同性婚の議論がきっかけで社会をより良くする5つのポイント
岸田文雄首相は2月1日の衆議院予算委員会で、同性婚の法制化が「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題」と答弁しました。確かに同性婚の議論がきっかけで日本の社会はより良く変わっていくことでしょう。
ここでは同性婚の議論がきっかけで社会をより良くする5つのポイントを紹介していきます。
【1】同姓?別姓?
現在の民法のもとでは結婚に際して、男性又は女性のいずれか一方が必ず氏を改めなければなりません。そして、現実には男性の氏を選び、女性が氏を改める例が圧倒的多数です。
しかし、女性の社会進出や男女不平等の解消を目指すために、夫婦が望む場合には結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める選択的夫婦別姓制度を認めるべきとの考えもあります。
では、男性と男性、女性と女性といった同性カップルの結婚での姓はやはり同姓になるのでしょうか?同性婚の議論によって、選択的夫婦別姓制度の議論も活発化することが期待されます。
【2】配偶者間暴力(DV)
日本におけるDV対策は被害者が女性であり、加害者は男性として運用されているのが一般的です。
しかし、同性婚では男性と男性、女性と女性の結婚になりますので、当然のことながら男性同士では一方の男性が被害者になり得ますし、女性同士では一方の女性が加害者になることも想定されます。そのため同性婚の議論がきっかけで性別が関係ない運用へと改善されることでしょう。
【3】こども/親権
同性カップルにとって子どもを持つということは容易ではありません。生物学的に二人の間で子どもを授かることができないからです。しかし、生殖補助医療や特別養子縁組などの手段によって子を育てる同性カップルがいる場合には、その子の親権はどうなるのでしょうか?
また現在、法務省の法制審議会で議論されている離婚後の共同親権の問題もあります。日本では婚姻中は共同親権ですが、離婚後は一方の親が親権を持つ単独親権です。そして離婚後に親権を持つのは母親が多いです。なら、男性同士の場合はどうするの?女性同士の場合はどうするの?と離婚後の親権への謎が深まります。
しかし、どちらにしても大人の都合だけではなく、子の権利、子の福祉が最大限に尊重されることを望みます。
【4】憲法
日本国憲法第24条1項に「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」、2項は「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」とあり、「結婚は夫と婦(妻)、両性のものだ」と明記されています。
この条文は「戸籍において夫を家族の長とし、婚姻においても親の許可が必要であった」戦前の状態をあらためるため、夫婦間の平等と自由結婚の権利を確定するために書かれたもので、同性婚の禁止あるいは同性愛者の差別や排除を意図したものではありませんでした。
しかし、憲法上の結婚を「結婚は夫と婦、両性のもの」と定義してしまったため、「憲法を改正しなければ、同性婚は法的に成立しない」という意見が司法関係者の中にあります。
また、「解釈改憲」という意見もあります。「解釈改憲」とは憲法改正の手続きを経ることなく、憲法の条項に対する解釈を変更することによって、憲法の意味や内容を変えることです。
「現行憲法下であっても、両性と夫婦を再定義すれば同性婚は認められる」という主張もあります。このような再定義において、「両性」とは「男性と女性の両方」という意味ではなく、「それぞれの独立した両方の性別」を意味し、また「夫婦」とは、従来の「夫(男性)と婦(女性)」だけでなく、「女性と女性・男性と男性という組み合わせも夫婦とみなすこと」を意味しています。
すでに『自衛隊』は、憲法9条2項前段によっても禁止されていないと政府は解釈していますので、同性婚についても同様に考えることができるのではないでしょうか。どちらにしても憲法の議論が深まっていくことは間違いないでしょう。
【5】婚姻制度
婚姻制度は生殖可能性のない同性カップルには適用されないとの意見があります。世界的にはパートナーシップ制度といった同性または異性の成人2名による共同生活を結ぶために締結される契約のような制度を充実させる方向へ進んでいますので、日本でも婚姻制度だけではなく同性も異性も利用できるパートナーシップ制度の創設も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
私自身はゲイですが、日本の議論は「男」VS「女」の構図に固執するばかりでなかなか前に進んでいかないと感じることがこれまで数多くありました。今後は同性婚の議論がきっかけとなり、日本での「家庭の在り方」に関する国民的な議論が進むことを期待しています。
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●この記事は事前に弁護士の石井逸郎氏によるリーガルチェックを受けています。