今後の展開を楽しみにしたいと思います。

『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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